表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱職「便利屋」が攻略AIで挑む異世界冒険記 ―チート勇者とのAI対決を便利屋スキルで出し抜く―  作者: Mr.RX
【便利屋の一味の大冒険】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/51

酔いどれレイナと重戦士

 潮の香りが夜風に乗って鼻をくすぐる。

 無事に港街へ到着した俺たちは、波止場の喧騒を抜け、ひとまず今夜の拠点を探すことにした。


 「涼さん、お父様から頂いた資金はまだたっぷりありますから、シャワー完備の少し良いお部屋にしましょう!」

 エリスがふんわりと微笑みながら、無防備に金貨の入った革袋を揺らした。

 「おいおい、そんなに見せびらかすな。また柄の悪い連中に狙われるぞ」

 俺は呆れつつエリスから革袋を受け取り、マジックポーチに収納した。

 その後、手頃だが清潔そうな宿を見つけ、ツインを二部屋確保する。

 サスケは街の外でお留守番になってしまった。後でご馳走でも届けよう。

 荷物を降ろして一息ついたところで、俺は仲間に声をかけた。

 

 「よし。せっかく軍資金もあることだし、情報収集も兼ねて美味い飯と酒でも(あと美女も)探しに行こうぜ」

 「ふっ……また俺の出番という事だな。今回は本気で酒を飲んでると見せかけて、実は酔ってない作戦で行くか」

 カインが顔の半分を覆いながら満足げに呟いたが、誰もリアクションはしなかった。

 

――冒険者ギルドが併設された酒場は、港町らしい荒くれ者たちの熱気と紫煙に包まれていた。

 飛び交う怒号や笑い声をBGMに、俺はジョッキを持ったまま適当な空席を探して歩く。


 ガンッ!


 不意に、硬い金属の感触が肩にぶつかった。

 見ると、頭から足先まで分厚い鋼で覆われた、やけにゴツい重装備の戦士だった。背中にバカデカい大剣迄装備している。

 せっかくの酒の席だ、揉めても面倒なだけだろう。

 俺は「すまん」と軽く手を挙げて謝罪した。

 『……いや、こちらこそすまん。酔っ払いに押されてしまった』

 兜の奥から、やや高めの声が返ってくる。

 少し変わった声だなと引っかかったが、今はイカツイ装備の男よりメシと酒が優先だ。

 

 席を確保した俺たちは懐が温かい為、酒も料理もバカバカ頼んだ。


 「兄貴、カイエンペッパーをまた貸してくれ」

 「ああ、全然いいけどお前、本当にハマってるな」

 「……ふふっ、これ。甘くておいしいよ、エリスちゃんも飲む?」

 隣でグラスを揺らすレイナの声が、心なしかふわふわと浮いている。

 (……待て、あいつ何を飲んでるんだ?)

 「ちょっと、レイナちゃん? 顔が真っ赤だよ?」

 「え〜、そうかなぁ?ふわふわして気持ちはいいよ〜」

 「レイナ、それジュースじゃなくてカクテルだろ」

 (俺が目を離した隙に頼んだな)

 「兄貴、レイナ完全に酔ってるね」

 「ああ、油断したな」

 レイナがウザ絡みし始める。

 「男共は黙ってろよぉ。でもエリスは本当可愛い顔してるよね〜。

 ところであのさ〜……ホントは涼のこと、どう思ってんの?」

 レイナがエリスの肩にどさりと寄りかかった。

 「なっ……!? レイナちゃん、何を急に……」

 「隠さなくていーじゃん。あんなエロジジイのどこがいいの?……」

 (俺は目の前にいるんだぞ?)

