聖女たちの想い
旅を始めてから、2週間と言う速さで旅を終わらせた聖女たちは王宮に帰ってきていた。そのことに国王も含め、王宮の誰もが驚いていた。今は、旅の間ずっと護衛をしてくれていたハクとシュウとは別れ、聖女たちの自室で2人は過ごしていた。ハクとシュウと別れる時、王宮でも護衛してくれないのかと王太子殿下に聞いたが、結果はダメだった。
2人は強いから、最も危険な任務へと行かないといけないらしい、旅の間で出会ったA級やS級と呼ばれる魔物の元だ。聖女たちは旅の間ずっと2人が戦うところを見ていたが、確かに2人の強さは素人の聖女たちでもわかるぐらいに他の人たちと頭一つ以上抜けて強かった。王太子殿下に聞いた話だと、あれでもまだ本気を出していないと言っていた。冗談抜きで2人が本気で暴れると国一つ簡単に滅ぶそうだ。
だからこそ、今回の聖女召喚を行うかどうかはギリギリまで決まらなかたらしい。ハクとシュウのBuddyが必ず守ってくれていたからだ。でも、彼らも人間だ、いつまでも今の状態をキープできるはずがないと言うのが聖女召喚の決定打になったそうだ。
そんな2人は聖女たちにとってこの世界で唯一と言っていいほど、話やすく安心できる2人だった。その強さも一つの理由なのだろうが、ハクはとても聞き上手な上に物知りで聞いたことには全て答えてくれたし、シュウはあまり話はしないが、ツッコミはするノリの良さや聖女たちが悪ふざけをしてても他の人たちと違って「多少の怪我は大丈夫でしょう」と好きにやらせてくれていた。もちろん危ないと判断した瞬間に止められてはいたが。
そして何より2人は嘘をつかない。王太子殿下が言いにくそうにしていても2人はスパッと言い切るのだ。少なからず、大人の事情と言うやつで隠しておきたいことも王太子殿下にはあっただろうが、2人にことごとくバラされていた。そのことに王太子殿下が怒るまでが旅の最後の方では定番になりつつあった。
そんな楽しかった旅の日々を思い出しながら、聖女たちはお互い向き合うように大きな窓の淵に並んで座り、揃って空を眺めていた。
「暇だね。」「暇だね。」
「2人は何してるかな?」「何してるだろう?」
聖女たちの疑問に答えられる者は部屋にいなかった。そんな聖女たちの元に届いたのは王太子殿下からの一つの伝言だった。
「明日。祝賀パーティーを来ないます。参加をお願いします。
追伸、国王陛下より褒美がもらえます。欲しいものを考えておいてください」
と言う伝言に聖女たちは顔を見合わせる。聖女たちの願いはもう決まっている。そしてその願いへの答えも聖女たちはすでに予想できているのだ。
祝賀パーティー当日。聖女たちは代々この国の聖女たちがきていた正装を着てパーティー会場に向かっていた。普通は夜やるらしいのだが、聖女たちが子供なため昼間に行うことになった。特に聖女たちは夜になるとすぐ寝てしまうのも理由の一つだろう。
パーティー会場はすごいハデだった。昼間でもキラキラしすぎて逆によく見えなかったが、みんなに注目されながらの入場だったため、見えなかったおかげで緊張せずに済んだ。しばらくすると目が慣れてきて、会場全体が見渡せるようになった。聖女召喚は一部の者たちにしか知られていないことの割には沢山の人がパーティーに集まってきていた。
聖女たちは目が慣れて最初に目に入った鮮やかに盛り付けられた料理たちに近づくと「「すごいねぇ」」と目を輝かせる。近くにいた給餌係のメイドが食事の取り分けを申し出てくれたため、綺麗な盛り付けを壊したくなかった聖女たちは素直にお願いした。
