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BUDDY(バディ)  作者: siki
6/11

Buddy


後日、聖女たちと王太子殿下、護衛たちは瘴気の濃くなってきている領外へと出発した。聖結界の像は領内の教会にあるため、危険性は殆どなかったが、ここからは本当の危険地帯だ。護衛の王宮魔法騎士団たちにも昨日以上の緊張が走る中、シュウだけはいつも通りだった。ゆったりとしたリラックスした姿勢で馬に乗り、とても危険地帯へ向かっている者とは思えなかった。

 そんなシュウのおかげか、最初は王宮魔法騎士団の緊張が伝わった聖女たちも少なからず、緊張し強張った表情をしていたが、馬車の隣を走るゆったりしたシュウを見て、しばらくすると馬車の外で行われていた朝一の市場に並べられている商品を見て2人でキャッキャし始めた。一緒に馬車に乗っていた王太子殿下はそんな聖女たちの様子に安堵し、心の中で「流石だね」とシュウに賞賛を送っていた。

 当の本人であるシュウはBuddy結成後すぐにS級魔物に突っ込まされたり、訓練だと言うのに容赦なく死ぬ威力の魔法を死角から打ち込まれたりと数々のことをハクにされて何度も心臓が飛び出る思いをしてきているのでちょっと強い魔物が出るところに向かう程度に緊張などしないのだ。むしろ前もって「行くぞ」と言われているぶん余裕すらある。

 

 しばらく馬車を走らせると市場を通りすぎ領外へと出る。領外に出てものの数分でD級、初心者クラスの魔物が殺意をむき出しで次から次へと襲ってきた。瘴気のせいで数も凶暴性も増しましだが、初級な魔物だけあって、全てシュウの元に辿り着く前に他の護衛が始末する。シュウも剣を構えることなくただ眺めているだけだ。

 そんなシュウに聖女たちは声をかた。

「「大丈夫そう??」」

「はい。数が多く、いつもより凶暴化してるようには見えますが、初級の魔物ですから。彼ら王宮魔法騎士団の敵ではありませんよ。

 実際こちらまできていませんでしょう?」

 そう説明いながらシュウは「何も心配はいらない」と言うふうに優しく微笑んだ。それに聖女たちも笑って返す。戦闘中とは思えない和やかな空気に王太子殿下は少し呆れていたが「下手に緊張するよりいいか」と何も言わず見守った。

 

 そんな和やか空間のまま、聖女たちは目的の森の中へとついた。森の入り口で馬車や馬から降り歩いて移動していたが、目的地の少し開けた場所に向かう道中も何回か魔物の群れに遭遇し、どれもD級の初級の魔物で割とスムーズに辿り着くことができたため、王太子殿下を含め護衛全員がホッとし緊張が少し緩んでいた。シュウが腰に下げている大剣を護衛の1人に投げるまで。

 

 シュウが投げた大剣は護衛の周りながら護衛の横を通りすぎ、護衛の後ろにいた魔物の頭に突き刺さる。魔物は悲鳴をあげることなく地面に倒れた。シュウが倒した魔物を見た王太子殿下は青ざめていたが聖女たちを守ように剣を構える。

「あれはレッドウルフか?」

 王太子の確認にシュウは大剣を回収しにその魔物に近づきながら頷く。そのことに護衛全員に再度緊張が走り、全員が周囲を警戒しながら聖女たちを守ため聖女たちの周りを囲む。先ほどまで緊張が緩んでいたのに突然の緊迫した空気に聖女たちは不安になり近くにいる王太子殿下に問う。

「「危険なの??」」

 王太子殿下は聖女たちに振り返ることなく護衛と同じく周りを警戒しながら答える。

「一体であればA級、上級の魔物ですが、群れで動くレッドウルフはS級、災害級とも言われています。とても動きが早い魔物でして、一瞬で背後を取られる魔物です。

 先ほどシュウが倒した一体だけであればいいのですが…」

 そんな望みを口にした王太子殿下に魔力探知をしていたシュウは容赦なく残念なお知らせをする。

「どうやら、群れみたいです。

 まぁ、レッドウルフが群れでないことの方が少ないですからね。」

 大剣を魔物から引き抜きながら、なんでもない風にシュウは言ったが、周りの緊張は高まるばかりだった。シュウはもう一つ腰に刺している大剣を抜き構えると、レッドウルフがいるである方を見ながら「どうしますか?」と言った。王太子殿下がその問いに返事をするよりも早く、王太子殿下の真横から答える声があった。その声はシュウと同様この状況をなんでもない風に思っていそうな言い方で全員の耳に届く。

 

「殲滅でいいでしょう。」

 

