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BUDDY(バディ)  作者: siki
9/11

聖女たちの願いと王国の罰


高らかに宣言した聖女たち2人の答えに周りがシーンと静まり返った。しばらくして、国王陛下が困ったように口を開く「他の願いはないのか」と。

 国王陛下の問いに聖女2人とも首を横に振る。聖女たちが旅の途中で話てくれたように、残してきた両親のことが気に掛かっていたのだ。

 聖女2人の反応に国王陛下は頭を抱え言いにくそうに聖女2人に告げる。

「すまないが、その願いを叶えてやることはできないんだ。」

 遠回しに「帰れない」と言う風に国王陛下は告げるが、そんな国王陛下に突っかかったのはいつも強気な聖女だった。

 

「帰る方法探したの?探したのならその証拠を見せなさいよ。

 まさか何も確認しないで言ってるわけじゃないわよね!!?」

 そう言って聖女は国王陛下を睨みつける。これまでの文献には歴代聖女は生涯聖魔法を国のために使ってくれたと書かれていたため、まさか今回の聖女が「帰る」なんて言うことを想定していなかった。もちろん返すための方法だって全く探していない。その事に国王陛下は戸惑い、焦っていた。

 国王陛下が言葉に詰まっていると、聖女はそれが答えだと言わんばかりに怒鳴った。

「調べもしないで「帰れない」なんて何様のつもり!!!?

 こっちの事情なんてまる無視で呼んだくせに、調べる努力もしないなんて怠慢よっ!!

 それとも、聖女は帰らない者と言う考えしか持たなかった愚者なのかしら!!?」

 聖女に図星をつかれた国王陛下は黙るしかなかった。これでは聖女召喚の時と同じ構図である。唯一違うのは聖人までもが国王陛下を睨んでいるところだろう。王太子殿下も国王陛下を庇うことができずに黙り申し訳なさそうにしている。周りも先ほどの賑やかさが嘘のように誰も話さない静かな空間が広がり、聖女たちの怒りに答える者はいなかった。

 

「誰か何か言いなさいよっ!!!」と聖女の怒鳴り声が悲痛な叫びに変わる。そんな聖女を支えるのは聖人だけだった。

 誰も何も答えない。それが意味するのは誰も聖女たちを帰すつもりがないと言うこと。誰もが、誰かにこの状況をどうにかするように周りに目配せをしている。周りを見渡した聖女たちは誰も何もする気がない人たちを目の当たりにして周りの全ての人が敵に見え、絶望しかなかった。

 聖女は悔しそうに手を握りしめ、下を向いた。その目には涙が浮かんでいた。聖人はそんな聖女を心配そうに見た後、すがるような気持ちでハクとシュウの方に視線を向けた。ハクは聖人の視線に気づくと「仕方ないな」と言う風に微笑んで返した。聖人はその事に酷く安堵しホッとすると聖女の袖を引っ張りこっそり「大丈夫だよ」と言ってハクたちの方を見るように促すと今度は手まで降っていた笑顔のハクに気づき、いつの間にか入っていた肩の力を抜く。全て全てが敵になったわけではなかったのだ。

 

 ハクは聖女たちの落ち着いた様子を確認すると、シュウに「さて、行こうか」と言って中央に向けて歩き始めた。シュウもハクの後に続いて歩き始める。

「何か策があるんですか?」

「どうだと思う?」

 シュウの質問に面白そうに返すハクに「あるんでしょうね」と呆れながら返す。ここだけはこんな時でもいつも通りの空気だった。

 

 ハクは聖女たちのところにつくと「良く頑張ったね」と言って聖女たちの頭を撫でてあげた。聖女たちはそんなハクにくっつく。すっかり懐かれたものだ。ハクたちの登場に王太子殿下や国王陛下たちも安堵する。ハクなら上手く話をまとめてくれると思ったのだろう。

