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BUDDY(バディ)  作者: siki
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ハクという男


聖女召喚後から3日の時がたった。あれから、聖女たちはこの国のことや、聖魔法の使い方など色々なことを勉強し、シュウは何度かその練習に立ち会ったりしていた。本来なら適任なのは魔法士のハクの方なのだが、ハクはあれ以来研究室から出てきていない。王太子殿下たちもハクを怒らせているため下手にお願いすることができなかったのだ。王太子殿下は少し不安がってはいたが、魔力操作はシュウだってハクのおかげで得意になっており、そのシュウの指導を受けた聖女たちは王太子の心配をよそに3日で聖魔法を完璧なものにした。

 

 しかし、いずれ聖女たちは結界を張り直したり、瘴気を消すために外に出なくてはならない。一応護衛はつけるが、最近ではA級の魔物も多く出現する。瘴気が多いところは下手をしたらS級の災害級魔物も出てくる可能性があるのだ。そうなれば、いくら戦力があろうとこちらも無傷ではいられない上に必然的に聖女たちを守りながらの戦闘になる。こちらが不利になるのは明らかで、唯一S級相手にも無傷で戦えるのはハクとシュウのBuddyだけなのだ。いくらハクの機嫌を損ねているとしても、聖女の安全のためにもそんな人材を護衛につけないわけにはいかない。王族として聖女たちの外出時に護衛してもらえないかと王太子殿下は覚悟を決めて昨日ハクの研究室まで頼みに行った。まさに今日聖女たちは結界の貼り直しと瘴気浄化のために旅立つからだ。しかしハクは王太子殿下を怒るどころか「分かりました」とだけ部屋の中から返しただけだった。

 

 その事に気合を入れて行った王太子殿下は気が抜けたが、当日ハクは来なかった。まさかのボイコットかと思い王太子殿下は、ちゃんときていたシュウにことの経緯を話したら「あの人が研究に冒頭すると話聞かなくなるの知ってますよね?」と返された。

 王太子殿下はハクに怒られることばかり気にして失念していたのだ。王太子殿下はもう一度言いに研究室に行こうとしたが、それはシュウに止められた。

「今はあの人の邪魔しない方がいいですよ。それより出発しましょう。

 城周辺はまだ安全ですし、あの人なら声をかけなくてもきてくれますよ。」

 シュウの言葉に王太子殿下は何かを考えていたが、一つ頷き自分の考えに納得すると、護衛の王宮魔法騎士団に指示を出して出発の準備に取り掛かった。

 シュウはそんな王太子殿下を横目に自分も忘れ物がないことを確認した後、今回お世話になる馬の確認を済ませた。シュウは普段ハクと移動するため、ハクの加速補助の魔法で走って移動するか、遠い場所はハクがシュウも一緒に空間転移で移動するため馬に乗ることがない。そのため他の騎士の様に愛馬がいないのだ。なのでこうしてハクがいない時は馬を借りるのだ。

 

 シュウが馬に乗っていると馬車に乗った聖女たちが声をかけてきた。

「シュウさんは馬で行くの?」

「一緒に馬車に乗ればいいのに」

 その不満そうな声にシュウは馬ごと聖女たちに向き直った。いつもの様に聖女が先に言葉を言って後から追いかけるように聖人が続く。もう、この3日ですでに定着した光景だ。

「申し訳ありません。私は一応護衛ですので」

 そうシュウが返すと聖女たちは膨れたが、ちゃんと理解しているのかそれ以上は言って来なかった。

 王太子殿下が聖女たちと同じ馬車に乗り、聖女たちに出発していいか聞くと2人とも「「うん」」と言って頷いたため、出発した。

 

 馬車は合計3台あり、先頭は聖女たちや王太子殿下の乗る馬車。後ろの馬車には聖女たちや王太子殿下、護衛の王宮魔法騎士たちや聖女たちをお世話する侍女とその侍女の荷物が乗っている。

