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BUDDY(バディ)  作者: siki
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浄化


 しばらくみんなでハクとシュウの戦いに見入っていたが、王太子殿下は何かに気づき、だしていた剣を鞘にしまい、聖女たちに告げる。

「聖女様方、そろそろ浄化を始めませんか?」

 王太子殿下の提案に聖女たちは困惑していた。それもそうだ、先程王太子殿下は聖女たちに魔物のヘイトはシュウの魔力で集めていると言ったのだから。聖女たちがその魔力を使ってしまうとシュウがしていることが無駄になるかもと思ったのだ。そのため2人は王太子殿下に「「大丈夫??」」と首を傾げながら聞いた。それに王太子殿下は自信をもって「はい」と頷き返した。そして「見ててください」と言って護衛たちより前に出て何もない空間をノックするとコツンと音が鳴った。見えない何かかそこにあるのだ。

「これはハクが張った結界です。流石にこの結界はシュウが出している魔力より上回りますから、もう後ろで魔力を使ってもいいと言う合図にもなります。

 なので、今のうちに浄化をしませんか?」

 

 王太子殿下の説明に聖女たちは理解し頷くと、お互いに向き直り、お互いの両手を合わせて握ると、2人とも目を閉じ集中した。しばらくすると聖女たちの足元からいくつもの白い線のような光が地を這うように枝別れをして各方面に伸びていく。そして最後にはその線の先々に花が咲き始め全ての花が咲いた時、光はより一層強くなった。光が収まる頃には周りの瘴気は消えていたが、聖女たちを中心に円状になるよに書かれたその花だけは残っていた。みんながその光景に驚いている中、呑気な声が響く。

 

「おー!綺麗だね!!」

 それはいつの間にか戦いを終えたハクの声だった。ハクは王太子殿下たちに近づきながらレイピアを鞘に収め、そのまま空中に放り投げると、レイピアは消えた。収納魔法でしまったのだろう。シュウもハクの隣を歩きながら、大剣を鞘に収めていた。

 そんな2人に王太子殿下は「倒し終わったのか?」と聞くと「はい」とシュウが頷いて返し王太子殿下の前で止まったが、ハクは横を通り過ぎていき、聖女たちに視線を合わるために屈み声をかけた。

 

「初めまして、聖女様。僕はハクと申します。

 突然で申し訳ありませんが、体調にお変わりはありませんか??」

 ハクの問いに聖女2人は首を横に振った。それを見たハクは微笑み一つ頷くと、続ける。

「それはよかったです。

 魔力を沢山使うとフラフラしたり、吐き気がしたりしますので、後からでも体調に変化がある場合はいつでもお声がけくださいね。」

 ハクの言葉に聖女たちは2人揃って「「うん」」と言って頷いた。それを確認し、ハクは立ち上がり、聖女たちが地面に作った花を興味津々に観察し始めた。そんなハクに王太子殿下は「これが何かわかるのかい?」と聞くとハクは王太子殿下をみることなくさも当然そうに一言「魔法陣ですよ」と答えた。ハクの答えに王太子殿下は驚く。

 

「これが、浄化の魔法陣…」

「と言うより、彼女たち特有の魔法陣ですね。

 歴代の聖女様たちも同じように浄化してたらしいですけど、その地に書かれた絵は聖女様ごとに違ったそうですよ。多分聖女様ごとに浄化のイメージが違うからなんでしょうね。」

「イメージが変われば魔法陣も変わるか…」

「魔法陣の基本だね。」

 ハクはそう言って魔法陣から目を離し「さあ、戻ろうか。」と帰る準備をするよう周囲を促した。それに王太子殿下は慌てる。

「魔法陣消さなくて良いのか?」

 そうだ、魔法陣は残すと悪用されたり、事故をおこすことになるため、残っていたら消すのが基本だ。先日の聖女召喚の時もハクはそれを注意したのにそのハクが魔法陣を残して帰ろうとしている。そんな王太子殿下にハクは当たり前のように淡々と返す。

「聖魔法の魔法陣は聖の属性魔法しか流れません。

 そしてその聖属性の魔法は異世界からの人間、ここにいらっしゃる聖女様しか使えないんですよ。地面に直接書いているわけではないのでそのうち消えますし、悪用も事故も起こそうとしても起こせません。

 むしろ、少し浄化の魔法が残ってる陣をそのままにしておいた方が、この森が瘴気に汚染されるまでの時間稼ぎになると思いますよ。」

 ハクの説明に王太子殿下は少し考えて「渡り人がいたらどうする?」と聞いた。ハクはその質問に呆れたように返す。

「そんな人がいたのなら、そもそも聖女召喚なんてしませんよね?