 絡み始めたレイナをエリスが支えている。

 これ以上は面倒になりそうだ。

 俺はレイナ用の水をもらいに行くついでに、酒場の奥にあるギルドカウンターへ向かうことにした。


 「……召喚士ルークですか? いえ、残念ながら本日この街のギルドには立ち寄られていないようです」

 受付嬢が申し訳なさそうに首を振った。やはりそう簡単には見つからないか。

 「そうか、手間をかけさせたな」

 「あ、お待ちください! もしかして貴方は『便利屋の涼さん』ではありませんか?」

 呼び止められ、俺は足を止めた。カウンター周りにいた数人の冒険者が、ピクリと反応してこちらを伺っている。

 「ああ、そうだが……」

 「やはり! リュグレインでの護衛実績がギルド本部で高く評価されています。特例のランクアップが承認されていますよ」

 受付嬢が事務的に指し示した昇級者リストには、識別用なのか名前、性別、ジョブ、そしてランクの欄が並んでいた。


【リョウ(男)】

【ジョブ:便利屋、ランク:F→C】


【カイン・ゾルティック(男)】

【ジョブ:ローグ、ランク:D→B】


(一気にCランクか。カインもBランクに上がってやがる。エリスの親父さん、相当な影響力を持ってるんだな)

 「ククク……Bランク。ようやく世界が俺に気づき始めたようだな」

 いつの間にか背後に忍び寄っていたカインが、悦に浸りながら髪をかき上げている。

 (ウザッ!コイツも酔っ払ってんのかよ)

 俺は無視して、リストのさらに上段にある今日一人しかいない『Aランク』の項目に目を留めた。


【リリア・ロックハート(女)】

【ジョブ:重戦士、ランク:A】


俺はその一行を、思わず二度見した。

 (……重戦士? さっきぶつかった奴は女だったのか)

 あんなゴツい装備の中身が女で、しかもAランクだとは。

 周りを見渡したが、既に女はいなかった。

 「……さて、余った料理をサスケに届けなきゃだし、今日はここらで切り上げるか」

 俺は思考を切り替え、会計を済ませ、テーブルに戻った。

 そこには、エリスに抱きついたまま完全に寝入っているレイナの姿があった。

 「涼さん、すみません。レイナちゃんがもう、全然起きなくて……」

 「しょうがねえな」

 俺は苦笑し、レイナを背中に担ぎ上げた。

 (……お、意外と柔らかいな)

 背中に伝わる感触に内心で鼻の下を伸ばしていると、エリスが少しだけ頬を膨らませて俺を見つめていた。

 「……涼さん、私が代わりましょうか? あまり彼女に密着されるのも、その……歩きにくいでしょうし」

 「いいって無理するな。二人でこけたら事故だぞ。ほら、帰るぞ」

 「……そうですか」

 エリスはわずかに視線を逸らし、小さく息を吐いた。だが、俺が歩き出すと、さりげなく俺の袖を掴んで足並みを合わせてくる。

 背中で規則正しい寝息を立てるレイナの横顔をチラリと見て、俺は小さく呟いた。

 「……大人しいと可愛いんだけどな」

 「……何かおっしゃいましたか?」

 「いや、何でもない。明日からまた忙しくなりそうだと思ってな」


 サスケに食事を届け、宿に着くと、それぞれの鍵を受け取って階段を上がる。

 「涼さん、おやすみなさい。……明日も、よろしくお願いしますね」

 「ああ。レイナのことは任せたぞ。何かあったらすぐ呼ぶんだぞ」

 エリスは丁寧に一礼すると、レイナを支えて部屋へと入っていった。


 それを見届けてから、俺もカインと共に自分たちの部屋へ入る。

 部屋にお風呂があるのは、実に有難かった。


 カインはよほどBランクに上がったのが嬉しいのか、ベッドの上でプレートを掲げて悦に浸っていた。

 「フフフ……そのうち俺の名が世界に轟くことになるだろう……」

 「はいはい、おやすみ」

 適当にいなして明かりを消し、俺は自分のベッドに身を沈めた。


 (……リリア、か)


 窓から差し込む双月の光を眺めながら、さっき見たリストの名前を思い出す。Aランクの重戦士が、まさか女だったとは。


 この街にいるのならまた会うこともあるだろう。

 俺はそんなとりとめのないことを考えながら、深い眠りへと落ちていった。


 最後までお読みいただきありがとうございます!


 「面白かった!」「続きが気になる!」と少しでも思っていただけましたら、

ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援をお願いいたします!


 皆様のイイネ評価とブックマークが、何よりの執筆の励みになりますm(__)m


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