 王族の紋章が入った馬車が大勢の魔法騎士を連れてゾロソロと王都から出ていくのを国民は何事かと言う表情で見ていた。それもそうだ。国民はその馬車に聖女たちが乗っていることを知らなければ、聖女召喚自体行われたことを知らない。本来なら、聖女召喚が成功したあの日に郊外される予定だったのだが、ハクの遠回しに「聖女のこと考えてやれよ」の効果により、聖女たちに郊外していいか確認をとったところ、聖女たちはそれを拒否したのだ。そのため、国民に知らされること無くなったのだ。これでもし、聖女の意見を無視して公開していたら、魔物に殺される前にハクに殺されていたかもしれない。

 無事、王都を抜け魔物がちらほら出てくる場所まできた。護衛に緊張が走る中、聖女たちは初めての外に目を輝かしていた。前はどこまでも続きそうな草原に左右は森と言う何もないところだが、聖女たちは「きれー」「きれいだねぇ」と楽しそうだ。王太子殿下も聖女たちを微笑ましく見ながらこれからのことを考えていた。

 

 聖魔法の結界はナトゥーラ王国の外周にある領の教会にそれぞれちょっとした像があり、その像に聖魔法を使うと発動するものだ。その数は全部で5体。ナトゥーラ王国はそこまで大きくないため、1週間もあれば終わるものだった。しかし、結界を張り直してもすでにそこに発生した瘴気が消える訳ではないため、聖女は1ヶ所1ヶ所止まり瘴気を浄化してから次の場所へ向かうため、過去には数年かかった聖女もいたらしい。

 だが、今回は双子だったからか、聖女は2人いる。そのため、そこまで時間はかからないだろうと王太子殿下は2人の聖女を見ながら考えていたのだ。

 

 王宮から出発し、半日で最初の像がある領に着いた。ここが一番王都から近い場所なのだ。聖女2人は着いたその足で真っ先に像がある教会へ向かい結界をさっさと貼り直した。2人でしてたからか夕方までかけて結界を張っていたにも関わらずケロッとした表情をしていた。泊まる宿の食堂で夕食をとっている時「あれも美味しい」「これも美味しい」と2人でキャッキャとはしゃいでる姿から無理をしている様子も見られないため、王太子殿下もホッとしていた。ちなみに領主邸に泊まらないのは聖女2人が堅苦しいのは嫌だと言ったから領の高級宿に泊まることになったのだ。

 ホッとした様子の王太子殿下に聖女2人は突然質問をした。

「「ねぇ、ハクって人どんな人なの???」」

 

 その質問に固まったのは王太子殿下だけではなく、Buddyであるシュウもだった。そんな2人の反応に聖女たちは不思議そうに2人を見ていた。現実に帰ってきた王太子殿下はフキンで口を拭きながら、後ろに立っているシュウにパスする。

「シュウ。その質問の答えはBuddyである君の方が適任だろう。」

「殿下も幼馴染じゃないですか。」

 王太子殿下の言葉にシュウは呆れながらも返し、少し目を泳がせながら考えて「自由な人ですかね」と答えた。王太子殿下もシュウの言葉に頷く。聖女たちは「確かに」「今日来なかったしね」と賛同していた。シュウは続けて色々当てはまりそうな言葉を言っていく。

「それから…自信家で楽観的。興味ないことにはとことん興味なくて、興味があることしか基本しませんね。後強いですね。物理的に。」

 シュウの言葉に王太子殿下はさらにうんうんと頷いている。聖女2人はハクと言う人物がとてもチャラく我儘なマッチョのイメージで固定されて、だんだん嫌そうな表情に変わる聖女2人を見たシュウは最後に真っ直ぐ聖女2人を見てハッキリ言った。

 

「そして聖女召喚を最後まで反対していた人です。」

 シュウのその言葉に聖女2人は真剣な表情になった。

「それ他の人にも聞きました。この国って危険なんだよね?どうして反対してたの?」

 珍しく、聖女だけでシュウに聞いてきた。

「聖女様方のことを思っていたんだと思います。この国が危険な状態のことは異世界におられた聖女様方には関係のない話です。なのに、こちらの都合でお呼びすることを心苦しく思っておられたのでしょう。「不幸にしたくない」とおっしゃっていましたから。」

