リュグレインの激闘②――復活のカイン
――神殿前
神殿までなんとか辿り着いたレイナたちは、入口で苦しんで倒れているカインを発見した。
「……くそ、俺様が、こんなところで……」
薄れゆく意識の中、白亜の法衣が視界に入る。
大神官の妻であり、エリスの母だ。
「この子、呪毒の傷が開いてるわ。解除します」
彼女が唱えたのは、高位神官でも一握りしか使えない高度な浄化魔術、【呪毒解除】。
透き通るような青白い光がカインの全身を包み込んだ、その瞬間だった。
死の淵を彷徨ったことで、カインの中に眠るゼクス族の特性――死線を超えるたびに進化する「生存臨界」が爆発した。
激痛と共に全身の細胞が沸き立ち、古い細胞を脱ぎ捨てるように、彼のクラスが【シーフ】から【ローグ】へと跳ね上がる。
「なっ何だ? このみなぎる力は? 力がどんどん溢れてきやがるっ!」
カインは己の肉体が作り変えられる確かな手応えを感じていた。
クラスチェンジと共に獲得した希少スキル――【二刀流】を会得した瞬間だった。
「涼程じゃないけど、あんたも結構イケメンじゃん」
レイナがこぼした言葉に、エリスの母が微笑む。
(ウフッ。涼君はそこまでイケメンだったかしら?)
(なっなんだこのギャルは?……っとそれより急がなきゃ看病してくれた大神官達がやられちまうっ)
「手当、本当ありがとな!恩に着るぜ、オバチャン」
カインはそう言い残すと、覚醒した脚力で石畳を爆ぜさせ、以前の倍に達しようかという圧倒的なスピードで戦場へと疾走していった。
「オバ……何!?あの子?回復させるんじゃなかったわ!」
「エリスママ、おっ落ち着いて」
エリスの母とレイナが神殿の深部へ向かった。
――城壁外の戦場
その頃、涼はエリスに防御バフを掛けて貰い、アンデッドたちと対峙しようとした瞬間、冷静になる (ちょっと待て……。冷静に考えたら俺、生身の身体で、そんなに強くないんだった。死んだら終わりだもんな)
「サスケー!」
「【旋風の盾】!」
猛烈な突風が、涼の四方を囲む死者たちをまとめて薙ぎ払った。
「流石だ、サスケ。俺を乗せてくれ」
涼はサスケの背に飛び乗り、上空から戦況を俯瞰して冷静に分析する。
「戦場の支配者に俺はなる!!」
「神官!敵の左翼、三列目のアンデッドがもたついている。そこを突いてくれ! エリス、お前はパパと聖騎士の後方に下がれ。盾役の味方の回復とバフに徹するんだ」「はい」
涼の鋭い指示が荒野を駆け抜ける。
アデルとエリスが残っている聖騎士たちへ物理防御強化のバフをかける。
善戦する一行だったが、物量の差は残酷だった。
聖騎士が残り三十人まで減り、正門を背に絶望が漂い始めたその時。
漆黒の閃光が戦場の中心に滑り込んだ。
「カイン参上!」
「おーカイン!遅かったじゃないか、見りゃわかるぜ、少し強くなったか?」
「へっ、流石兄貴だ! 俺は【ローグ】に成って、【二刀流】のスキル持ちだ」
進化を誇示するカインの言葉を受け、涼はマジックポーチに手をかける。
「サスケ、宝刀二本カインに相伝させるぞ?いいな!?」
「御意!」
「カイン、凄いオモチャを二つもくれてやるから受け取れー!」
涼はマジックポーチから、二振りの宝刀――『雷切』と『村正』を取り出し、カインへ向けて投げ落とした。
「あれ?俺また、聖なるナイフとマイナスドライバーに逆戻り?」
サスケが笑う。
「サスケ!ようやく笑ったな」
涼が自嘲気味に呟く中、カインは眼前のヘレティック・ハウンドを睨み据えたまま、飛来してくる二刀を目視すらせずに両手で優しく受け握った。
「ものすげぇ……コイツラ、本物だ。 犬の王!さあ、闘うか!」
