表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BUDDY(バディ)  作者: siki
3/11

聖女召喚


聖女召喚の当日。

 シュウは行事の時にしか着ない騎士の正装を着て、いつも携帯している大剣を左右の腰にさし、ハクの研究室までハクを迎えに来ていた。ハクは研究に集中し過ぎると予定を忘れることが少なからずあるからだ。

 

 シュウはハクの研究室のドアをノックするが、中にいるハズのハクからは返答がない。それはいつものことでシュウは戸惑うことなく何回もノックを続ける。一定間隔でされ続けるノックに狂気を感じるが、こうしなければハクからの返答は得られない。

 そうして数回目のノックでようやくハクから「ちょっと待ってね」と返答が返ってきた。その返答が返ってくるとシュウはもうノックしないで大人しくドアの前で待つ。

 部屋の中からドタドタと何かが崩れる音や、ドンっと何か重いものが落ちる音がしたが、シュウにとってはいつものことなので、気にも止めて無かった。しばらくそのまま待っていると突然部屋から静寂が訪れた。シュウはその静寂を合図に心の中で10秒数える。そしてちょうど10秒後ハクは研究室の鍵を開けて出てきた。どうしてシュウがハクが10秒後に出てくることが分かったのかはすごく簡単だ。ハクはいつも部屋から出る前に部屋の危険物が安全であるかの確認をしてから出てくるからだ。その確認のための静寂な10秒なのだ。家を出る時に火元を確認するのと似ている。

 

 研究室から出てきたハクはシュウと同じく魔法士の正装を着ていた。そう言うところはちゃんとしているのだ。

「お待たせ。どこだっけ?」

「魔法士団の地下の訓練場だそうです。

 王太子殿下に聞かれなかったのですか?」

「聞いたけど忘れたの。」

 そう拗ねたように言うハクにシュウは呆れた表情で「相変わらずですね。」と言いながら歩き出した。ハクも魔法で研究室に鍵をかけてからシュウの隣を歩く。ちなみにハクが魔法で鍵の開け閉めをしているのは鍵をシュウが持っておりハクは持っていないからだ。

 

 魔法士団の訓練場への移動中、シュウはハクに王太子殿下に聞かされたであろうが、覚えていなさそうな情報を伝えた。流石Buddy長年の経験である。

「一応、俺たちは王太子殿下の護衛と言うことになっていますが、王太子殿下とは現地集合で良いそうです。

 国王陛下は仕事をしながら書斎で待つとのことで、聖女召喚には参加されないと聞きました。」

「そう。自分は安全圏ね。」

 他に人がいれば不敬と咎められる発言をハクはつまらなさそうに言い切った。シュウはそんなハクを横目に見ながらため息はつくが咎めはしなかった。実際、ハクとシュウは国内一最強のS級なため、国王であっても先程のハクの発言を咎めることは難しいのだ。つまり、ハクのことを咎められるのは同じS級であるシュウだけだし、シュウを咎められるのもハクだけなのだ。そんな2人だからこそ、堂々と最後に訓練場に入れるのだ。

 

 2人が訓練場に入ると何人かが安心したようにホッと息をついていた。

 真っ先に騎士団団長と魔法士団団長が2人に声をかける。

「ファルファッラくん。フィオーレくん。

 来てくれて良かったよ。」

「来ないかと思っただろう?

 特にファルファッラは反対してたしな。」

 そう言いながら団長2人はハクたちを訓練場の奥へと招き入れた。シュウは団長たちに「申し訳ありません」ときちんと謝っていたが、ハクは部屋全体をサッと見渡していた。

 

 ざっと100人以上いる魔法士と10人程度の騎士。魔法士は初級のD級から団長クラスのA級を抜くと上級のB級まで幅広く揃っているが、騎士は全員上級のB級。壁には魔法士の魔力補助のためか魔石がぐるっと一周引かれてキラキラしていた。そして、魔法士たちが囲んでいるのが本日、目玉の魔法陣。訓練場の中央に大きく書かれており、直径の長さが人の列で10人分ぐらいの長さの円だった。ハクは魔法陣が視界に映ると「あれか…」と呟いた。ハクの呟きを拾ったのは王太子殿下だった。

