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BUDDY(バディ)  作者: siki
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聖女帰還後のBuddy


聖女たちを見送った後日。シュウは騎士団の屋上で塀に身体を預けて1人、思い詰めた表情で空を見上げていた。そんなシュウに声をかけたのは昨日全てをシュウに投げたBuddyのハクだった。

 

「君って本当にここ好きだよね。

 ……なーに気落ちしてるの???彼女さんにでも振られた??」

 シュウはハクの方をムスッとした表情で振り返り、文句を口にする。

「俺に彼女がいないのはあんたが一番良く知ってるじゃないですか。

 …それにあんたに言われたくないですよ。あんただって何か考える時ここに良く来るじゃないですか。」

 シュウの答えにハウは笑いながら隣に並んで塀に身体を預ける。

「まぁね。ここ意外と人来ないし。」

「騎士団のほとんどは訓練場にいますからね」

 

 ハクの方を見た時離れた塀にシュウはもう一度寄りかかる。そのまま雑談が始まる。

「それで?騎士塔では君が珍しく元気がないと言う噂でもちきりで、時の人である君の悩みをBuddyであり、世界一の天才でもある僕が聞いてあげよう。

 好きな子でもできたのかい?」

 そうふざけるハクに呆れた表情と目で「そのネタまだ引っ張りますか?」とシュウは返した。しかし、すぐにハクから目を逸らし、思い詰めた表情に戻り、何かを迷い決心のつかない様子で視線をあっちこっち動かしていた。

 そんなシュウの顔を覗き込み、ハクは優しく「どうした?」と問う。

 ハクと目線が合ったシュウは途端に覚悟が決まったかのようにハクに向き直る。ハクもシュウの様子の変化に先程までのふざけた態度から真剣な態度へ切り替えた。

 

「ハク、あんたはあの聖女たちと知り合いだったのですか?

 いや…家族…だったのですか?」

 シュウの質問にハクは驚いた表情をした。つまり、それが答えだとシュウは言われた気がした。そのことにシュウの表情はさらに曇る。しかし、そんなシュウに構うことなくハクの表情はすぐ、イタズラを思いついたような表情へ変化した。

「…へぇ、これは驚いたなぁ。どうしてその結論に至ったか先に聞いてもいいかい?」

 ハクはシュウの前で家族だと思われるような発言をした覚えがなかったからだ。シュウはハクの質問に一つ頷いて答える。

「聖女たちが元の世界に戻る時、あんたのことを「お兄ちゃん」と呼んでいましたでしょう。」

 シュウは確信を持ってハッキリ告げた。そんなシュウにハクは肩をくすめ、次の質問をシュウに投げかける。それは半分諦めている様子だった。

「流石と言うかなんと言うか…あの距離で聞こえたのかい?」

 シュウはハクの言葉に首を横に振り否定した。そして、ハクから視線を外し、少し申し訳なさそうに、読唇術で読み取ったことを伝えた。そのことに、ハクはまたも驚きをあらわにした。

「確かに双子が話をしていたのはこちらの言語だったけど、口元はあっちの言語だったハズだよ。まさか、君はあの短期間の中で他言語を覚えたのかい?」

 ハクの問いにシュウは慌てて下げていた視線をハクに戻し両手を顔の前で振って否定した。

「いえ、聖女たちが兄の話をした時だけ、他の家族の話をするよりイキイキしていたのが印象的で「お兄ちゃん」って口の動きだけ覚えてしまったんです…。」

 ハクは「なるほど」と言ってシュウから目を離し、向き直った時に離れた塀にもう一度身体を預けて空を見上げた。シュウもそれに習ったが、視線だけハクに向けていた。

 

 ハクは一つ笑うと視線だけシュウに向け、答えがわかっていることはわかっていたが、答え合わせを始めた。

「ま、今のでもう言わなくても分かったと思うけど、一応言っとくよ。

 大正解。君の言う通りだよ。シュウ。

 僕は前世、あの聖女のもみじ(紅葉)の「お兄ちゃん」だったんだよ。」

 