ローグモード全開のカインが、紫光と紅蓮の軌跡を描きながら、ハウンド前のアンデッド達を、まるで空気をそのまま斬るかのように次々と斬り伏せていく。
「君、……ローグ? じゃあ私も加勢に入るよ」
ベゼルが瞬時にカインの実力を見抜いた。
そして、ヘレティック・ハウンドとベゼルの巧みな連携に、流石のカインも二対一では苦戦を強いられた。
カインが追い詰められそうになった瞬間、涼がサスケから飛び降りて囮となり、カインを跳躍させる。
その着地までの僅かな時間にエリスがカインの傷を全快させた。
「便利屋たちはともかく、ローグが強いな」
ベゼルが苛立たしげに口角を歪ませる。
「だが、私の力もこんなもんじゃない。ハハハ! 兄さんも便利屋君も、切り札というのは最後に出すものなのだよ!」
ベゼルが死霊術士の秘術を解放し、さらにおどろおどろしい巨大な不死巨鬼上位を五体同時に召喚した。
「それはこっちも同じ事だ。便利屋の作業は事前準備が8割なんだよ」
涼の言葉と共に、上空からレイナを乗せたサスケが超高速で急降下する。
雷と風の属性を融合させた兄妹による超合体技【迅雷嵐破】が炸裂し、召喚されたばかりのアンデッドトロル群を一撃で霧散させた。
「今だ、エリス!」
「はい!お父様」
「【ホーリー・レイ・零式】!!」
エリスと父の合体光線が、戦場に残った邪悪なアンデット残滓を一掃した。
「なっ……馬鹿な、私の傑作たちが……っ」
焦燥に駆られるベゼルに、ヘレティック・ハウンドが冷酷に言い放った。
『情けないな、死霊使いベゼル。俺はお前に飼われていたのではない、俺もお前も最初から【冥王様】の駒に過ぎないんだよ。そして……案ずるな。これから行う事、既に『あの方』の許しは得ている』
そういうや否や、ヘレティック・ハウンドがベゼルの背中へ向けて呪文【魂の強奪】を放つ。
「ぐおおおぉっ!」
ベゼルの魔力のほとんどを強引に奪い取った。
『はああぁーー、ギモヂイイイィーーー』
莫大な魔力を得たヘレティック・ハウンドは、LV32から三つの顔を持った【冥王魔狼】LV38へと進化した。
そしていきなり三つの口から超絶魔法をぶっ放した。
『【冥府の葬列】――!!』
「全員、私の後ろへ!」
アデルが残された全魔力で味方の前に【魔法防御壁】を展開するが、あまりの衝撃に先頭のアデルの肺が潰れて吐血する。
「ごっごふっ」
「お父様!」
「はあっ……はあ、にっ兄さん……」
『さて、二発目はどうする?』
魔狼の二連撃目が、満身創痍でへたり込んでいるアデルに向けて放出された。
『【冥府の葬列】――!!』
「【最終跳躍】、【死霊の壁】!」
再び物凄い爆発音が戦場に響いた時、アデルの前に壁となり、ボロ雑巾のように変わり果てたベゼルが転がっていた。
「ベゼルー!!」
アデルが身体を引きづりながら近づく。
「にっ兄さん、ぼく……ごめんなさい。……最後まで追いつけなかったよ……」
弟が禁呪の研究中に【冥王】に精神支配されてしまった事をアデルは瞬時に理解した。
アデルの絶叫が夜の戦場に響き、ベゼルは絶命した。
魔狼が、冷酷な勝利の咆哮を上げる。
『ハハァー!お前ら全員、死ぬ時間が少しずれただけだぞう』
そして魔狼は、あらかじめ用意していたマナポーション十本程をバリバリと音を立てて瓶ごと噛み砕くように一気飲みし、魔力を全快させて告げた。
『終わりだ、虫けら共!』
「それはどうかな?ワン公! 切り札は最後の最後に。だろ?」
涼がスマホの天使羽アイコンをタップする。
「来い!ノアーーー!!」
午前零時、絶望の夜に終止符を打つべく、スマホの放つ光が夜の帳に咲いた。
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