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最弱職「便利屋」が攻略AIで挑む異世界冒険記 ―チート勇者とのAI対決を便利屋スキルで出し抜く―  作者: Mr.RX
【便利屋の一味の大冒険】

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伝言ゲーム

 夜、宿に着くと外でサスケが待っていた。食料を渡すと、色々話を聞いたのか労いの言葉をかけてくれた。

 宿に入ると女性陣は極度の疲労により既に就寝済みだった。


(起こさないでおこう。初めてのダンジョンがあれじゃ無理もない) 


 俺たちもゆっくり風呂に入り、疲れを癒した。

 死にかけはしたが、俺は、勇者たちと戦って経験値と『蒼海石』迄手に入れて実質勝利したと言っても過言ではない余韻に浸っていた。

 スマホの帰還率を見て、更に喜びがこみ上げた。


《涼 帰還率:16%》

《ライアン 帰還率:73%》


(よし、俺が稼いだのにライアンは微増だ。ほんのわずかだが希望が見えてきたぞ)

 

 その時、

「兄貴、実はここに良い物があるぜ!」

「何だ何だ?」

「ジャーーン! ガーディアンの落としたレアアイテムの【深淵アビス・魔核コア】だ」

「ヤバッ、凄っ! お前、よくライアンたちの目を盗んでこんなん持ってこれたな。 ヨッ!さすが元盗賊!」

「ひでーな兄貴、なんかご褒美くれよ」

「何言ってんだ褒めてんだろ。けど昔お前に金貨2枚で頼んだ俺のエスコート失敗したから、利息ついてこれでチャラにしてやるよ。しょうがないなー」

「ひっひでー、なんてひどい兄貴だ」

「ははは俺の口には勇者ですら勝てないのじゃ」


 疲れた俺たちは、成果にニヤけたまま、いつの間にか眠りに落ちていた。


 ――3時間程前

 涼と勇者の激闘を、最深部の横穴からガタガタ震えながら、その一部始終を覗き見していた、一匹の雑魚魔獣がいた。

 その口の軽い魔獣がダンジョン内の仲間に喋り、魔獣から魔獣へ、そして遭遇した人間の冒険者へと伝わり……街中を駆け巡る、とんでもない『伝言ゲーム』が始まっていたのだ。


 ――聞いたか? あの深海の大ボス、勇者じゃなくて、実は『便利屋』が倒したらしいぞ。

 ――マジかよ!? 金づち一振りでガーディアンを粉砕しちまったっていう、あの話か!?

 ――俺が聞いた話じゃ、経験値を横取りされてブチギレた勇者チームと便利屋一味が激突して、なんと勇者たちを退けちまったらしいぞ?

 ――イヤ、俺の聞いた話だと、勇者が謝罪して、お宝やレア装備を全て献上したって話だぞ?

 そんな、尾ひれどころか背びれまでついたバカげた噂が、一瞬にして街中に知れ渡っていた。


 ――翌朝。

 俺たちの身を案じていた女性陣に『蒼海石』を入手する迄の経緯を説明し、エリスの眼鏡のフレームを調整してあげたら物凄く喜んだ。宿の柱に頭突きをかましたりしてたらしい。レイナは師匠とすれ違いだったが、元気な話が聞けて安心したらしい。

 チェックアウトした俺たちは、ルーク達との待ち合わせにはまだ時間があった為、ペコペコに減った腹を抱え、朝食のベーコンエッグを求めてギルド併設の居酒屋の扉を開けた。

 カランコロン。

 のんきなベルの音が鳴った瞬間――朝からワイワイ騒がしかった酒場が、水を打ったように静まり返った。

「…………あ、言ってたそばから」

「おい、見ろよ。あれが勇者とタメを張るっていう『伝説の便利屋』だ……」

「ヒィッ、勇者をぶっ飛ばしたギャル魔女だ……!」

 一拍の静寂の後。

 ドドドドドッ!! と地鳴りを立てて、無数の野次馬や冒険者たちが目を輝かせながら俺たちを取り囲んだ。

「涼さん! 勇者ライアンとの激戦、詳しく聞かせてください!」

「イヤ、まず俺だ。是非俺を便利屋の弟子にして下さい」

「貴方が、昨日ここで勇者と対峙してた二刀流のアサシンさんですよね?」

「さすが涼! おれたちにできない事を平然とやってのける そこにシビれる! あこがれるゥ」


 俺たちは芸能人並みの人気状態だった。


「……は? え? ちょ、お前ら近っ!? 俺はただ朝飯を……」

 もみくちゃにされてパニックになる俺をよそに、人だかりを掻き分けて、慌ててギルドマスターが俺たちの元にすっ飛んできた。その手には、真新しいギルドカードが握られている。

「涼さんッ!ダンジョンボス迄倒してくるなんて、何でもっと早く言ってくれなかったんだ。金糞虫の依頼なんてさせてしまって大変申し訳ありません。昨晩ギルド本部に早速連絡して、異例中の異例ですが最短で全員の冒険者ランクを一つずつですが上げさせて頂きましたので、そのご報告をしに来ました」


「あっありがとう」


 カインが再び昇級し、【A】ランクに。他も全員【B】ランクになっていた。


(こりゃまたカインの自慢話を聞かされるな)


 名前を売ることには成功した俺たちだったが、同時にさらなる危険の予感も感じていた。


 例の町はずれのドワーフの舟屋に行くと、先に来ていたリリアが落ち込んでいた。

 俺が「どうした?」と尋ねるとドワーフが代わりに応えた。

 『俺は舟屋で鍛冶屋じゃない。なんで間違えたかは知らないが、変わりにいい情報もある。ここから一番近い港町の外れ、ドワーフの洞窟にある鍛冶屋に俺の親戚がいる。腕は良くて有名人だし、俺と同じで機嫌さえ取れれば、修理どころかパワーアップまでしてもらえるかもな』


「やったな、リリア!」

「あっああ」

『ところで例の石は……』

「じゃーん!この通り」

『おおお本物じゃ。流石クラーケンを倒しちまっただけの事はある』


「ルークほらっ、これお前の取り分だ」

 俺は余った蒼海石一つをルークに放り投げた。


「いいのか涼さん?助かるよ。実は私もこれが目的だったんだ。これをまた爺さんの所にもっていってゴレムンをパワーアップして貰う予定だったから」


「この前アイアンゴーレムに進化したばかりだろ?ワイバーン迄いるし」


「まだまだ足りないんだ。あいつに追いつく為には……」

 と小さな声で自分に語り掛けるかのように話した。

 今は余計な事は聞かない事にした。


『とりあえずお前たちに譲る船はもう用意してある。あとはこれを嵌めればすぐに出港できるぞ』


「「おう!」」

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