第6話 素材集め
村一番の槍使いと試合して一週間ぐらい経った。
あれから俺は変わらずに過ごしているが、そろそろ銃開発に向けたほうが良いだろう。
魔法の練習と言う名の山の探索で土地勘を覚えたし、木炭を作るための作業場も完成したからな。
しかし銃を作るためには本体と火薬が必要で、石を物質変換させても圧倒的に量が足りない。
その為に俺は近くの洞窟に向かっており、念のため空間所持を確認する。
えっと入っているのはランタンと少量の木炭、ピッケル、パンと水、あとは下に降りるための縄だな。
ランタンとピッケルと縄は物体投影で作り、パンと水は少しお小遣いで買ったものだ。
さすがに食料を作るのは無理だったからな。
そう思っているうちに洞窟につき、俺はランタンに木炭を一つ入れて詠唱する。
『火のエレメントよ。我が体内の魔力を糧に、火の種を生みだせ!』
「種火!」
詠唱し終えると指先に一センチくらいの火種ができ、そのまま木炭に火種をともす。
すると木炭は明るく燃え始める。
その時に自立補助精霊が俺に話しかける
《マスター、予備のために自動地図作成を開始します》
俺はそれを聞いて考える。
自動地図作成って確か自動で地図を作成する事か? もしも迷子になったらシャレにならない。
その為に自動地図作成はある意味助かる。
サンキュー、俺のために気遣ってくれて。
《いえ、それ程でもありません》
俺の感謝に自立補助精霊はそう答え、俺は大量の鉱石を手に入れるために洞窟内に入る。
洞窟の中はとても暗いが、ランタンの明かりで辺りが視認しやすくなっている。
一応獣の勘を発動して魔獣の襲撃に備えつつ、鉱石を求めて歩いて行く。
多少疲れてしまうが、俺には鉱脈とやら見つける方法は知らない。
その為、休憩を挟みつつ進んでいこうと思う。
しばらく歩いているが、獣の勘を使っても一向に鉱石を見つけられずにいる。
う~ん、今は解除しているけど、まさかこれほど見つからずにいるとは……。
この洞窟に入ったのが朝ぐらいで、入ってから数時間ぐらいだから多分お昼ぐらい経っているぞ。
もう少し探索するか? だけど帰るのを考えて、そろそろこのぐらいで切り上げるべきか?
この後について考えていると水面に何かが落ちた音が聞こえ、即座に音がした方に振り向く。
振り向いた先は洞窟の奥で、俺は直感で獣の勘を発動して耳を澄ます。
少ししてもう一度さっきの音を捕らえ、俺は確信するとランタンを掴んで走る。
少しぐらい走ると先は崖で少し離れた場所で止まり、少しずつ近づきながら確認する。
それは暗闇でそこは見えないが、勘でこのまま進んだらとんでもない事になりそうな事だけ分かった。
「……暗闇とは言え、どれだけ深いんだ?」
俺はそう呟きながら空間所持から縄を取り出し、それを近くにある鍾乳石に縛って崖に落とす。
縄は勢いよく崖に落ちて行き、数分経って止まる。
俺は腰にランタンを取り付け、縄を掴んでゆっくりと降りていく。
命綱なしで降りるから慎重にいく。
少しずつ降りて行くと、ようやく地面が見えて少しぐらいの距離で縄を手放して降りる。
脚に衝撃が来るが、少し耐えて周りを見る。
少し外の光も漏れており、湖の水面がととてもきらめいている。
足元は多少ジャリになっており、とても心が洗われそうだ。
この景色に心奪われてしまいそうだが、今は鉱石を探しているから景色を堪能するのはあとにしよう。
そう思いながら腰に付けているランタンを外し、木炭をランタンに入れてから歩く。
最奥部としてはココらしく、湖の深さは大人の胸ぐらいで、子どもだと溺れそうだ。
俺はそう思いながら歩いて行くと、背後に何かが襲って来ることを感じ、即座に回避する。
回避すると先ほどいた場所に水流のドリルが放たれた。
俺は水流のドリルがした方に向く、そこには水色の巻貝のような魔獣・ドリルシェルがいた。
さっきの水流のドリルはこいつから放ったものなんだな。
俺はランタンを腰につけ、ピッケルをドリルシェルに向けて構える。
