海鳴りのダンジョン④勇者と光の聖剣
最深部の大広間。その巨大な扉を蹴破り、蒼く照らし出された激戦の地へとリリアとルークが雪崩れ込んだ。
そこには、三叉槍を構えたアビス・ガーディアンと、それに対峙する勇者ライアン、そして不敵に笑うギルガメッシュの姿があった。
『小癪な人間共め……! 深海の底に沈めてくれるわ!』
アビス・ガーディアンが咆哮すると同時に、広間の横穴から、LV15を超えると思われる「深海喰屍」や「海骸騎」の群れが、津波のように湧き出した。
「ライアン殿、そっちは任せたでござる!」
ギルガメッシュが軽薄に言い放つ。
「ふん、羽虫がいくら集まろうと、この剣の前では全てが無力だ」
ライアンが掲げた【覇王光聖剣】が周囲の青白い光を掻き消すほどの聖光を放つ。
その一振りで、十体程の闇魔獣が塵へと帰した。
『その眩き光……まさか貴様、既に天空のガーディアンを討ち、その聖剣を手にしたというのか……!?』
アビス・ガーディアンが驚愕の声を上げる。
だが、リリアの視界にその光は入っていない。彼女の瞳には、かつて宝刀を奪い、父の命を弄んだ仇敵――ギルガメッシュの背中しか映っていなかった。
「行くぞ!……ギルガメッシュッ!! 」
「待て、リリア! 一人で行くな!」
ルークの制止を振り切り、リリアは重い足音を響かせて加速する。
『ルーク、来るぞ! 魔物の群れがリリアを狙ってる!』
右肩でベビードラゴンが叫ぶ。
「分かっている! 召喚――! アイアンゴーレム!!」
地面から現れた鉄の巨躯が、リリアの背後へ迫る魔獣を押し潰した。
「いいか、ゴレムン! リリアに指一本触れさせるな! 周りの敵を片っ端から叩き潰せ!」
『……ガ、ア……了解……』
鈍い音を立ててゴレムンが拳を振るう。
「――竜をも屠る大剣よ。今日、貴様に真なる敵の血を啜らせてやる。応えろ、ドラゴン・スレイヤー!」
リリアが大剣に吼える。応えるように刀身が鈍銀に脈打ち、凄まじい風圧を巻き起こした。
『ギャイー! ルーク、危ない!』
ベビードラゴンがルークの肩を蹴って飛び上がり、空中から灼熱の火炎を吹き散らして、ルークの周りを援護した。
その混乱を突き抜け、リリア渾身の両手の一撃がギルガメッシュへと振り下ろされる。
「父の仇だ!死んで詫びろ!! 【極技・竜牙断滅斬】!!」
ガギィィィイン!!
轟音。だが、その一撃は元父の剛魔剣、【グラム・スレイヤー】によって完璧に受け止められていた。
「仇?……見覚えがある甲冑。あの時の小娘、生きていたでござるか」
ギルガメッシュが、大剣を右手で支えながら冷酷に笑う。
「少しは強くなって復讐に来たか。だが、現実はそれほど甘いものではござらんよ」
ギルガメッシュの左手が動いた。禍々しい妖刀、【初代鬼徹】が黒紫色の光条を描き、リリアの脇腹を真横からえぐり斬る。
「うあああっ!」
リリアの身体がそのまま弾け飛ぶ。だが、重装甲がかろうじて命を守っていた。
「……ほう、その【黒銀の鋼鎧】、素晴らしい出来でござる。あの時の、お主の父の形見でござるな?」
「やれやれ、羽虫が四匹程増えたか……ギルガメッシュ、貴様に任せるぞ」
「かしこまったでござる」
ギルガメッシュは妖刀についた血を舐めとり、獲物を見る目でリリアを見下ろした。
「この剣より劣る、お主の剣に、そこまで興味が湧かないが、ついでに頂くとしよう」
『この糞勇者ども! 海神ポセイドン様より授かった、お宝と海魔獣の力を舐めるなよ!?』
アビス・ガーディアンが三叉槍を掲げた。
刃の根元部分には三つの【蒼海石】が装着してあった。
その瞬間――
背後に、蒼と黒、二つの魔法陣が同時に展開される。
「――深海の眷属よ、来たれ」
低く響く詠唱と同時に、空間が歪んだ。
次の瞬間、床一面に海水が溢れ出す。
――ゴォォォッ!!
押し寄せる濁流が一気に広間を満たした。
水位はみるみる上昇し、あっという間に膝の高さに迄達した。
足場が奪われ、重い水圧が全員の動きを鈍らせる。
その中で――
魔法陣が激しく脈動した。
蒼の陣から現れたのは、
重厚な鎧を纏った巨大な騎士。
《海骸重騎士》
続いて黒の陣が裂ける。
水面を滑るように現れたのは、
歪な鎌を携えた死の影。
《深海死神》
明らかに先程の群れとは格が違う。
「(まずい、完全に敵の土俵だ)立てるかー?、リリア」
「うううっ」
海水に沈んだ戦場に、
圧倒的な“死の気配”が満ちた。
勇者の聖剣が魔獣を薙ぎ払い、召喚士のゴーレムが吼える。
地鳴りは激しさを増し、最深部は文字通りの修羅場と化していた。
――――涼達到着まで、残り五百メートル
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