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【ホラー 怪異以外】

魔女殺しの英雄

作者: 小雨川蛙

 

 その日、魔女殺しの英雄フルニエが物言わぬ骸となり発見された。

 彼が処刑した魔女の数は千を越えるとも言われ、生前はもちろん死後に至っても彼をモチーフにした絵画や物語には枚挙にいとまがない。

 それは彼の死の場面にもおいても例外ではない。


 例えばフルニエは自室で発狂した末に死んだと伝えられているが、ある物語では殺し尽くしてきた魔女たちの呪いにより人々を無差別に殺すように心を狂わされたが、彼は最後の力を振り絞り自らの命を絶ったと語っている。

 また、ある絵画ではフルニエの魂は数え切れぬほどの清純な天使に連れられてこの世界を後にしたという有名な逸話を美しく描いている。



 そして、数え切れないほどの物語や絵画が作られた時代から遥か後である現代。

「魔女狩りとは実に恐ろしい人間の歴史の一つだ」

 一人の教授が熱弁する。

「あの時代、多くの人間が無実の罪で『魔女』とされて処刑された。そして、審問官たちは『魔女達』を捕らえて自白するまで熱心に『尋問』をしたそうだ。それこそ『自白』をしなければならないと彼女達が諦めるまで」

 教授は軽く肩を竦めた後に告げた。

「魔女殺しの英雄と名高いフルニエ卿だが、彼が殺した千人の魔女は本当に魔女であったのだろうか?」

 そう語る教授の後ろには魔女殺しの英雄が天使たちに連れられて現世を後にする名画が飾られていた。

「この天使たちの数。私の数え間違いでなければちょうど千であった」

 話を聞いていた者達に細やかなざわめきが起こる。

 それを受けながら教授は満足気に笑う。

「フルニエは本当に千人の魔女を殺したのか。あるいは中には魔女ではない者達も殺してしまったのか。その数は何人だ? 十人? 百人? それとも……」


 魔女殺しの英雄、フルニエ卿が千人の天使に導かれ天国へ向かう名画は現代でも美術館で厳重に保管されており、見るのには中々に骨が折れる。

 しかし、フルニエ卿が生きた時代。

 即ち、凄惨な魔女狩りがあった時代について調べるのであればスマホ一つあればすぐにでも出来る。


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