聖女たちが2人でキャッキャしながら料理を食べていると王太子殿下が聖女たちを見つけて近づいてきたが、何も話さず胸に手を当て一礼を軽くした後その場に止まった。聖女たちがそのことに不思議そうに首を傾げて王太子殿下を見て「「どうしたの??」」と言うとその答えは聖女たちの後から返ってきた。
「パーティー中、食事をしている人に話しかけてはいけないと言うルールがあるんですよ。」
旅の中で聞き慣れたその声に聖女たちが嬉しそうに振り返ると、騎士や魔法士たちがきている正装と同じ服をきたハクとシュウがいた。振り返った聖女たちにハクは微笑みながら挨拶をする。
「こんにちは。聖女様。美味しいですか?」
そのハクの後ではシュウが胸に手を当て一礼をしていた。
ハクの挨拶に付け加えられた質問に聖女たちは「「美味しです!!」」と元気よく答える。そしてまた、何かに気づいて不思議そうに首を傾ける。
「あれ?食事中の人に話しかけちゃいけないなら」
「ハクさん、ルール違反?」
ハクは聖女たちの疑問に微笑みながら答える。
「緊急時は別ですよ」
「「緊急時???」」
「はい。もうすぐ、国王陛下が来られます。
その後、褒賞の際には王太子殿下と中央に出なければなりませんので、気になる食べ物は先に食べてくださいね。」
ハクの言葉に思わず王太子殿下がジト目で突っ込む。
「そこは「控えてください」じゃないのかい?」
王太子殿下の言葉にハクは呆れたように「食べたい時に食べたいものを食べたいだげ食べるんですよ」と返すとそれを聞いてたハクの後ろにいたシュウは「噛みそうだな」とボソッと呟いた。そうこうしてる間にお皿に乗っていたご飯を食べ終えた聖女たちは、給餌係の人がくれたフキンで口を拭きながら、ハクたちの方を向いて言った。
「「ハクさんたちは、一緒に来ないんですか?」」
「僕たち今回は見守り隊ですよ。」
「「ご褒美ないの??」」
「僕たちにとっては通常業務の一部ですからね。」
ハクの答えに「「ふーん」」と言って聖女たちは顔を見合わせた。
そうしてると突如会場の入り口が騒がしくなり国王陛下は会場入りを告げた。全員が国王陛下に頭を下げて国王陛下を迎える。聖女たちも正式な礼の仕方を知らないにしても周りが頭を下げると頭を下げないといけない気になり、頭を下げようとしたが、それはやんわりハクに止められた。聖女たちがハクの方を見るとハク首を横に振り「聖女様の主じゃないでしょう」と言った。そう言うハクにとっては主なハズなのに頭を下げていなかった。多分聖女たちのためだろうことは聖女たちもすぐわかった。
国王陛下が中央の少し高いところに置かれている椅子に座ると、全員に頭を上げるように促す。そして全員が頭を上げたことを確認すると、今回の聖女たちの旅が無事終了したことを高らかに告げた。そして聖女たちに褒賞のため前に来るよう促した。それに王太子殿下は反応し、聖女たちを中央へと誘導する。
聖女たちは「頑張ってね」と手を振るハクに見送られながら王太子殿下の後をついて中央にでた。王太子殿下は中央に出ると胸に手を当て一礼したが、聖女たちはせず、ただ国王陛下を見上げるだけだった。それに周りは少しざわつくが、先ほどのハクが聖女たちに言っていた言葉が聞こえていた王太子殿下は何も言わない。
国王陛下も気にする様子もなく、話を進める。
「聖女、もみじよ。此度の結界の貼り直し、ならびに瘴気の浄化を2週間と言う短期間で見事に成し遂げたこと、国民を代表し感謝する。
褒美として欲しいものがあればなんでも申すが良い。何がいい?」
国王陛下の言葉に聖女2人は顔を見合わせ頷き合うと、真っ直ぐ国王陛下を向いて前もって2人で決めていたセリフをハッキリ言った。
「「家に帰してください」」