 

「そう。あれが聖女召喚の魔法陣だ。

 ハクから見てどうだい?上手に書けてるだろうか?」

 王太子殿下の登場に周りは胸に手を置き礼をするが、ハクはちらっと王太子殿下の方を見ただけで特に何も動かない。王太子殿下は軽く手を上げて周りの礼の姿勢をとる。礼を終えた人たちは全員ハクに注目していた。王太子殿下が投げかけた質問に腕を組んで考えていたからだ。しばらく魔法陣を見ていたハクは突然手の平を上に向けた。その手の上にはどこからともなく魔石が現れる。殆どの者が使うことの出来ない収納魔法だ。

 そして、ハクの手の上に現れた魔石は壁の周りにあるような魔石と違い、ハクの片手にいっぱいいっぱいな大きさで、その輝きも宝石のように綺麗だった。魔石のレア度はその大きさと輝きで決まる。つまりハクが持っている魔石はレア中のレアだった。ハクが出した魔石に周りはざわつくがハクは気にする様子もなく魔法陣の中央にその魔石を置き、帰ってきても一度魔法陣全体を見ると「よし」と一つ頷いた。そんな様子のハクに王太子殿下は話しかける。

 

「魔力が足りなかったか?」

 王太子殿下の言葉にハクは「いや」と言いながら首を振る。王太子殿下の方は見ないまま「ただの保険だよ。」と言ったハクの目は一瞬鋭くなった。

「そうか。助かるがいいのか?あんな貴重な魔石を借りても。」

「問題ないよ。」

 王太子殿下の問いにハクは躊躇うことなく答える。そこでようやくハクは王太子殿下と向き合い、胸に手を当て礼の姿勢をとる。その表情は悪戯をする子供のような笑みを浮かべていた。

「さぁ、王太子殿下。準備は整いました。

 犯罪者になる覚悟ができたのなら、いつでもお始めください。

 僕らは後ろで控えておきますゆえに。」

 そうわざとらしく言うハクに王太子殿下はため息をつき「分かった。ありがとう」と言うと全員に向き直った。ハクはそれを見送ると王太子殿下に背を向けシュウを呼んでシュウと共に一番後ろへ移動し壁にもたれかかり腕を組んだ。シュウはその隣に立つ。

 

 淡々と進んでいく聖女召喚を見ながら2人は呑気に雑談をしていた。全く緊張感なんてない。

「あれ、ただの魔石なんですか?」

「そう思うかい?シュウ。」

 シュウの質問にハクは逆に聞き直す。そのことにシュウはずっと聖女召喚を眺めてていた目をチラッと一瞬ハクに向ける。

「あんたが普通の物を使うとは思えません。」

 シュウの答えにハクは笑みを深め、横目でシュウを見る。

「正解だよ。流石僕のBuddyだね。

 あれはね。魔道具なんだよ。」

 ハクの答えはシュウが考えていたより斜め上の答えだったためシュウは驚いた表情でハクを見る。

「魔石を魔道具にしたんですか!?」

 

 魔石は二つの使用方法がある。一つは魔力補助だ。今回の様な大魔法を使う時や魔力が少ない人が陣に魔力を流すのに使用する。そんな魔力源とも言える魔石を改造しようと考えるのは確かにハクだけではなかったが、それは非常に難しく下手をしたら魔石自体が割れ、使い物にならなくなるのは周知の事実だ。加えてハクはそんな成功率が低いことをあの超レアがつきそうな魔石で平然とやってのけていたのだ。

 シュウの様子にハクは不思議そうに少し首を傾げた。

「それ以外のなんだと思っていたんだい?」

「ただ、ちょっと付与でもつけてあるのかと。

 魔石に炎や水の陣を付与しているのを騎士が護身用で持っている者がいますでしょう?その応用で、魔法補助的な陣を付与してるのかと思ったんですよ。」

 シュウはハクに自分の考えを伝えると、ハクは「あぁ」と言って理解した。

 

