海鳴りのダンジョン②強敵の影
「やっぱりレイナの師匠の大魔導士か。ルークについてた使い魔がLV30だった時点で、使用者は化け物だと思ってたぜ」
「ところで俺たちを偵察しているのは何故だ?」
「ひょっとして、レイナの存在に気付いたのかも。それか、涼がブツブツ言ってたライアンて勇者と関係あるのかもしれない。よくは解らないよ」
「ところでお前の師匠ってのはどんなだ?大魔導士っていう位ならおじいちゃんか?」
「それがそんなでもない。戦時孤児だったレイナを拾ってくれた時はギャルだったから、今は涼と同じ位だよ」
「ギャルの大魔導士は違う意味でやべぇな」
「そう? でも、レイナが独り立ちした後なんだけど、去年位になんでか暗黒面に落ちたって言われて、ウチらのいた国の高官達に死刑宣告されたんだよ」
(!?……去年って言うとライアンが来た年じゃねーか。ひょっとして関係があるのかも知れないな……)
「すまん中断した。みんな先へ進もう」
その時だった。後ろのトラップを仕掛けた方から、魔物の叫び声と同時に「ぎゃああああ!」「罠だ! 偽の矢印だ!」と聞き覚えのある無様な声が響いてきた。
(おお~、これがまさに『ざまぁ』ってやつだな)
助けにいく義理はない。
俺たちは迷わず、さらに深く、暗い湿り気を帯びた中層へと潜り込んだ。
「――ッ、兄貴、止まれ!」
カインが叫ぶのと同時に、足元の水面が爆発した。
すかさずスカウターで計測する。
【種別:大地蟹 /魔獣LV9/ 物理耐性90%/弱点:炎を中心とする攻撃魔法】
「レイナ炎系で頼む!」
「やっとレイナの出番ね。焼き尽くせ、【業火の槍】!!」
狭い通路を、凝縮された火柱が走り抜けた。
レイナの放った一撃は、蒸気と共に炎の槍で魔物の身体の中心にどでかい穴を開けた。
「ふぅ……。今の魔法、師匠直伝なのよね。……ちょっと疲れちゃった」
「よくやったレイナ。――カイン、周囲を索敵。異常なしならここらで昼飯休憩にするぞ」
「兄貴、40メートル先に光も差す開けた場所があるぜ」
「よし、そこで休憩だ。おっ!今の蟹、毒性無しだぞ。お前ら蟹好きだろ?」
「「うん!」」
本日二回目のカインとレイナのハモリだ。
「「カーニ! カーニ!」」
三回目だ。
「子供かっ!」
開けた場所には先行者パーティーがいた。
(どれどれ)
最近の俺は、盗撮することへの罪悪感はほとんどなくなっていた。
【パーティ名:疾風団 (3人)/ 平均レベル:9 / ダンジョン適性:D】
(流石にさっきの奴らより強いな。挨拶でもしとくか)
「こんちはー。調子どうですか?」
リーダーっぽい戦士の人が答えてくる。
「いや、俺たちはこの階層が限界のようだ。さっき重戦士パーティーに助けられなかったら全滅していた」
(重戦士……リリア達か! 情報が欲しいな)
「そうなんですね。俺たちこれから蟹パーティーするんで良かったら一緒にどうですか?」
「おおーそれは助かる。 私たちはもうポーションも食料も尽きていた所だったので」
早速マジックポーチから調理道具を出し、エルミナで買い出ししてきた食材と蟹を使って手早く準備する。
「皆さん、出来たぜー」
蟹飯と、蟹サラダと、蟹スープの蟹づくしだ。
【料理メモ】
・異世界蟹もやっぱり塩ゆでが一番
・サラダにそのまま乗せても旨し
蟹は疾風団にも大うけだった。
そりゃそうだ。蟹が旨いのはどの世界でも共通だ。
できればサスケにも食べさせてあげたかった。
「兄貴、カイエン……」
「カインすまん!今回だけは駄目だ」
「どうした?兄貴そんな怖い顔して」
「興奮作用があるからだ。すまんがここから先は冷静に行きたい。……どうしても勝ちたいんだ」
「何の事か解らないが、俺は兄貴の言う事を聞くよ」
「ありがとう、カイン」
エリスはやはり気が利く女の子だった。
俺が頼みもしないのに、みんなに料理を取り分けていた。
「エリスありがとう」
「いえいえ涼さんこそ、美味しい蟹料理をありがとうございます」
「転んでぶちまけなきゃ完璧だな」
「変なフリは辞めて下さい。本当にやっちゃいますから」
「「ハハハハ」」
食ってばかりの子供コンビが笑う。
「ひょっとして……あなたは巷で噂の『便利屋の涼さん』じゃ?」
突然疾風団のリーダーが話かけてきた。
「え? 俺そんな有名?」
「海賊団とクラーケン迄倒したとか言う噂が、ギルドでも広がってますよ」
「え? あっ、あははは」
パーティーの、それは違うだろうという視線が刺さって痛い。
「たっ隊長さん、蟹スープでも飲みながら、あっちで二人で話しましょう」
「えっええ」
移動する二人。
「リリ……じゃない、重戦士達は奥に進んで行ったのですか?」
「ええ。私達がピンチに陥ってるのを二人で助けてくれた後に」
「この先、俺たちに何かアドバイスとかないですか?」
「アドバイスというか、気になったことが……」
「何でもいいので教えて下さい」
「私達を襲ってきた強魔物達が、必ずと言ってもいい程全て『腕や足が幾つか欠損していた』のです」
「え!?」
「そして、それを見た重戦士達が震えていたのです」
「えっスミマセン。話がよくわからいのですが……」
「ですよね、説明が難しいのですが……まず、自分で言うのも何ですが、私はこれでも疾風流を極めたBランク戦士です。
ですが、この先の階層では情けない事に、ダンジョン奥の方から泣き叫びながら襲ってくる、手足が欠損した魔物達にさえ手も足も出ませんでした。
それを助けてくれたのが後続の重戦士達でして、その二人の会話が偶然耳に入ったのですが――強魔獣達をオモチャにする程の化け物剣士が奥にいる、と。
私が見ると、二人共身体が震えていたのです」
(……奴だ……間違いない! この先にヤツがいるんだ……)
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