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BUDDY(バディ)  作者: siki
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聖女


ハクと別れ、シュウは謁見の間へときていた。謁見の間の中心には先ほどの聖女たち2人が、王太子殿下に付き添われながら立っていた。聖女たちを囲むようにいる見物人全員が事の経緯を見守っているため、シュウが遅れて入ってきても誰も気づかない。シュウもそのまま最後尾で経過を見守る。王太子殿下たちが聖女たちと話してる声は離れ過ぎて聞こえない。が進行役の者の言葉でなぜ聖女召喚を行ったのかは聖女たちに話終わったことはわかった。

 

 聖女たちの表情はそれぞれで、女性の聖女は怒った様な表情で男性を庇う様に少し前に出てた。男性の聖女、いや聖人は怯えた様に女性の腕に捕まっている。2人に共通するのはその容姿と警戒心だろう。それはそうだ。ハクが言っていたように聖女たちにとっては全く知らない場所だ。そんなところで警戒するなと言う方が無理である。

 

 魔法士団団長が鑑定の宝珠を持ってきて、いよいよ聖女であるかどうかの確認のために鑑定の宝珠に触れようと言う時だった。聖女が声を荒げたのは。

「そんな得体の知れない物に触るわけないでしょ!?

 一体なんなのよっ!あんたらっ!!!

 一方的に訳わかんない事ばっかり言って!!!!

 そんなのどうだっていいからさっさと私たちを家に帰しなさい!!!」

 それは当たり前の主張。それでも、予定どりに行かない周りは突然の聖女の癇癪に困り果てていた。まるで、聖女が悪いかの様に。それを見ていたシュウはため息をついた。その困り果てた者たちの中に王太子殿下もいたからだ。

 

 しかし、そうこうしてる間にも場は悪化しており、国王陛下につかみかかろうとしている聖女を王太子殿下や団長2人が頑張って止めようとしていたり、聖人は泣き出してしまっていた。シュウは最後尾から最前列へ静かに移動し、声を張り上げる。

「国王陛下。御前失礼致します」

 シュウの声にその場の全員が動きをとめ、シュウを見る。何人かが「助かった」と言う表情をしていた。シュウは胸に手を当てて国王陛下に軽く一礼をしてから、王太子殿下たちに近づいていった。王太子殿下はシュウが来たことに安堵したが、シュウの冷たい表情を見た瞬間血の気が引いた。シュウがこの表情をしている時は怒っている時だと知っていたからだ。シュウは全員に聞こえる声で王太子殿下に伝える。

 

「王太子殿下。ハクが言っていたことをお忘れですか?」

「ハクが言っていたこと…」

 王太子殿下は困惑したようにシュウが言ったことを復唱した。シュウは王太子殿下の復唱に一つ頷く。

「ハクは言ったハズです。「聖女召喚=誘拐」だと俺たちはたった今誘拐犯になったんです。そして殿下も国のために誘拐犯になる覚悟をしていたハズです。

 なら何故今聖女様を止めているんですか?まさか誘拐しておいて殴られる覚悟すら無かったと言わないですよね?」

 シュウの言葉に王太子殿下は驚いた表情をしていた。どうやらそこまでの覚悟をしていなかった様だった。ハクが前もって忠告していたと言うのにどうしてそこまで自分本位にことが進められると思っていたのかが不思議である。

 

 シュウは王太子殿下の反応に呆れた様に首を振り、国王陛下の方を見た。

「国王陛下もです。聖女召喚をすると最終決定をしたこの国の代表は陛下でしょう。

 ならば代表として聖女様方に寄り添える様、皆を導いてください。この混乱を止めるのは陛下の仕事のハズです。この際、聖女様の怒りの拳を受けられてみては?」

 突然矛先を向けられた国王陛下は「う、うむ」と焦った表情でたじたじな返事しかできなかった。それを見たシュウは「こいつらダメだな」と思い、ため息をついついついてしまった。普通なら国王陛下の前でため息をつくのは無礼に当たるが、今回ばかりは許して欲しい。

 

 そしてシュウは最後に聖女たちに向き直った。聖女たちはシュウの言動と行動に驚いていて、ポカンとしていた。聖人の涙も止まっている。シュウは膝を折り、胸に手を当てて頭を下げ国王陛下にするハズの正式な礼の姿勢をとった。

