安心できる場所
害獣討伐を終えた次の日
外は夏手前で青々とした草木と、澄んだ空が広がっている。
見てるだけで気持ちが良く、外へ駆け出したくなるような気分になる。
「今日は特に用事は無いから、お出かけでもしようかな」
そうしてシセンはギルドへと向かっていった
「アリスちゃん、いる?」
「あ、シセンちゃん、今日も依頼を受けに来たの?」
「いや、今日はお出かけでもしようかなって」
「じゃあ私も、今日はお休みしようかな」
このオード村は人口約50人に対して、魔女はシセンたった一人。そのため依頼の件数が少なく、依頼を受けるのもシセンぐらいしかいないため一緒にお休みを取る事が多いのだ。
「そうだ、お出かけならこの前貰ったパンがあるから、サンドイッチ作ってピクニックしない?」
「うん、いいねそうしよう」
アリスは明るく、村のみんなから親しまれている。
時々そんな彼女と自分自身を比べてしまい、悲しく思うことが多々起きてしまう。
ー(私も多くの人たちから親しまれる存在になれたらな)ー
「シセンちゃん、どうしたの?」
「ごめんごめん、少しぼーっとしてただけ」
「なら、いいんだけど...」
その後会話を楽しみつつサンドイッチを作り終えた二人
「10時前か...」
「この時間からなら、あの場所に着くころにはちょうどお昼時だね」
「そうだな、さっそく向かおうか」
そうして村を後にし、雑木林の木陰の中を進んでいく。しばらく進むと草原地帯が広がっている。
草原地帯には一本だけポツンと木が葉をなびかせながら佇んでいる。
そこへ向けて二人は歩いて行く
「懐かしいね、この場所」
「初めて、出会った時もこんな感じのいい天気だったよね」
ゴゴゴォ....
「アリス、つかまって!」
「えっ」
ゴロゴロゴロゴロ...
地中から蛇の害獣が飛び出してきたのだ
シセンはアリスを抱きかかえて空へ逃げていた
少し遅れてアリスもその状況に気づく、その間にシセンは中級炎魔法の槍を7発放っていた。
ギィィィィ
「こんなところにも害獣がでてくるなんて、魔法使ったらお腹減ったし早く食べよう」
「う、うん...」
アリスはたまに、シセンが害獣と戦う姿を見ているがいまだに慣れることはできない。
「シセンちゃんって、やっぱり強いよね!」
「ふん、ふふふん(え、そう?)」
「そんなに頬張りながらじゃ聞こえないよ」(なぜか言ってる事は理解できるけど)
「あの時シセンちゃんに会えてなかったら私は、害獣に殺されていたから」
実際シセンはかなり強い、ついさっき一人で秒殺している蛇の害獣も一般的な魔女なら3人がかりで倒すのがセオリーのはずだ。
(やっぱ、シセンちゃんの傍が一番安心できる)
「口に、何かついてる?」
「何でもないよ(ニコニコ)」
「???」
サンドイッチを食べ終わり二人でお昼寝を少ししたのち村へ帰ることにした。
その道中...
「シセンちゃんって、魔女学院には行かないの?」
「考えた事もないや」
魔女学院、16歳から20歳までの4年間、魔法についての勉強、研究を行う機関。
炎の魔女を始めとした多くの有名な魔女も、魔女学院を卒業している。
「ほら16歳になったから行けるようになったじゃん」
「いやでもお金とかの面でさ...」
「それに関しては問題ないよ、だって今まで退治してきた害獣の数すごいことになっているもん!」
自然の魔力を取り込んだ害獣は魔法道具の素材として使われたり、装飾品として高額に取引されたりなど重宝している。
そのためギルド経由で害獣の討伐数を申請し、魔法の発展に貢献していると判断された場合、魔女学院の学費が免除される事がある。
ここだけの話、シセンは学費が免除される平均的な討伐数の倍を超えている。
「ほらそれにさ、シセンちゃんの『火薬』のことも何か分かるかもしれないよ...」
固有能力は本来、魔法由来のものが習得されるはずだ。
シセンの『火薬』はあまりにも、かけ離れた存在。
「もし正体が分かれば、皆がシセンちゃんを認めてくれるきっかけを作れるかも...」
「それでさ...皆に認められるようになったら大きな町で一緒に暮らそう...」
「シセンちゃんには、それだけ魔女としての能力があるんだから!」
「分かった...」
「魔女学院に行ってみるよ」
(実際、今の暮らしを続けても忌み嫌われ続けるだけだ。何か変わるチャンスを作らないといけない。)
「皆に認められる魔女になって、戻ってくるよ」
読んでいただき、ありがとうございます
エピソード1,2は説明的な文章ばかりだったので、今回はその点を改善しながら書いていったつもりですが、やっぱ難しいねホント。
地道に頑張っていくので暖かい目で見てもらえると助かります
次回も近いうちに投稿できると思います。ぜひ読んでいってください