 全員がその声の主、ハクの方を驚いた表情で振り向く。唯一驚いていないシュウはそのままハクの方を見ることなく話を進める。

「数は?」

「50。大家族だね。僕でも初めてみる数かも。」

 シュウの魔力探知はハクの魔力探知と違いそこに魔物がいる程度しか分からないため、詳しいことまで分かるハクに情報をもらう。シュウに聞かれたハクは冗談を言いながら、王太子殿下の横からゆっくり歩いてシュウの横に並び立つ。その手にはいつの間にかレイピアをもっている。

「瘴気のせいで数がおかしくなってますね。凶暴化も進んでいる様子でした。」

「ふーん。でもそれって誤差だろう??その程度の誤差問題ないよ。」

 シュウの情報共有にハクは本当にどうでもよさそうに返しながら、自身の周りに火の玉を三つほど浮かべる。火の玉はハクの周りを一定の間隔と速さで回る。シュウはそれを横目でチラッと見て、いつも通りのハクに「ふっ」と笑う。ハクは準備できたのか、チラッとシュウを確認すると、最後の注意事項を言った。

 

「じゃあ、いつも通り囮よろしく。

 手加減しなよ?じゃないとこの森無くなっちゃうからね。」

「分かりました」

 シュウがハクの言葉に同意するのを合図に森からどんどん魔物が2人を目掛けて出てきた。急なハクの登場に声をかけそびれて、ほうけていた王太子殿下は戦闘が始まるのをみると焦った声で護衛たちに叫ぶように指示を出す。

「全員急いで2人から離れろっ!!!近くで動くと魔物と一緒に切られるぞっ!!!」

 王太子殿下の言葉に護衛たちは防衛ラインを下げ、聖女たちの元に集まる。きちんと王太子殿下の声が聞こえていた、ハクとシュウは戦闘中とは思えない程呑気に雑談していた。

 

「ひどーい。僕たちだってちゃんと敵と味方の区別ぐらいつくよー」

「前科がある人に言われても説得力ありませんよ。

 それに、さりげなく俺まで巻き込まないでくださいよ。」

 不貞腐れたように言うハクにシュウはやれやれと言う風にツッコミを入れる。それに納得いかなかったのかハクは口を尖らせて文句を続ける。

 「学生だった時の話じゃん。それに、相手は死んでなければ怪我すらしてなかったし。

 いつまであの時の話引っ張るつもりなんだい?あいつ。

 そんなんだから彼女できないんだよ。」

「王太子に彼女は立場的に無理でしょう。

 それに、それを言ったら俺たちだって彼女どこか婚約者もいないじゃないですか。」

 ハクとシュウの失礼きまわりない話声は、2人の戦闘音でかき消されて2人以外の者の耳までは届かない。それに2人の戦闘は凄まじいもので、シュウは重いはずの大剣2本をまるで短剣の如き軽々と振り回しており、ハクのレイピアを振る姿は優雅で、まるで指揮者のようだった。火の玉はそれぞれ踊るように動いているが、2人ともその動きが早すぎて見ている者たちはその早さに目が追いついていかず、みんなの心の中は「とりあえず、すごい」だった。そんな2人がゆるい雑談をしているなど見ている者たちは夢にも思わないだろう。

 

 ハクとシュウの戦闘を見ながら、聖女たちが「魔物全く」「来ないね」と呟いたのを拾ったのは王太子殿下だった。王太子殿下は聖女に視線を合わせ説明する。

「それは、シュウのおかげですよ。

 魔物は強い魔力を発する者をターゲットにする習性がありますから、シュウが定期的に強目に魔力を周辺に流してヘイトを引き受けているんです。」

 王太子殿下の説明に「あれ?」と言う風に聖女たちは王太子殿下の方をみる。

「でもあの人も魔法使ってるよ?」

「だったらあの人もヘイト貰ってるんじゃないの?」

 聖女たちの疑問に王太子殿下はハクの方を見て「あぁ」と理解すると再度聖女に視線を合わせる。

「ハクが使っている魔法は初級中の初級の魔法で、殆ど魔力は使わないんですよ。ハクのように使うにはどちらかと言うと魔力操作の方が重要になってきますね。

 ウルフ系の魔物は火を恐れる特徴があるので、仕留めるための火と言うより逃げ道を塞ぐための火として使っているんでしょう。だから威力は必要ないんです。

 王太子殿下の説明に「「へぇー」」と言いながら聖女たちの視線は戦闘中のハクとシュウの方に戻って行った。それに王太子殿下も視線をハクたち2人に戻す。そして独り言のように言う。

「すごいでしょう。あの人たちがナトゥーラ王国、最強のBuddyです。」

 王太子殿下の言葉に聖女たちはただ頷くだけだった。

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