 実在したとしても領外のしかも危険区域にもなっている森の中に入りますか?ここは普段でもA級の魔物が出るところですよ?」

 ハクの説明に王太子殿下は今度こそ納得し「それもそうか」と頷き、戻るために護衛たちに指示を出し始めた。

 

 遠くからそれを聞いていた聖女たちは近くにいたシュウに「「渡り人??」」と聞くとシュウもそれに気づき答える。

「まれに、異世界から来られる方々のことを「渡り人」と呼んでいます。」

「転生者ってことね。」

「その人も聖魔法が使えるの??」

 聖女が理解し聖人が質問をする。シュウは質問に「はい」と頷いて返し続けた。

「世界を渡った者は等しく聖魔法を使用できるそうですが、ナトゥーラ王国史に記載されている渡り人は2人だけです。どちらの方も等しく王国に貢献されたと書かれています。」

 ハクの説明に聖女たちは「「へぇー」」と興味深そうに聞いていた。遠くから見たら教師と先生のようだ。


 各自準備が終わり、いざ森をでようとした時、王太子殿下は山のように積み上げられていたハズのレッドウルフの死骸がなくなっていることに気づいた。そう言えば燃やした気配もなかったし痕跡もない。あるのは血痕だけだった。王太子殿下は一番知っていそうなハクに振り返り聞いた。

「ハク、ウルフの亡骸をしまったのかい?」

 王太子殿下の問いにハクは「うん」と答える。そんなハクに王太子殿下は不思議そうに続けて質問をする。

「どうしてだい?魔石だけならまだしも、瘴気を一度でも纏った魔物は食用にも素材にもならないから燃やすしかないだろう?」

「問題ないよ。たった今聖女様たちが浄化してくれたから、ちゃんと食材にも素材にもなる。」

 ハクの迷いない答えに、王太子殿下は納得してしまった。瘴気を纏った魔物は接種したり持ち続けると身体に体調不良なのど障害をおこすため、今までは全て燃やして破棄していたが、唯一瘴気を浄化できる聖女が浄化すれば、その魔物に瘴気はついていない=食べても、素材にしても良いと言うことだ。「ちゃっかりしているね」と思いながら全体に聞こえるよう指示を出す。

 

「じゃあ森から出ようか。」

 王太子殿下の号令と共にみんなで森の入り口を目指す。来る時はD級の魔物が出てきていたが、帰りは1匹も遭遇することなく無事にでれた。

 馬車まで辿り着くと、今度は馬車と馬の状態を確認しそれぞれ分かれて乗り、帰路についた。ちなみにハクは馬車に乗っている。魔法で転移してきたハクに馬はないし、そもそもハクがいない時は馬でのシュウとは違い、ハクは全く馬どこか馬車にも乗らないため、本当に久しぶりの馬車だった。

 

 王太子殿下の隣に座り、窓から外の景色を見ているハクを聖女たち2人はジーと見ていた。それに気づいたハクは苦笑して聖女たちを見た。

「どうされました?僕に何かご用ですか?」

 そう聞いたハクに目を向けながら聖女たちは言った。

「ヤンキー」「じゃない」

 聖女たちの言葉にハクは首を傾げながら聞く。

「ヤンキー??とは?」

「不良さんのことだよ!」

「気に入らないことがあればすぐ喧嘩して」

「「よく怒ってる人!!」」

 聖女たちがイキイキとヤンキーの説明をしたが、ハクがそれを聞くと地を這うような声で王太子殿下を呼ぶ。王太子殿下はそれにビックッとなりながらも「はい」返事をした。ハクの表情は笑顔だが、目が笑っていない。

「一体聖女様にどんな説明をされたんですか?」

 王太子殿下がハクの問いに「えーと」言い淀んでいると、なんでもないかのように外で馬に乗って聞いていたシュウが昨日の夜伝えたことをそのまま話す。王太子殿下はそれをハラハラして見ていたが、ハクは思った以上に怒らず「まぁ、一理あるか…」と逆に納得していた。そんなハクにシュウは「自覚があって何よりです」と言っている。

 

 ハクはしばらく考えたあと、一つ頷き聖女たちに向き合うと「ちゃんと自己紹介しましょうか」と言った。聖女たちもそれに頷いて返す。

「僕の名前はハク・ファルファッラです。

 所属は魔法士団。特別遊戯隊所属となっています。階級は魔法士S級。

 僕のBuddyは彼シュウ・フィオーレです。

 彼も僕と同じ騎士団。特別遊戯隊所属で階級は騎士S級です。」

 シュウはハクがシュウの紹介をしたため、馬に乗ったまま胸に手を当てて、軽く礼をする。それを見届けてからハクも話を進める。

「僕たち魔法士は基本的に殆どの者が研究者として活動しています。僕の名誉のためにも言わせて頂きますと、研究者の9割は基本時間にルーズです。それに加え、今回の僕の研究は中々に危険な物でして、途中で止めることができなかったんですよ。

