初めての
成瀬が攻めで、高坂が受けです
転校先の学校で、明るく挨拶。
「はじめまして、高坂陽希です!」
席を指定され、隣の席の男子生徒に挨拶したら、
「話しかけなくていいから」
と睨まれた。
何だコイツ。思わず「は?」と言ってしまった。せっかく転校先では明るくいようと思ったのに、コイツのせいで初日から崩れた。
ある程度仲良しグループが出来たであろう6月。高二で転校してきた俺は、授業について行けないことに、頭を悩ませていた。こっちの学校では、前の学校より授業が進んでいて、このままじゃ追いつけない。そのせいで休み時間も誰とも話せないまま、ノートの空白だけが気になって仕方なかった。
授業が終わり、しぶしぶ隣の机を叩く。
「なあ、頼みがある」
隣の席の奴は無愛想な顔を上げて、じっとこっちを見た。俺は続けて、
「実は前の学校よりこっちのほうが授業進んでてさ、ノート貸してくれないか?」
すると彼は小さく溜め息をついて、鞄からノートを取り出して渡してきた。
表紙には『成瀬颯太』と名前があった。
「助かる。えっと……成瀬」
成瀬は何も言わずに視線を外した。
ノートの中はきれいな字で埋まっていて、要点まできちんとまとめてある。マジでなんだコイツ、妙にちゃんとしてる。
放課後、ノートを返すときに黙って渡すのはさすがに良くないかなと思い、声をかけた。成瀬にノートを差し出し、
「マジで助かった」
成瀬はノートを受け取って、鞄にしまうとちらりとこっちを見ずに、
「なんで俺に頼んだ」
「他に知り合いいないし、隣だし」
つい素っ気なく答えてしまった。明るくやろうとしてるくせに、結局これだ。わかっているのに。こんなんだから、前の学校で孤立したんだ。
「前は失敗したから、ここじゃちゃんとしようと思っただけ」
余計なこと言ったなって気づいた時にはもう遅い。
成瀬は何も言わずに俺を見て、ほんの一瞬だけ目が柔らかくなった気がした。成瀬が鞄を肩にかけ、
「帰るか」
一緒に教室を出て昇降口へ向かうと、外は土砂降りだった。天気予報では晴れだったのに。傘を持ってない俺は立ち尽くすしかない。
成瀬は傘を開いて、ちらっとこっちを見た。
「通学、電車?」
「そうだけど……?」
何でそんなこと聞くんだと思った瞬間、成瀬が無言で俺の腕を引いて、強引に傘の中に押し込んできた。
「ちょっ、おい!」
成瀬は何も言わず、傘を少しだけ俺側に傾けたまま歩き出す。こっちは濡れないのに、成瀬の肩が少しだけ濡れてるのが視界に入って、何だか胸がざわつく。
だからって何か言えるわけもない。
前の学校じゃ、誰かと相合傘なんて考えられなかった。ずっと一人で、傘を忘れても、誰かが貸してくれるわけもなく、いつも濡れて帰ってた。でも今日だけは違う。こんな俺でも、一人じゃないのかもしれない。
駅前に着くと、成瀬は俺を小さく押して、屋根の中まで入れてくれた。成瀬は、
「じゃあな」
「成瀬、あ、あり……」
声が届く前に、成瀬は傘の中に顔を隠して、雨の向こうに消えていった。
改札前で立ち尽くして、遠ざかる背中を見送った。
『こんな俺でも、一人じゃないのかもしれない』そう思ったのに、「ありがとう」すら言えないなんて。
ああもう、なんで素直になれないんだろ。
元々青春ものの課題で書いたやつでしたが、どうしてもBLにしたかったので改造しました。
これからもよろしくお願いします。