 ハクの答えにシュウは悲しい表情になった。あの時、シュウはハクの魔力量に驚いてそのことしか聞かなかったが、後からあの聖女たちが言っていた「お兄ちゃん」が示す人物がもしハクだった時。いや、あの状況でハク以外はありえないとわかっていたが、どうしても否定したかったのだ。だってもしそうだったとしたら、ハクがあの時した決断はとても辛いことだとシュウは理解していたから。こうして直接聞いてちゃんと理解してしまうのがシュウは怖かったのだ。だからシュウはハクに事実を聞くことが出来ずにいた。でもハクを見た時、ハクが優しく声をかけてくれた時、シュウだけ逃げるわけにはいかないと思った。そんな辛い決断を1人でさせておいて、そのまま1人で抱えさせるなんてBuddyじゃない。だからシュウは聞く覚悟を、一緒に抱える覚悟をしてハクに聞いたのだ。最後までちゃんと聞くんだとシュウはハクの言葉の続きをまったが、そんなシュウの頭をハクは笑顔で撫でだ。シュウは抵抗せずされるがままだ。

 

「そんな顔しなくても大丈夫だよ。シュウ。」

 ハクは優しくシュウに言うが、シュウの表情は晴れずに「だが…せっかく…」と言葉に詰まる。その後につながる「会えたのに」まで言えなかったのは、ハクがした辛い判断をともに抱えると決めたシュウ自身が逆にハクの判断を否定するような言葉だったからだ。

 ハクは本来帰ることが出来ないハズの聖女を自力で返した。ハクのした覚悟は空間を超えるために起こる「家族との永遠の別れ」だ。そこまで1人で決心したハクの覚悟をBuddyであるシュウが否定する訳にはいかないのだ。

 

 シュウの様子を見て、シュウの優しさを感じていたハクはシュウと違い穏やかな表情をしていた。そんなハクを見たシュウは悲しい表情のまま震える声でハクに質問する。

「どうして、そんなに笑っていられるんですか?」

「もう終わった話だからね。」

 ハクは迷いなくおどけて答える。ハクの答えにシュウは一緒に抱えることすらせさてもらえないのかと目を伏せ、話を続ける。

「相談…してくれてもよかったじゃないですか。俺たちBuddyでしょう?

 それとも俺はあんたの中でまだ頼りない、出会った頃の俺ままなんですか?」

 少し責めるようにシュウは言ったが、それを聞いたハクは大笑いした。その声にシュウは伏せていた顔を上げて「何故笑うんです!!?」と怒った。

 

「いや、悪い。君があまりにも女々しいことを言うから。」

 と、全く悪びれる様子もなくハクは言う。少しして笑いがおさまったハクは悠々と話だす。

「そこまで深刻に考えなくても大丈夫だよ。シュウ。

 言っただろう?もみじ(紅葉)が僕の兄弟だったのは前世であり今世じゃない。

 今世には今世の家族がいるんだ。何も問題ないよ。

 この世に産まれた時点で僕の中の気持ちはちゃんとリセットされている。

 それともシュウは僕が過去を引きずる奴だと思っているのかい?」

 いつも通りの明るさで本当に何事もないかのように言うハクを見たシュウはこれまでの彼を思い出した、彼はいつでも自信に溢れ、自分を自分で天才と言う程のポジティブな人だったと思い直し、短く「いや」と返した。

 それにドヤ顔で「だろう」とハクは返す。昨日1人で泣いていたやつだとは思えないほどである。バレなければいいと言うやつだ。だって今のハクは「白萩」ではなく「ハク」なのだから。つまりハクはBuddyではない「白萩」の荷物をシュウに持たせるつもりはないのだ。


 シュウは少し心配したことをバカらしく思い、塀に身体を預け空を見た。そしてポツリとハクに確かめるように言う。

「…ハクは渡り人だったんですね。」

 ハクもシュウに習いゆっくり塀に身体を預ける。お互い顔は見なかった。ハクはそのまま「うん」と短くシュウに返す。

 渡り人とは転生者のことだ。

 

「だからあれだけの魔力量を持っていたんですか?」

 シュウの質問にハクは「うーん」と唸った後答えた。

「多分それは関係ないかもね?

 僕元々魔力量多かったし、その上さらに増えるように小さい時から訓練してたからそのせいかなぁ〜?」

 と曖昧にハクは言った。そんなハクにシュウは呆れたように質問を続ける。

 

「隠してたんですか?二つとも。」

 ハクが「魔力と渡り人のこと?」と横目でシュウを見て確認すると、シュウはハクを見ることなく一つ頷いた。それにハクはまたしても「うーん」と言いながらシュウから視線を外し少し考えてから答える。

「渡り人ってことは、そもそもそんなことわざわざ言う必要も機会もないだろう?聖女召喚の時に言っても良かったけど、渡り人と聖女の聖魔法が何かしらの違いがあった時が怖かったから、そう言う意味では隠してたかな?渡り人の文献は少ないからね。確証がないことには僕だって自信を持って「大丈夫だ」とは言えないさ。」

