バハムートの爆炎とカインの涙
黒鉄の森は名前の通り、あちこちによく分からない希少鉱石が散見された。
ドワーフの鍛冶屋が近くにあるのも合点がいった。
そして案の定、すぐに魔物に襲われた。
しかし、うちのパーティーはエリスの回復魔法を全く使用しない程、想像以上に強かった。
カインもリリアもLV20以下の魔物であれば苦もなく斬り伏せる。
俺のために致命傷にならないように手加減するくらい強い。
レイナに至っては攻撃魔法の加減が難しいらしく、生意気にも「涼、貸しだからねー」と言ってくる始末。
そして俺は片っ端からホーリーナイフでトドメを刺していった。
魔物がたまに落とす魔石がお金になると知り、漏れなくポーチに保管した。
俺たちのパーティーは予想の半分の昼前には、ドワーフの洞窟前に着いてしまった。
だがそこで、予想だにしない事件が勃発する。
洞窟入り口で何やら大人数が揉めている。
五十メートル程離れた森の中から隠れて様子を見る俺たち。
「おいおいおい、そこの生意気そうなアサシン、洞窟から出るなら通行料を払いな」
謎のアサシンが言う。
「お前、背中が煤けてるぞ」
突然、俺のスマホの警告音が鳴った。
《EMERGENCY!》
《EMERGENCY!》
《警告!災厄級個体》
「何!? さてはあの黒装束、七武神だな? 以前は驚いたが、このスカウターは凄いぜ。これが鳴ったら黒ひげの言う通り近づかない方がいい事が分かったぜ。 みんな絶対に近づくな!」
「「「了解」」」
その時、隊長らしき男が出てきた。
「やめとけ! 副隊長、お前じゃ勝てねえ。コイツは『マスター・アサシン』、本物の化け物だ。俺が白ひげの所に居た時に、俺の隊の部下がお前一人に全滅させられたからな」
「覚えていない。それと今すぐそこをどけ」
「断る!……と言ったら?」
「死ぬだけだ」
《EMERGENCY!》
《EMERGENCY!》
《警告!災厄級個体》
再び、俺のスマホの警告音がけたたましく鳴る。
(何っ!? またか!? 何なんだ?)
――同時刻・北側約百キロ先の上空
『そういやルーク殿、以前拙者は貴方にそっくりな大召喚士に取り込まれそうになったでござる』
「私の友のアナキンだな。間違いない」
『敵なのか味方なのか全く分からなかったが、どういった方で?』
「私と同じ一族で、召喚士ラボ出身の同級生です」
『どうりで、雰囲気が似た感じだったでござる』
「彼が二十歳の時に、突然二体同時召喚ができる天才召喚士となり、その三年後には『ベヒーモス』、『リバイアサン』、『バハムート』の三大召喚獣を次々と従魔にしてしまったんだ」
『なっ、何ですと!?』
「はっきり言って無敵だよ。陸・海・空、どこでも戦闘ができるんだ」
――同時刻・再びドワーフの洞窟前
「あっ! あれは……兄貴だ!!」
目の良いカインが、聞こえているはずの警告音を無視して飛びだそうとする。
「行くな! カイン!!」
俺は飛び出したカインの足首を何とか掴んだが、成長した瞬発力と研ぎ澄まされた幻影の黒装束が俺の生爪を二枚飛ばした。
「兄貴ー! 兄貴ー!!」
俺の手を振り切り、我を忘れたかのように走り出すカイン。
隊長が自慢しながら全員に攻撃命令を出す。
「あれから俺は成長したぜぇ?
そして昨日遂に、新能力迄手に入れた!
さあ、野郎共ー!殺っちまえーー!!」
――その時だった。
上空から突如、召喚獣バハムートが現れた。
『【滅界爆炎】!!』
バハムートの顎から放たれた爆炎が海賊団に向けて放出される。
カインの目の前を爆炎が通過し、前髪が焦げる。
その一撃で団員の半数が被爆し、アサシンの前に道が拓けた。
俺の必死のブレーキにより、カインは間一髪で死を回避した。
着地したバハムートの背に乗っている召喚士が言う。
「迎えに来たぞ、ゼイン。……邪魔したか?」
「兄貴ー! 兄貴ー!!」
カインが泣きながら叫ぶ。
ゼインがカインの声に気付きながらも、バハムートの背に飛び乗る。
「問題ない。出していいぞ、アナキン」
「バハムート、北だ」
『了解』
バハムートが頷き、巨大な翼で空に羽ばたく。
飛び立った兄を、号泣しながら、韋駄天の如き爆速で追うカイン。
「はあっ、はあっ、はあっ……兄貴ッ、兄貴ィ!」
だが障害物が何もない地面で足が縺れ転んでしまう。
「があああッ にいぢゃんっ! もう、ぼくを置いてかないでぐれーーーー!!」
「……あのアサシン、何か叫んでいるが良かったのか?」
「ああ」
「一番強そうな奴だったが……珍しいな。何故殺らなかった?」
「大した奴ではない。それより、ライアンとお前のミスリルダガーもついでに研いでもらってきたぞ」
「……ということは、あの爺さん、遂にお前の『政宗』と『村雨』の黒刀化を成功させたんだな」
「ああ、やはり半端ない腕だ。これ以上の専用刀は金輪際現れないだろうな」
「そうか。決戦の日が近づいてきた。今度は俺のパワーアップに付き合え」
「いいだろう」
生き残った隊長らしき男が言う。
「おい、そこの泣き虫共! 金を払うか死ぬか選べ!」
存在がバレた俺たちは森から出る。
「俺は黒ひげ海賊団、二番隊隊長のサウザーだ。
この洞窟を縄張りにして、通行料を徴収しろとの船長直々の御達しだ。
あの化け物達に半壊させられた俺の隊の八つ当たりをさせてもらうぜ?」
「はあっー!!」
リリアがうなだれているカインに加勢し、サウザーに向けてドラゴン・スレイヤーを振り下ろす。
しかし、大剣は空を斬り、男は二メートル程別の場所に瞬間移動していた。
「ハッハー!! 俺様の新能力、残像使いの『ダブル』だ」
「そのようだな」
言葉を言い終わらないうちに、サウザーの足元から伸びた影の中から突然現れたカインが、喉元を掻っ切っていた。
カインがアサシンの新スキル『影道潜闇』を会得した瞬間だった。
「兄貴、トドメは早めに刺してあげてくれ」
「あっああ。わかった」
俺はカインの急成長に戸惑いながら、首から血を噴き出して藻掻いているサウザーの心臓に刃を入れた。
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