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最弱職「便利屋」が攻略AIで挑む異世界冒険記 ―チート勇者とのAI対決を便利屋スキルで出し抜く―  作者: Mr.RX
【生存確率28%】からのサバイバル

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セクハラ男と大神官と天然娘

 目覚めると、見知らぬ天井があった。

 

 鼻を突く消毒薬の匂いがする。


 「俺……まだ生きてるのか?」


 どうやら、最悪の事態は免れたらしい。

 ズキズキと痛む身体を起こそうとすると、ベッドの傍らから声が上がった。


 「気がついたんですね……っ!!」


 歳をとった医者らしきじいちゃんの隣から、大きな眼鏡をかけた女が、俺の顔を覗き込んできた。

 微かに漂う清潔な石鹸の香り。


 「あっあんたは、イヤ、それよりカイン、カインのヤツはどうした?」

 「一緒に倒れていたシーフの男性の事ですね?彼は別室です」

 「別室?まさか死んだ?」

 「安心して下さい。私達の応急処置により、命だけは取り留めました。ただ……」

 「ただ?」

 「魔物の刃に呪毒があったようで、抜けるのに最低でも三ヶ月は絶対安静です。

 それとうわ言のように、兄貴大丈夫か?兄貴大丈夫か?と……自分がやられてしまった精神的ショックも大きいようです」


 (……めっちゃ泣ける……)


 「イヤ生きてるだけでも御の字だ。有難う、エリス」

 「えっ!?何故私の名前を?」


 じいちゃん医者がすかさず反応。

 「えっ!?呼び捨て?」


 「あっいや、その、あれだ、この国の有名人だから?」

 「そうですか、最近色々あって他国でも私の名前が一人歩きしているみたいで」

 「紹介が遅れた、俺は涼、人呼んで『便利屋の涼さん』だ」

 「涼さん……ところで便利屋ってジョブ、ギルドにありましたっけ?」

 「まっまあ、時代を先取るNEWジョブって事で……」

 「よくわかりませんが素晴らしいですわ!」


 (おー?この娘天然か? ますます可愛いぃ)


 「それより残念な知らせがある。カインをやったのはあんたの護衛の一人だ。そしてそいつは人間に変装した上級魔獣だったんだ」


 「え!?」


 「そうだ、エリスの身に危険が迫っていたから俺が倒したんだ。そう、カインではなく間違いなく俺が倒した」


 「涼さんが私の為に……」


 (悪いがここは恩を売らせてもらおう)


 「事態は深刻だ。急いでエリスのお父さんに報告した方がいい。大神官の所までエスコートしてくれ」


 じいちゃん医者が口を挟む。

 「それじゃ、私めが」


 (ジジイはすっこんでろっつーの)


 「いや……この子がいい」

 「そうですね、極秘事項らしいので、私と一緒に父上の所へ行きましょう」

 「すまんがエリス、右足がまだ痛むので肩をかしてくれないか?」 

 「それなら一つ下の階の部屋に確か松葉杖が……」

 (ジジイ、どうしても寿命を縮めたいらしいな)


 「涼さん、緊急の話ですよね?」

 「そう、超緊急!」


 エリスの肩を借りて医務室を出る。


 (はあ、なんて良い匂いの髪なんだぁ)


 「うっ、イテテテ、死闘の傷が……」

 よろけそうなフリをする。

 

 「あっ、大丈夫ですか?」


 身体がより密着する。


 (脇腹の辺りに豊満な胸の感触が……)


 「涼さん、急ぎましょう」


 (イヤ、もっとゆっくりでいいんだけど)


 ゲスいセクハラをしていると、到着したのはこの神殿の奥にある重厚な執務室だった。

  その奥には、立派な髭を蓄えた恰幅の良い初老の男――この国の大神官が、腕を組んで立っていた。


 (この神官がこの宗教都市のトップか)


 「エリス、その男はなんじゃ?」

 「お父様、このお方が我が国にとって大事な話があると」

 「何?」

 「どうやら私も知らないうちに助けられたようです」

 「……話してみなさい」

 「初めまして、お父さん……」

 「!? 何だお前は!? おっお前にお父さんと言われる筋合いはない!」

 「お父様! 涼さんは私の命の恩人です!」


 エリスが怒りながら割って入ってくれる。

 

 (怒った顔もめちゃめちゃ可愛い)


 大神官は冗談が通じるタイプではないらしい。


 「神官、実はかくかくしかじかで。敵はどうやら娘さんを人質にしようとしてました。何か思い当たるフシはないですか?」


 「なっ何じゃと、まさか……」


 ゴンゴン!


 そこで、ノックと共に忍者のような出で立ちの男が、疾風の如く神官の足元に飛び込んできた。


 (カインと同タイプか)


 「シノビ、何事じゃ」

 「急報です、奥様がさらわれました」

 「なっ!なんじゃと?」

 「お母様が……!」

 神官親子が同時に驚く。


 シノビが神官に耳打ちする。


 「……エリスの恩人よ、そなたの情報と、我が麾下きかにいるシノビの報告が一致した。私の弟……エリスの叔父が、異端の魔獣と結託してこの都市を乗っ取ろうとしている。奴らの狙いはエリスを人質にすることだったようだが、そなたたちと戦闘で計画が狂ったのだろう」


 (身内の権力闘争だったか)


 「そして事態は今、急変した。奴らはエリスの代わりに……私の妻、エリスの母親を攫ってここを脱出したのだ」


 「しかも現在、弟の反乱軍と『処刑犬(ヘレティック)(・ハウンド)』が明朝には都市の門に到達する。私と聖騎士団は、総力を挙げて都市の防衛に当たらねばならん。妻の救出に割ける戦力がないのだ……どうすればよいのじゃ……」


 (生身で都市の全面防衛戦はリスクが高すぎる。だが、人質救出なら少人数での潜入が基本だ。ここで貸しを作れば報酬は跳ね上がるだろうし、エリスの好感度も稼げるな)


 「お父……イヤ神官、人質奪還の出張依頼、俺が引き受けよう!」


 「何じゃと!?」


 「先導役で、そこの凄腕忍者を御供(おとも)につけて貰えるなら可能だ。それと隠密作戦につき、あと一人回復役の僧侶がどこかに居れば……」


 (私が行きます)


 「私が行きます!」


 (よし来た)

 

 「何?お前も行くというのか」

 「自分の母親の為に私が行くのは当然です」

 「しかし……」

 「大神官様、シノビの私が命に代えてもお嬢様を守りましょう」

 「決まりだな。急いで作戦会議と出発の準備にとりかかろう」

 「あいわかった」


 大軍勢との正面衝突は聖騎士団に任せ、こちらは少数精鋭でエリス母を奪還しに行く。

 便利屋としての出張依頼ミッションの条件は揃った。

 あとは出発前の入念な作戦会議と、あの『相棒』による情報収集を残すのみだ。

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