ドリルシェルは再び水流のドリルを俺に向けて放つ。
俺はそれを回避しつつ詠唱する。
『地のエレメントよ。我が体内の魔力を糧に、石の矢を放て!』
「石矢!」
詠唱し終えると手のひらから、石の矢をドリルシェルに向けて放つ。
石の矢がドリルシェルの貝殻を砕き、少しだけ内部が見える。
内部は触手らしきものが蠢き、そこから水色の霧が吹き出されていく。
ドリルシェルは水色の霧を俺に向けて吹き出す。
避けようにも瞬時に水色の霧に包まれてしまい、俺は腕で口を塞ぐが強烈な吐き気を感じて膝をつく。
強烈な吐き気と共に視界が歪み、さらには黒い影が俺を囲んで叫ぶ。
『お前のせいで路頭をさまよう羽目になった!』
『返してよ、私の子どもを返してよ!』
『ふざけんなよ、この人殺し!』
俺はそれを聞いて思い出す。
この黒い影は俺が転生するまで殺してきた人間やその関係者だろう。
まだ裏社会に入ったばかりはとにかく信頼を得るため、善悪関係なく依頼された標的を殺し続けた。
例え子供でもあってもだ。
俺はそれを思い出して思わず吐き出してしまう。
「オェェェ!」
俺は胃の中にある物を吐き出し、罪悪感と嫌悪感を重く感じて苦しむ。
だが黒い影は俺に罵詈雑言を吐き続け、脳裏に恨みが泥のように粘り強く。
ドリルシェルには幻覚を見せる毒を放つのは知っていたが、これじゃ心が耐え切れない。
《耐性の概念を獲得。即座に毒物耐性Ⅰを獲得しますか?》
そう思った同時に自立補助精霊が気になる言葉を言う。
俺はそれを聞いて獲得する事を心の中で承諾し、自立補助精霊はそれを聞いて行動する。
《承知しました。概念・毒物耐性Ⅰを獲得、さらに新たな概念・幻術耐性Ⅰを獲得しました》
自立補助精霊はそう言うと吐き気が収まり、黒い影が消えた。
幻覚や吐き気が収まったが、ドリルシェルが水流のドリルを三本ほど生みだして、俺に向けて放つ。
俺は肉体全強化を発動して水流のドリルを回避、その最中で詠唱する。
『地のエレメントよ。我が体内の魔力を糧に、石の剣を生みだせ!』
「石剣!」
詠唱し終えると手のひらから直剣ほどの石の剣が生み出され、俺は力を込めてドリルシェルに振り下ろす。
ドリルシェルの貝殻は容易く砕け、そのまま肉体ごと半分に切断する。
「グギャッ!?」
ドリルシェルは断末魔を上げて小刻みに震え、そのまま動かなくなった。
俺はドリルシェルを倒した安心でドッと疲れが来るが、ゲロがある所に座らず洞窟の壁の方によって休む。
もし概念を獲得しなかったらどうなっていたか……。
そう思っていると何か背中に違和感があり、振り向いて確認する。
一見すればただの壁だが、もしかして……。
俺は疑問を感じつつ、獣の勘を発動させる。
すると壁の奥に鉱脈がある事を感じ、一か八かでピッケルを叩きこむ。
ピッケルが壁に突き刺さると壁が容易く砕け、輝く鉱石を大量に見つけた。
おぉ、ついに見つけたぞ!
俺は鉱脈を見つかって喜んでいると、自立補助精霊が新たな事を言う。
《鉱脈を探し当てた事で新たな概念・採掘師Ⅰを獲得しました》
俺は自立補助精霊の言葉を聞いて首を傾げる。
採掘師? それって鉱石を掘る職業だろ? それっていったいどういう能力だろうか?
そう思いながらもう一度ピッケルを振り下ろす。
すると薪を割る感じで採掘し、鉱石が五個ほど手に入れた。
鉄鉱石が三つ、硫黄と硝石が一つだ。
採掘師は鉱石を掘るスピードを上げ、大量に手に入れる能力だな。
そう思いながら一時間ほど鉱脈を掘り進め、ざっと千ぐらいの鉱石を集められた。
採掘師は作業に特化しているし、足りなかったらまた採掘しに行くか。
ちなみに鉄鉱石が半分占めており、三割が硫黄、二割が硝石だ。
こうして大量の鉱石を手に入れて洞窟を出た。
しかし外は夕暮れで俺は持っている鉱石を小屋の倉庫に納め、肉体全強化を使って日が暮れる前に帰れた。
その代り両親から少し叱られた事はココだけの話だ。
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