「聖女様方、突然の呼びかけに驚かれましたでしょう。誠に申し訳ありません。合わせて、聖女様方に対する様々な無礼、重ねてお詫び申し上げます。

 聖女様方には関係ないことだとは思いますが、そこの者たちは騎士なのです。騎士は主たる国王陛下をその命をかけて守る者たちなのです。納得はできないと思います。ですが理解していただけると幸いです。」

 シュウは先ほどの王太子殿下や国王陛下に向けていた冷たい視線と態度とはまた違った、優しい声と誠実な態度で謝罪を聖女たちに伝え、聖女たちを止めていた団長たちのカバーをした。聖女たちは顔を見合わせて、お互い頷き合うとシュウに近づいた。

 

「お兄さんは誰?」

 聖女がシュウに問う。シュウは頭を下げたまま答える。

「申し遅れました。シュウ・フィオーレと申します。」

「じゃあ、シュウさんね。私たち一応呼ばれた意味はとりあえず理解してるの。瘴気?ってのが私たちじゃないと綺麗にできないんでしょ??それと結界だっけ?それを貼り直せばいいんでしょ??

 でもね。私たちちょっと待って欲しいって何度もお願いしたのに誰も待ってくれない上に、あんな訳わかんない物に触らせようとしてきたのよ。だから話が分かりそうなシュウさんがきてくれて助かったわ。」

 聖女の言葉にシュウはチラッと横目で王太子殿下を見ると罰が悪そうに目を逸らした。シュウはその事に再度怒りが込み上げてきたが、聖女たちの前にいる事もありグッと堪え、聖女たちに「不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません。」ともう一度謝罪した。

 

 聖女は「いいの、いいの」と手を振り、困った様にシュウに頭を上げるように言った。

「シュウさんが悪い訳ではないのは分かっているから、顔上げてください。

 聞きたいことがあるの。」

 その言葉にシュウは姿勢はそのままに顔だけ上げて聖女たち2人を見て「なんでしょうか?」と聞いた。シュウの姿勢がそのままなのは聖女たちと目線を合わせるためだ。それを確認した聖女は鑑定の宝珠の方を指差した。

「あれってなんですか?」

 シュウも鑑定の宝珠の方に視線を向けて説明した。

 

「あれは「鑑定の宝珠」と言う物です。主に魔法士の属性を鑑定する時に使用する魔石の一つです。あれに触れると、適正の属性に光よう魔法陣が付与されています。聖女様方のような聖の魔法属性だと白色に光と思いますよ。」

 そうシュウが説明すると聖女たちは「「なるほど」」とハモっていた。シュウは目線で王太子殿下に「説明しなかったのか?」と送ると、王太子殿下は焦ったような表情で首を横に振った。説明はしたと言うことだ。つまり、聖女たち理解できなかったのかと思いシュウは聖女たちに声をかけた。

「最初の説明が難しいかったでしょうか?でしたら申し訳ありません。こちらの配慮不足でした。」

 シュウの言葉に聖女たちはまた顔を見合わせ、困った表情で言った。

「いや、説明はされました…ただ…」

 聖人が目を逸らし、語尾は声も小さくなっていっていた。

「「聖女かどうか確認する道具だ」としか説明されなかったの。そんなんでさっきシュウさんが説明してくれた内容全て理解するなんて無理よ。

 安全かどうかすら分からなかったわ。」

 聖女が聖人の言葉を引き継ぎ、堂々と言い放った。シュウはその言葉に思わず王太子殿下を睨みつける。説明不足にも程があるだろう。一度仕舞い込んだはずの怒りはしまいきれなかったのか殺気まで含んだその瞳に王太子殿下は今にも倒れそうなほど顔色がなくなった。しかし、気合いでなんとかたっている。

 

 シュウはため息が出そうなのを堪え、一度目を伏せ感情を切り替え立ち上がり、魔法士団団長を引っ張ってきて聖女たちに話しかける。

「彼は、魔法士団団長です。先に彼に触れてもらいましょう。

 彼は風の魔法属性を持っていますから、宝珠は緑に光ると思いますよ。」

 そう言うと聖女たちは宝珠を見ていた視線を揃ってシュウの方に向け不思議そうに告げる。

「「シュウさんは触らないの?」」

 最初から最後まで、その発音さえも全くズレることなく2人してシュウに聞いた。

「私は騎士なんです。騎士に所属する殆どの者が魔力を属性変換できません。

 つまり、魔力があっても属性はないんです。なので私ではあの宝珠を光らせることができないんですよ。

 私のBuddyである魔法士は風と火の二属性持ちですから、緑と赤の綺麗な色に光るんです。折角なのでお見せしたいのですが、残念ながら今本人がいないのでまたの機会にでお許しください。」