 シュウの説明に聖女たちは驚いて顔を見合わせ「「実は優しいヤンキー?」」と2人して首を傾げながらハモっていた。王太子殿下とシュウには「ヤンキー」を理解することはできなかったが、ハクが優しいことだけは否定しなかった。ハクの話はそこで終わり、聖女たちはデザートまで楽しみ、明日のために早めに就寝準備に行った。

 

 聖女たちと別れた後、シュウと王太子殿下は食堂から談話室へと移動した。そこにはシュウと王太子殿下とお茶を準備してくれている侍女1人しかおらず、王太子殿下はシュウにも座るよに促した。シュウはいつものことなので遠慮することなく左右の腰にしている大剣を外し、王太子殿下の目の前のソファーに座る。大剣はそのソファーの横に立てかけた。そんなシュウたちの目の前にお茶の準備をして侍女は部屋を出ていった。シュウが座ったのを確認した王太子殿下はボソッと話始めた。

「ハク、来るだろうか?」

「来ると思いますよ。」

 不安そうにしている王太子殿下にシュウはハッキリ答える。Buddyだからこその信頼なのだろう。それに対し王太子殿下は幼馴染ではあるが、ハクを怒らせており、そのことについてハクからまだ何もされていないことが引っかかっているのだろう。幼馴染だからこそハクの大胆さはよく理解しているのだ。落ち込んだ様子の王太子殿下にシュウは続けた。

 

「ですが、今回はやらかしましたね。

 ハクが折角忠告したと言うのに無下にするとはいつもの殿下らしくありません。

 そんな失敗するほど聖女召喚の成功が嬉しかったんですか?」

 シュウの言葉に王太子殿下は罰が悪そいに黙ってしまった。図星だったのだろう。少しの沈黙の後、王太子殿下は拗ねたようにシュウに返す。

「君たちは通常運転すぎるよ。一応聖女召喚成功なんて一大イベントだと思うけど、どうしてそんな冷静なんだい?」

「俺の隣にいる人を誰だと思っているんですか?

 毎日が一大イベントのような人ですよ?今更すぎます。」

 シュウの返しに王太子殿下は頭を抱え納得せざるおえなかった。そう、ハクはよくとんでもないことをする。それの一番の被害者はBuddyとしていつも隣にいるシュウなのだ。一大イベントを見慣れたシュウとその原因であるハクが今更一大イベントの一つや二つ見たところで驚くことがないのは当たり前と言えば当たり前だった。実際、聖女召喚の時ハクとシュウは呑気に雑談してたし。シュウしか知らないが、シュウはハクがとんでもない物(魔石)で魔道具を作っていたことの方に驚いていた。このBuddyはこう言う者たちでこれが通常運転なのだ。

 

 頭を抱えている王太子殿下にシュウは思い出すかのように顔を伏せ「それに」と続ける。

「聖女召喚を始める前、ハクは「よし」って言いましたでしょう。ハクがそう言った時点で聖女召喚は成功だったんです。成功するとわかっている物に驚きはしません。」

「それは、Buddyとしての信頼かい?」

「いえ、これまでそう言って失敗したことがない経験からです。」

 ハッキリ言うシュウに「それも一種の信頼だろう」と少し呆れたように王太子殿下は言った。シュウはそんな王太子殿下を少し不思議そうに見たが、お茶を飲み干し話は終わりだと言うふうに立ちあがた。

 

「明日は今日よりもさらに瘴気の濃いところに行きます。

 王太子殿下もいらない心配してる暇があるのでしたら早く休まれた方がよろしいですよ。」

「君はハクのことを疑わないんだね。」

「俺がここにいる限り、ハクはきます。それはたとえハクがどんな感情を持っていようとこれは変わることない事実です。 

 あの人は感情で動くことは多いですが、感情で信念を曲げることはありませんから」

 そう言ってシュウは談話室を出て、自分に用意された部屋へ向かった。誰もいなくなった部屋で王太子殿下はゆっくりお茶を飲みながら苦笑していた。

「僕より付き合いが短いシュウの方がハクのことを理解しているようだ…流石ハクが選んだBuddyだよ。」

 王太子殿下の言葉に反応するものは誰もない。

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