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最弱職「便利屋」が攻略AIで挑む異世界冒険記 ―チート勇者とのAI対決を便利屋スキルで出し抜く―  作者: Mr.RX
【生存確率28%】からのサバイバル

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13/50

北の廃砦(前編)裏切りの代償

 翌朝。

 

 俺は完全に寝不足の目をこすりながら、神殿の裏口となる静かな中庭に立っていた。

 

 そこには、清らかな修道服に身を包んだエリスがいる。

 その隣には、気配を殺したシノビの男が、腕を組んで壁に寄りかかっていた。

 

 「おはようございます、涼さん! 昨夜は……その、色々とすみませんでした。お怪我の具合はいかがですか?」

 

 エリスが顔をほんのりと赤らめながら、上目遣いで尋ねてくる。

 

 「ああ、あの薬湯のおかげで、痛みはだいぶ引いたよ。バッチリだ」

 

 俺は大神官から受け取った『大容量ポーチ』のベルトを締め直す。

 中にはマナ・ポーション十本と保存食。膝と肘のプロテクターも完璧だ。

 

 「……準備は済んだようだな。便利屋」

 

 低く冷たい声。シノビ男が、鋭い視線をこちらに向けた。

 

 「ああ。そっちも万全のようだな」

 

 「俺の役割は、奥様とお嬢様を無事に連れ帰ることだけだ。足手まといになるようなら、容赦なく置いていく」

 

 「冷たいねぇ。だが今日のミッションは俺がディレクターだ。現場の指揮は俺が執る。勝手な真似をしてエリスに怪我だけはさせるな」

 

 シノビがふんと鼻を鳴らす。

 

 「シノビなら大丈夫です。さあ、出発しましょう。絶対にお母様を取り返します」

 

 エリスの声を合図に、俺たちはリュグレインの裏門を抜け、北の廃砦へと足を踏み出した。

 

 ―――――

 

 北の砦への道中、三度の襲撃を退け、エリスが二度転んでいた。俺たちは中間地点の峠で休憩をとった。

 

 「ところでシノビよ、お前の名前は何だ?」

 「ない、わからない」

 「名無しか、職業で呼ぶのはちょっとな……よし! お前の名は今日から『サスケ』だ」

 「なっ、何?」

 「倭の国の伝説的忍びの名前だぞ」

 「それ、いいですわね、サスケ!」

 「おっ、お嬢様がそういうのなら、好きにしてください」

 

 どこかまんざらでもない様子のシノビ。

 

 (何?何だか怪しいぞ?コイツひょっとして俺の恋敵か?)

 

 「涼さん、私とサスケとは幼馴染なのです。魔獣大戦の時に家族と逸れて私の父の元にきたのです。幼い時に私が泣くとよく口笛を吹いて慰めてくれたものですわ」

 

 (全然面白くない。サスケは恐らくエリスを好いてるな……俺にはわかる)

 

 エリスが作ってくれた、ホーンラビットの特製カツサンドを皆で頬張る。

 

 「美味い!エリスは料理もできるのか。将来のお嫁さん候補にバッチリだな。……なんてな」


 俺が軽く笑って視線を外すと、エリスは耳まで真っ赤にして「もう、涼さんったら!」と顔を伏せてしまった。


 無言のサスケが言う。

 「涼、出発だ」

 

 だが、俺には一つの疑問があった。サスケが戦闘で何故か『雷切』一振りしか使用しない。

 

 ―――――

 

 北の廃砦、最深部に無事到達。

 

 グリード・キマイラとの接敵前に、俺は「ちょっとお花を摘みに」と言いながら少し離れ、本日一度目のノアを起動した。

 

 「ノア、解析を頼む」

 

 《了解しました。ボス以外に強敵二体を確認。配置をスマホに転送します》

 《涼さん、スリーマンセルはこのフォーメーションで奇襲しましょう》

 《キマイラへのとどめの最適解は、エリスさんと打ち合わせて、この新必殺で行きましょう》

 

 「おお~素晴らしい、俺とエリスでこんな大技が」

 

 戻ってサスケとエリスに作戦を伝えると、二人は顔を見合わせ、信じられないといった様子で俺を見てきた。ノアの存在はまだ伏せる。

 

 いよいよ事前にシャドウ・ファルコンが偵察済みの牢獄に近づくと、作戦通り奇襲役のサスケが無音の走りで、突っ込む。

 

 (!?)