 それでも遅れてしまいましたことは事実です。この場を借りてお詫び申し上げます。」

 ハクはそう言って頭を下げると聖女たちは「「いやいや」」と手を顔の前で振ってハクに頭を上げさせた。ハクが顔を上げると、質問してきたのは王太子殿下だった。

「一体何を作っていたんだい?」

 王太子殿下の質問にハクは面白そうに笑って「それは後でのお楽しみですよ」と返した。

 そんな2人を見ていた聖女たちは「「あれ?」」っと言って首を傾げていた。その声にハクも王太子殿下も反応する。

「どうされました?」

「いや、ハクさんって」「実はお偉いさん?」

 そう聞いてきた聖女たちに答えたのは王太子殿下だった。

「確かに、S級は最高ランクですので地位もありますし、ハクは侯爵家の長男、シュウは伯爵家の三男の地位も持っていますよ。」

 

 聖女たちは「「へぇー」」と言いながら外のシュウを見た。「意外ですか?」と王太子殿下が聞くと聖女たちは頷き「三男感」「ないよね」と言っていた。「貴族感はあったのか」とツッコミを入れそうになったシュウは堪えた。それを見たハクは「ふっ」と笑っていた。ハクは切り替えるように聖女たちに向き直り、質問の意図を聞いた。

「ですが、どうして僕が偉いかどうか気になったのですか?」

 聖女たちは一度顔を見合わせてから答える。

「王子様とは幼馴染って聞いてたから砕けているんだろうなって思ったんだけど」

「綺麗な動きだったから貴族かなぁーって予想してたのに」

 「「爵位を名乗らなかったからどうかな?って」」

 聖女たちの説明に「なるほど」と理解すると、名乗らなかった理由を説明した。

「聖女様には必要ないかと思いまして破ぶらせて頂きました。」

「「必要ない??」」

「はい。聖女様は爵位を気にされる必要はありません。

 ただ一つ。聖女様はこの国の王様より偉い。それだけを覚えていてくだされば良いのです。」

 ハクは大雑把で極端なことをとても真面目な顔で聖女たちに言い切った。王太子殿下は隣で呆れていたが、実際ハクが言う通りなので口を挟むことはしなかった。その後もハクは冗談を交えながら、聖女たちの質問にどんどん答えて行った。時々シュウや王太子殿下のツッコミも入ったが、ハクも聖女たちも気にする様子はなく、笑っていた。そして、短時間で聖女たちと打ち解けたハクは聖女たちの家族の話を聞くことになった。

 

 聖女たちは両親と兄が1人の5人家族なのだと言っていた。とてもノリノリで昔の失敗して怒られたことや、楽しかったこと。特に兄との思い出は楽しそうに嬉しそうに話していた。そんな聖女たちの話を聞いていた王太子殿下はハクの言っていた「誘拐犯になる覚悟」にこの家に返してあげれない罪悪感も入るのだと再認識していた。

 しかし、聖女たちは沢山家族の自慢話を楽しそうにしていたが、唯一一つだけ、気持ちを落ち込ませて話したのは「兄の行方不明事件」の話だった。聖女たちの話をまとめると兄はある日突然家に帰って来なくなり、みんなで探したが見つからなかったとのことだった。だからこそ、聖女たちが今両親の元を離れてここ(異世界)にいることに、両親が子供全員を失ったと落ち込んでいないか心配していた。聖女たちはハッキリとは言わなかったが、もう帰れないことを自覚している言葉だった。その話の時馬車の空気は重苦しいものになったが、その空気をすぐに切り替えたのはハクだった。ハクが聖女たちを褒めたのだ。「自分たちだって不安な中、家族の心配ができるのは偉い」と。そう言って聖女たちの頭をハクがなでると、聖女たちは照れくさそうにはにかみ、一気に和やかな空気になったのだ。

 

 王太子殿下は行きはシュウに帰りはハクに助けられたなと思いながら、楽しそうに話をしているハクと聖女たちを眺めていた。結局話は宿に着くまで途切れることなく、聖女たちは宿についた時残念そうにしていたが、「まだまだ、先は長い旅ですよ」と言うハクの言葉に嬉しそうに休む準備をしに行った。

 どうやら、この旅は聖女たちにとって楽しい旅となりそうだ。

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