 しかし、ハクが取った行動はその場の聖女たちやシュウ以外の全員に殺気を向けると言うものだった。聖女召喚の日にシュウがうっかり流してしまった殺気とは違いハクは意図的に殺気を出していた。威圧に近しいその殺気は、何年も戦場を潜り抜けてきた者でも立っているのがやっとの事で、観客の殆どが失神するか腰を抜かしていた。

 

 ハクは聖女たちをシュウに託すと国王陛下を真っ直ぐ見る。

「こんにちは。国王陛下。」

 ハクは何事もないかのように国王陛下に挨拶をする。国王陛下は冷や汗をかきながらも「あ、あぁ」と返していた。

「国王陛下。聖女召喚を行ったあの日。僕のBuddyがお灸を据えたかと思いますが、まさか理解していなかったどころか、仕事もしないとは…。

 その席もう譲られた方がよろしいのでは?

 まぁ、後継も後継なような気がしますが。」

 そう言ってハクはチラッと王太子殿下を見るが、王太子殿下は白い顔で冷や汗を大量にかきガタガタ震えていた。なんとか気力で立っているような状態だ。そんな王太子殿下の状態を鼻で笑い、ハクは国王陛下の方へゆっくり歩きながら国王陛下に語り始めた。

 

「国王陛下。答えは簡単なんですよ。

 陛下は国民のため国のあらゆる事態を予測し、適正の人間に指示を出すのが仕事でしょう??

 さぁ問題です。国王陛下。

 陛下の目の前にいるのは誰ですか?」

 国王陛下は目の前にきたハクを瞬きする事なく見つめ、ハクの質問にどうにか答えようと鯉のように口をパクパクしているが、何も言葉を紡ぐことができない。ハクはそんな国王陛下の顎下に風で作った刃を向け「聞こえませんね」と告げる。国王陛下はさらに大量の冷や汗をかきながらも「ハク」とどうにか答えを絞り出した。その声は掠れていてとても小さな声だったが、ハクは国王陛下の答えに満足し頷きながら風の刃をしまう。

「そう。正解です。国王陛下。

 あなたの目の前にいるのは世界一の天才である僕だ。

 だからあなたは僕に一言こう命じればよかった。「聖女帰還の魔法陣を作れ」と。

 ほらね。すごーーく簡単だろう?」

 そう言ってどこかの悪役のように笑うハクを見た国王陛下はあまりの恐怖に泡を吐いて気絶した。聖女たちはそんなハクを唖然とした表情で見ていたが、シュウはいつものことのように眺めているだけだった。

 

 ハクは国王陛下が気絶したのをつまらなそうに見た後、殺気を終い、国王陛下に背を向け聖女たちやシュウがいるところに戻ってくるきて、いつもの優しい笑顔で屈み、聖女たちと視線を合わせ言う。

「さぁ、聖女様。お仕置きはこの辺で一旦終わりにして帰る支度をしてきてください。

 送りますよ。」

 本当に軽く、ちょっとそこまで程度にサラッと言うハクに聖女たちもシュウもまだ意識を保っていられた王太子殿下も理解が追いつかなかった。驚いた表情で最初に声を出したのは聖女たちだった。

「私たち」「帰れるの?」

 ハクはそんな聖女たちに自信を持って頷いて「もちろんですよ」と言った。ハクの言葉に表情に聖女たちは徐々に実感したのかだんだん喜びの表情へと変わり、向き合ってお互いの手を握りその場で「「やったー!!!」」と言って跳ねる。その様子を立ち上がって優しく見守るハクにシュウは声をかける。

 