 

 何故かグリード・キマイラとノアの計算より一体多い、三体の強魔獣が待ち構えていた。

 

 (俺たちの奪還作戦がバレてた?)

 

 「チィッ!」と言いながらサスケが切りかかるが、キマイラと接触前に尋常じゃない反応をした強魔獣一体に『雷切』を奪われ、別の一体に弾き飛ばされる。

 

 慌てて俺とエリスの間に入り、出直そうとするサスケ。


 (バレてもしょうがねぇ、今はみんなの命が大事)

 

 そう思って魔獣四体に右手でスマホを向けると、

 

 「涼さん、危ない!」

 

 エリスの声と同時に、サスケが俺に向かって『妖刀・村正』を抜き放った。

 

 ガギィィィィィィィン!!

 

 青白い放電と共に激しい火花が散る。

 俺は振り返ることなく、逆手で抜いた『聖なるナイフ』で、村正の一撃を受け止めた。

 

 「なっ、何……!? この村正を受けきれるはずがない!」

 

 驚愕するサスケに、俺は冷静に言い放つ。  

 

 「ヘヘ、前のナイフじゃ死ぬ所だったぜ。お前が二刀持ちなのは初めから分かってんだよ」

 

 人語を使いこなすグリード・キマイラが割って話かけてきた。

 『使えねぇシノビだなー。まったくよう』

 

 「くっ」

 

 『これで可愛い妹も用済みだな」

 

 サスケは、最近見つかった妹を人質に取られ、裏切りを強要されていたのだ。

 

 スマホの天使の羽ボタンを押す。

 

 「ノアー!急いで分析と打開策だー!!」

 

 【対象エリア内の脅威スキャン:解析完了】


 《メインターゲット:グリード・キマイラ(複合型合成魔獣)》

 《魔獣LV:推定30(A級指定)》

 《弱点:胸部奥の『魔力核』。極大の光属性魔法と物理的刺突の同時着弾が最適解》

 

 《サブターゲット:漆黒の魔犬アビス・ハウンド×三体》

 《魔獣LV:平均22(B級指定)》

 《弱点:高火力魔法。3体同時殲滅以外での迎撃は著しく困難》


 《警告!シノビが抜けたパーティー生存確率:4%》

 《驚愕の事実が判明しました。敵の目的は最初からエリスさんです》

 

 「なっ何だってー?」

 「え、私!?」

 

 《牢屋の見張り一体がこちらに来ましたので、牢屋前は敵気配なし》

 

 『なんだそのおかしなアイテムは? バレちゃしょうがねーなー。そうよ、ババアになんか用はねえ。俺たちの目的は最初からその女の純潔な聖女バージン・ハイブリーストの莫大な聖魔力だ。政権転覆のご褒美がそれなのさ!』


 『だがいいぜー、結局その女さえ捉えればあとはどうとでもなる。どっちにしろシノビら兄弟は用が済めばまとめてこいつらのご褒美飯になる予定だったからな』

 

 「サスケー!!、テメーは自分の妹が助かれば、幼なじみのエリスがどうなってもいいのかよ!?」

 

 「(クッすまない)俺の命は好きに使ってくれていい。俺の宝刀も全て捧げる。頼む!妹とエリスの母親を返してくれ」


 サスケが土下座した。

 

 『人質をわざわざ返す馬鹿がいるかー? 残念だがお前の命はそこまで重くねえ。宝刀なんて勿論最初から頂くつもりだ』と頭をふみつける。

 

 「この、嘘つき野郎がー!!」

 

 足を跳ね除け、空中に舞い上がったサスケに本気を出したキマイラの一撃が炸裂した。

 

 『異形(ケイオス・)魔槍スティンガー!!』

  キマイラの尾が恐るべき速さで硬質化し、呪毒を(まと)った凶刃となってサスケの腹部を深く貫いた。

 大量の鮮血を吐き出し、致命的な一撃を受けたシノビの身体は、糸の切れた人形のように崩れ落ちた

 

 「がっ、がはっ……!」


 「サスケ!」

 

 「……涼……本当にすまない、お嬢様を……守ってくれ……」

 

 サスケは意識を失う間際迄、エリスの方に顔を向け、最期の口笛を吹いた。

 

 エリスが泣き叫ぶ。

 「サスケーーーーー!!」

 

 

 「……おい!!」 

 「やってくれたなツギハギ! 跡形もなく解体バラしてやんよ」

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