「そう言うのを相談してください。

 と言うことはつまり、聖女召喚の話が出る最近まで自分が渡り人であることを忘れていたと?」

 

 シュウは呆れた表情でハクの答えに返すといい笑顔で「まあね」と言われた。それにシュウは一つため息をつくと、魔力量についても聞こうとしたが、昨日のあの口ぶりだと多分魔力量のことも忘れてたんだろうなと言う考えにシュウはいたった。しかし、念のため確認する。

「一応聞きますが、魔力量が人よりだいぶ多いことも忘れてたんですか?」

 ハクはシュウの質問にいい笑顔で「うん!」と返した。それにシュウはふかーくため息をつく。ハクはそんなシュウの様子に言い訳を始めた。

「だって、普段魔力量の話なんてしないし、当たり前に使ってたから言っておかなきゃとか無かったし、そもそも戦闘の時魔法あんまり使わないし!!!」

 半分ヤケクソである。

 そんなハクに呆れて「なら、なんで魔力量増やしたんですか?」とシュウは尋ねたが、「楽しかったから?」と何故か疑問系で返していたハクにもう何度目かわからないため息をシュウはついた。もうだんだん諦めが入ってきているが質問は続く。

 

「それで、一体どのぐらいの魔力あるんですか?」

「さぁ?測定したこと無いから知らないけど、少なくとも魔力切れになったことはないね。」

 ハクの言葉にシュウは思いだすかのように「ふむ」と手を顎に添える。

「あの時の魔力量だと普段は10分の1って所ですかね?

 …でも、そのあとも魔力切れみたいな症状どころかまだ余力がありそうでしたよね?」

 どうやら聖女帰還の義をした時のハクの魔力量を思い出していたようだ。シュウの問いにハクは胸を張って答える。

「まあね。あんなに一気に使うことないから久々に魔力使ったーって感じだったね。」

 シュウは思案顔からまた呆れ顔になってハクを見る。

「なら何故普段俺に戦わせて殆ど魔法を使わないんですか?

 補助魔法はダメでも攻撃魔法は使えますでしょう?」

「僕の魔力は研究のためにあるんだよ。君は一つの陣を作るのに何回魔力を陣に流すと思っているんだい?」

 ハクの言い訳にシュウは納得してしまった。魔法陣を作る者は魔力が沢山必要だ。それも魔力ぎれを起こすほどに。最初は魔石でどうにかしていたと思っていたが、ハクは自分の魔力だけで補ていたのだ。

 

「研究の度に使うのに良く忘れましたね。」

 シュウの呆れたものいいに「違う違う」と言うふうにハクは首を振り言った。

「毎日使うからこそ忘れるんだよ。たまになら忘れないだろう??

 僕にとってそれが当たり前だった、ただそれだけのことだよ。」

「簡単だろう?」と言うふうに真面目に言っているがハクが他人とは少しズレている感情を持っていることはいつものことなので、そのことにシュウは何も言わなかった。変わりに拗ねたようにボソッと誰にも伝える気がない独り言を漏らす。

「俺をBuddyに選んだ理由ってまさか戦闘で魔力を使いたく無かったからか…」

 もちろん、その呟きはすぐ隣にいるハクには聞こえている。そんなシュウを見ていたハクは「ふっ」と笑った。シュウはそれを不思議そうに見ると、おかしそうにしたままのハクは言い訳をする。

 

「いや…あれだけこの世の終わりみたいな顔してたのにすっかり、いつも通りだなぁと思ってね」

 ハクの言い訳にシュウは呆れた表情に戻る。

「あんたのせいでしょう?」

 シュウの責めるような言葉にハクは「おや」と言って自信満々に言い放つ。

「世界一の天才の僕が悩みを聞いてあげたんだよ?当たり前の結果じゃないか。」

「悩んでいた理由もあんたでしたけどね。」

 シュウはすかさず突っ込む。すっかりいつもの2人である。

「ふふ、実に光栄だね。」

 そう言ってハクは笑っていた。シュウもそんなハクを見て諦めたようにでも楽しそうに笑った。そうやって笑い合う2人がいる限りこの世界は安泰だろう。

 

 なんせ2人は世界一のBuddyなのだから。

最後までお読みいただきありがとうございます。

ノリと勢いで書いた作品ですので読みづらい部分もあったかと思います。

また、一応最後まで書き切ってみましたが、自分は最後まで登場人物たちの容姿のイメージが湧きませんでした。お読みくださった皆様はどんな姿をイメージされたか、ぜひ教えてください。

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