 そう説明すると聖女たちは納得してくれた。そして2人揃って魔法士団団長が宝珠に触れるところを大人しく見ていた。結果はシュウが言った通り緑色に光った。それを見た聖女たちは「「おぉー」」と完成を上げており、その様子から警戒心が少しとれた様に見えた。しかしついに宝珠に聖女たちが触れようとする時、怖いからとシュウの付き添いのもと宝珠に触れた。

 

 結果は全員が望んだ通り、白色に光り聖の魔法属性であることが証明された。それも2人共だった。周りがその事に歓声を上げる中、シュウは聖女たち目線を合わせ「怖い中頑張ってくださりありがとうございます」と声をかけた。

 その言葉に聖女たちはまたお互いの顔を見合ってからそれぞれシュウに言った。

「シュウさんは小さいことでも褒めてくれるのね」

「ありがとうございます」

 聖女たちのその言葉にシュウは苦笑した。小さいことでも褒めるのはハクの癖だ。ハクは昔から少しでも成功すると偉大なことでも成し遂げたかのように盛大に褒めてくれる。長年一緒にいるシュウはそれが移ったのだろう。そのことに気づいてシュウは苦笑したのだ。

 シュウは聖女たちに「いえ」と返すと、少し申し訳なさそうに聞く。

 

「すみません。実は私は途中参加でして、聖女様方のお名前を拝見していないのです。

 よろしければお名前を教えてくださりませんか?」

 シュウの言葉に聖女たちはまたしても顔を見合わせる。多分その仕草は聖女たちにとっても癖の様なものなのだろう。「そう言えば、私たち」「まだ名乗ってなかったね」そう、一つの文章を2人で分けて言ったあと、シュウの方を向いた。

「「私僕たちの名前は紅葉もみじだよ!!」」

「私がお姉ちゃんで」「僕が弟」

「産まれる前からずっと一緒で」「2人で1人だから名前も一つなの!」

「「よろしくね!!」」

 最初と最後は綺麗にハモリ途中は交互に話す。これまでの話し方や今の話の内容、容姿がほぼ似ていることから聖女たちは双子なのだろうとシュウは予想した。そして、聖女たちの自己紹介を聞いた者たちは困った。聖女たちは2人いるのに名前が一つしかないからだ。それぞれをなんて呼べばいいか分からない。しかし、シュウは聖女たちが言った「まだ名乗ってなかった」と言う言葉に怒りが復活しそうだった。シュウも言えたものではないが、全員が全員、国を助けてくれるかもしれない者たちの名前を聞くより先にこちらの都合を押し付けたと言う事に気づいたからだ。失礼しかない。

 

 とりあえず聖女たちは今日の予定終了とのことで、部屋で休む事になった。シュウも聖女たちに同行するように言われたが、どうしてもBuddyの元に行かないといけないと聖女たちに説明し、魔法士団団長にハクから頼まれていた伝言「後始末はちゃんとしろ」を伝えたあと、王太子殿下と団長たち2人に向き直り「今回のことはハクに報告させていただきます」と告げた。シュウの言葉に3人共青い顔を通り越して白くさせてたが、「はい」と頷いた。それを確認したあと、シュウは国王陛下の方にも目線をむけ「いいですね?」とだけ言うと国王陛下も白い顔で頷いて返した。シュウよりも怒らせたら怖いのがハクなのだ。

 

 シュウはそのままハクの研究室へと向かい、ドアの前にたってドアに手をおき魔力を流して一言「報告」と言った。そう言うとドアに付与してある魔法陣が発動するのだ。魔法が発動すると、シュウとハクは脳内で話すことができる様になる。これは今回の様に緊急だが、いきなりハクの研究室を開けて失敗するだけならまだしも爆発したら危ないためにハクが仕込んだ処置だ。シュウはそれで簡単にことの経緯をハクに報告した。ハクは黙って全てを聞くと一言「分かった。あるがとう、シュウ。」と感情のない声で返した。それはハクが怒っていることを示す。シュウは一つため息をつき、ドアから手をはなすとハクとの接続は切れる。そのまま来た道を戻り、自分の部屋へと帰って行った。

 報告したのはシュウだが、この後ハクはみんなに何をするのかはシュウは考えたくなかった。

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