 シュウが先程言ったのが魔石のもう一つの使用方法である。騎士は魔法士のように魔力を変換することが出来ない。そのため、魔法のみでしか撃退出来ない魔物に単体で遭遇した場合の護身用に魔石に攻撃魔法の陣を付与した魔石を持ち歩いているのだ。目眩しにもなるし結構持ち歩いてる騎士は多い。

 シュウは一つため息をつくと聖女召喚に再度目を向けて話を続けた。

「魔石に直接魔法陣を付与できる様になってからは魔道具なんて聞かなくなってきましたけど、一体どんな魔道具にしたんですか?」

 シュウの問いにハクは「秘密〜」と楽しそうに笑った。

 

 そうこう雑談している間に聖女召喚はクライマックスを迎えていた。徐々に魔法陣の光が強くなり、とうとうその光で目を開いてられなくなる。ハクとシュウはハクの結界に守られていたため、光の中でも平然と目を開けていたが、2人以外の全員が目を瞑り光が収まるのを待つ。

 光が収まった時、魔法陣の上には2人の男女が座っていた。パッと見て10代だろう。2人はお互いを守ように抱き合っていた。

 どうやら聖女召喚は成功の様だ。周りもそのことに歓声を上げていたが、一部から「何故2人?」と疑問の声も聞こえる。

 

 その光景を一歩下がった空気感で眺めていたシュウだったが、隣に居たハクに視線を向けると凍りついた。ハクは今まで見たこともない様な怖い表情で怒りを露わにしていたからだ。それは殺気とかではなく単純な怒り。しかし、シュウは分からなかった。ハクが何に怒りを覚えているのかが。聖女召喚に怒っているのか、今の彼らの反応が聖女を怯えさせていることに気づいていないことに怒っているのか、またまたその全てか。ハクの怒る要素がありすぎるのだ。

 シュウが困っている間にも話はどんどん進んでいく。聖女たちは国王陛下が待つ謁見の間に移動することが決まり、魔法士は魔力切れをおこす者こそいなかったが全員が限界近いためその場で解散と言うことになっていた。

 

 みんながみんなそれぞれ別れて訓練場を出で訓練場にはハクとシュウだけになった。ハクは誰もいなくなると最初に魔法陣の真ん中に置いた魔石を放り上げ魔石を確認した。魔石は少しくすんだ色になってはいたがその他は特に変わった様子はなかった。ハクは魔石をしまうと魔法陣の縁をなぞるようにゆっくり歩き始めた。その表情に先ほどのような怒りの表情はなくいつもの穏やかな表情ではあったがハクが何も話さないため、シュウも黙っていた。シーンとした空間にふと、ハクの規則的な足音に不規則な足音が混ざったため、シュウはドア前に移動し腰に下げている剣に手を置く。ドアを開けたのは先ほどの聖女召喚に参加していた騎士の1人だった。構えていたシュウに驚いた騎士だったがきちんと伝言は伝えてくれた。

「王太子殿下より言伝です。謁見の間へお越しください。」

 どうやら王太子殿下は2人がついて来ていないことに途中で気づきこの騎士を迎えに横したのだろう。シュウは魔法陣の周りを歩くハクに振り返り「どうしますか?」と聞く。ハクはそれに「う〜ん」と言いながらまた魔法陣の中央に戻ってきていた。

 

「僕はパス。シュウは行ってきなよ。

 ついでに魔法士団団長に「後片付けぐらいしっかりして」って伝えといてくれる?」

 そう言いながら魔法を発動したハクは一瞬で足元の魔法陣を消す。こうして紙以外に魔法陣を書いた時は使用後も消えないことがあるため、そのままにしてると悪用されかねないのも考慮して消さないといけないのだ。魔法士団の地下だし、聖女召喚の陣だしで場所が場所で物が物だから悪用されることはないだろうが、事故が起こらないとも限らない。ハクは「よし」と言ってそのまま訓練場を出ていく。そんなハクにシュウは問う。

「どちらに?」

「研究室〜じゃあ後よろしくね。シュウ。」

 ハクはシュウに背を向けて歩きながら答え、軽く手を振る。

「全く、相変わらずの自由人ですね」

 シュウはそんなハクを見送ると一つため息をつき、呆れたように呟いた。その様子をオロオロしながら見ていた騎士と共にシュウは謁見の間へと移動するために歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