黒ひげ海賊団と二本のロッドの行方
食後、身支度を整え、一行はすぐに出発した。
サスケは翼を広げ、偵察に羽ばたいた。
海賊と聞き、俺たちは止む無く海沿いを歩いて探索した。
すぐに戦闘になる可能性があるので、フォーマンセルにおける連携は歩きながら皆でシミュレーションし、共有しておいた。
それから一時間も経たないうちに、俺たちは海辺で呑気にキャンプを張っている海賊の集団と遭遇した。
ノアの解析通り15人近くいるようだ。
(サスケのやつはいったいどこに行った?)
「おい、お前ら!俺たちの大事な杖を知らねえか?」
「何? テメー誰に向かって口利いてんだ? コラ!?」
一番手前の海賊が早くも逆切れモード全開だ。
パーティー全員に緊張が走る。
うちの三倍以上の人数の為、油断している様子だ。
「お頭―! なんか変な奴らが来ましたぜー」
奥のテントから黒髭で巨漢のボスらしき男が出てきた。
「あ゛ー? お前ら、何で俺たちが犯人って知ってやがるんだ?」
「お前ら全員、人相が悪いからだ」
「……で? わかった所でどうするんだ? なあ? どうすんだよ!?」
(こいつら完全に舐めてやがるな)
スマホをかざす。
《個体識別:ソロモン・ティーチ ランクA(LV35)》
《ジョブ:黒ひげ海賊団船長》
《主武器:大戦斧、青龍刀》
《弱点:常人と真逆位の右心臓》
(クソッ!予想より強いな)
副隊長がカインに気付く。
「あれ? お前、同郷のカインじゃねーかー!?」
「副隊長、このガキ知り合いっすか?」
「もちろん! だって昔俺によくイジメられてたもんなー? あれ? お前もローグになれたのか?」
「ああ、なんとかな」
「しっかし、相変わらず鈍くせーなあ。杖を盗ったのは俺だよ、俺! ハハハ」
「……そうか、じゃあお前の両腕と交換といこうぜ」
――瞬間。
カインが居合抜刀した村正が、副隊長の両の手を肘から切り離す。
血飛沫をまき散らしながら舞い落ちる二つの手を、そのまま黒ひげの方へ蹴り飛ばした。
副隊長が悲鳴を上げ、黒ひげが号令を叫ぶ。
「グアアアアッ!!」
「野郎共っ!皆殺しだーーー!!」
即座に得物を取りにいく海賊達。
それを見た俺はすかさず指示を出す。
「海側に下がる! 陣形を立て直すぞ!」
俺たちは砂浜へ後退する。
だが――
突然、後ろの海面が盛り上がった。
「……涼、後ろ何?」
レイナの声が震える。
巨大な触手が海から突き出した。
三十メートルはある【巨大軟体生物】だった。
黒ひげが俺達に笑いながら叫ぶ。
「ゼハハハハ! てめーら、運にも見放されちまったようだなー」
手前には海賊、後ろにはクラーケン。
完全に挟まれた形になってしまった。
「チィッ!」
俺はスマホを取り出しタップする。
「ノア! 大至急分析開始だ!」
しかしノアがいつもと違う挙動をする。
《EMERGENCY(緊急警報)!》
《EMERGENCY!》
《パーティー生存確率:10%、9%、8%、……》
「おいノア!どんどん減ってるぞ!?」
《涼さん!大至急北東に向かって全員でダッシュして下さい!》
「何? 海賊共の真正面だぞ!? 故障か!?」
《生存確率5%》
《推奨逃走方向――北東、海賊裏側の丘》
《EMERGENCY!》
《計測不能、計測不能》
《皆さん危険です!何か来ます!大至急全員で海賊を突っ切って下さい!》
ノアの指示がみんなの脳内に激しく流れる。
《生存確率3%》
《EMERGENCY!》
「涼、怖いよー」
「涼さん、どうしましょう!?」
「みんな!走るぞ!ノアの指示に従うんだ!!」
(今迄ノアが予想を外した事は一度もねえ)
その時だった。傷つき、ふらふらと宙を舞うサスケが、エリスとレイナを鷲掴みし、なんとか海賊達の頭上をギリギリで飛び越えていった。
そして、南西の堤防側から一人の男が戦闘の中心へと歩いてくる。
荒れ狂うクラーケンの目前を、まるで散歩でもしているかのように平然と通り抜けてきたのだ。
その出で立ちは、迷いの森で出会った彼にそっくりだった。
俺は思わず声をかけた。
「……おーい!ルークかー!?」
男がこちらに向かって歩きながら俺を見た。
「……お前、今際の際だぞ?」
海賊達が新手にも襲い掛かる。
「生意気そうなやつだな、ついでにやっちまえー!」
ピーッ!
《個体識別:アナキン・ヴィン・シュナイダー》
《ジョブ:召喚士、危険度:SS……測定不能》
《警告!災厄級個体》
《生存確率1%未満》
《EMERGENCY!》
「カイン! 逃げるぞ! 飛べーーー!!」
次の瞬間。空気が歪んだ。
男が両掌を広げると、二つの巨大魔法陣が同時に空中に開いた。
「出でよ、ベヒーモス! リヴァイアサン!」
黒ひげが叫ぶ。
「何っ!?二体同時召喚だぁ!?」
そこら一帯の土と水と空気が、この世の終わりかと思える程に激しく振動する。
大地が爆ぜ、山のような巨獣が出現する。巨体が一歩踏み出すだけで海賊の半分が踏み潰され、太い尾が薙ぎ払われるともう半分が宙を舞い、一瞬で全滅した。
海が割れ、竜巻のような水の龍も出現する。触手を伸ばしてきたクラーケンの巨体を一瞬で「海流の渦」へと引きずり込むと、超水圧の刃で切り刻んだ。海面にはあっと言う間にバラバラになった白い肉片が次々と浮いてくる。
俺とカインはノアのお陰により、紙一重でベヒーモスの一撃をかわせた。
「還れ」
一瞬で消える神獣達。
(あっ圧倒的じゃねーか。次元が違い過ぎる……)
「……俺を呼び寄せたのはこの杖達だったか」
謎の召喚士がそのまま俺の方に近づき、尋ねる。
「お前、ルークの知り合いか?」
「(何者だコイツ?)そっ、そうだが」
「ならば一度だけ見逃してやろう。これも特別に返してやろう」
エリスとレイナのロッドだった。
「二度目は無いぞ。ああそうだ、お前の仲間の隼だが、俺が調伏に失敗したのは久しぶりだ。大事にしろ」
と言い残し、男は元来た道を何事もなかったかのように歩いて消えていった。
カインは圧倒的恐怖で腰を抜かし、地面にへたり込んでいた。
俺が近づいて顔を覗き込むと、彼はガチガチと歯を鳴らして小刻みに震えている。
「大丈夫か!? 神獣の攻撃にかすりでもしたか?」
「あっ、あ……あいつ……」
「……あいつがどうした?」
「あいつが俺の兄貴を連れて行ったヤツなんだ!」
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