「ハク。大丈夫なんですか??」

「僕ができると言った事で失敗したことあるかい?」

 ハクはシュウに自信満々に返す。そんなハクにシュウは首を横に振り「いいえ」と即答した。ハクは周りを見渡すと「うーん」と言いながら何かを確認してシュウに言った。

「シュウ。悪いけど、使いものになりそうな人いないし、聖女様の帰りの支度を手伝ってあげてくれるかい?こちらの服のまま返すわけにはいかないだろう?」

 どうやら、侍女を探していたようだったが先ほどのハクの殺気でまともに動ける者はいなさそうだった。ハクの言葉にシュウは頷いて返し「ハクは?」と聞くと「ちょっとこの辺掃除しとくよ」と言いながら指を刺していた範囲には数人倒れており、倒れた拍子に落ちたおか、割れた皿や食事が少し散乱していた。シュウはハクに「ほどほどにしてくださいよ」と言ったがハクは「風でちょちょいだから大丈夫だよ」と全然大丈夫じゃなさそうな事を言っていた。

 

 最後にハクはもう一度聖女たちに目線を合わせるように屈むとこれからの説明をした。

「聖女様。お部屋に行って着替えてきてくださいますか?。

 聖女様のお部屋はここから離れていますので向こうまでは被害にあってはいないと思います。なので着替えは向こうの侍女が手伝ってもらってくださいね。

 念のため、護衛にシュウをつけます。僕はここを少しお掃除して待ってますね。きっとお掃除に時間かかると思うのでできるだけ、ゆっくり着替えてきてくれると助かります。」

 そう言ってハクが笑うと聖女たちも「「うん!!!」」といい返事と笑顔で返してシュウと共に会場を出て行った。

 

 それを見送ったハクは「さてと、始めますか」と呟き、帰還に必要になりそうな範囲の邪魔な人やものを風魔法でヒョイヒョイとどかしていく。十分な範囲を確保できたハクは「よし」と言って満足そうにしていた。そんなハクになんとかハクの殺気に耐え切った王太子殿下が少し回復したのかおずおずとハクの名前を呼んだ。ハクはそれに王太子殿下を振り返る事なく「なんだい。」と返す。その声に感情はない。

「その…すまなかった…。」

「その謝罪は僕にすべきじゃない」

 ハクは王太子殿下の謝罪をバッサリ切り捨てる。王太子殿下も「そう…だね…」と力なく返す。そんな王太子殿下を普段名前で呼ぶことのないハクが名前で呼んだ。

 

「ウィル。王になる覚悟が本当にあるのなら、思考を停止させないでね。」

 

 ハクの言葉に王太子殿下は自然と「え?」と声を漏らした。ハクはそんな王太子殿下に構わず話を続ける。

「物事には「ありえない」はない。

 もし「ありえない」ことがおこったのだとしたら、それは単純に視野が狭かったか、思考を停止していたかだよ。」

 王太子殿下を見ることなく話続けるハクの言葉を王太子殿下は静かに聞いていた。

「だからね。今回聖女様を家に返すことを「ありえない」と感じたのなら、ウィルの視野が狭かったか、思考を停止させてたんだよ。

 単純に視野が狭かっただけなら学べばいいけど、思考を停止しちゃうともう進めないよ。

 ねぇ、ウィル。

 時間も環境も刻一刻と変わるのに、国王が止まっちゃったら国ってどうなるんだろうね?」

 ハクのその問いに王太子殿下は恐怖を感じた。答えは簡単だった。国が滅ぶだ。

 王太子殿下が答えにたどり着いたのを気配で察したハクは王太子殿下の方をゆっくり振り返り。話を続ける。

「国に休憩も終わりもない。永遠とも思える時をずっと思考し続ける覚悟がないなら、今のうちにその「王太子」の王冠捨てた方がいいよ。ウィル」

 

 すごく、優しい口調で笑いながらハクは言った。これはハクからの忠告だ。幼馴染としての忠告。国王陛下の聖女たちへの対応を見ていたハクは次の国王になる予定の王太子殿下に「国王陛下のようになるなよ」と言う忠告。それはまだハクが王太子殿下に期待を持っている証でもある。王太子殿下はゆっくりハクの言葉を理解して、納得して一つ静かに確かに頷き。「ありがとう」と返した。

 王太子殿下の答えにハクは満足そうに頷いて返した。

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