第4話 チートの性能と制約
よし、最初は肉体全強化を試してみるか。
えっと、自立補助精霊が言うにはステータスを開いてオンにすれば良いよな?
俺は自立補助精霊にいわれた通りにチート能力を起動する。
すると体の奥底から力が溢れ出してとても温かく感じる。
これがチート能力を使用した時の反応か? とにかく走ったりして見るか。
俺はそう思いながら軽く走ろうとした。
その時になぜかさっきいた場所から数メートルくらい離れていたのだった。
「噓だろ!?」
俺はあまりの速さに驚いてしまう。
少しぐらい走ろうと思っていたのに、いつも間にか数メートルくらい走っていたからな。
しかしいきなり地面に倒れてしまう。
「グェ……! な、何でぇ?」
俺はいきなり倒れた事に分からず、どうして倒れたか考えていると自立補助精霊が答える。
《どうやら肉体全強化の反動で疲労が一気に降りかかりました》
「そ、そうなのか?」
俺は自立補助精霊が言う反動に首を傾げながら呟く。
とは言え、幼い体で数メートルくらい走ったんだからそれほどの疲労が来たからな。
倒れてしまったとは言え、少しぐらい休めば体力は回復して立ち上がる。
う~ん、もしかして自立補助精霊以外制約とかそんな感じがあるのか?
それらは全部試してから決めるか。
俺はそう思いながら次は物体投影を選択する。
すると手のひらからリサイクルマークのような魔法陣が浮かび上がる。
魔法陣が浮かび上がったことを確認し、近くにある木に触れてみるが反応しない。
「あれ? 何でだ……アッ!」
俺はその事に首を傾げるが、変換したい物体を思っていない事を思い出す。
ついうっかりやってしまったな。
少し反省しつつも、もう一度木に触れて想像する。
木から角材になるんだ、表面はつるつるとした角材に……。
そう思いながら集中するといきなり木が光り出し、角材が数枚ほど出来上がる。
「よし!」
俺は成功した事に手ごたえを感じて喜ぶ。
その中で一つの考えが思い過ぎる。
あれ? もしかしたら現代兵器とか作れるのでは?
そう思っただけで想像が一気に膨らみ、胸が熱くなっていく。
よし、最初の目標は現代兵器の代表・銃器を開発する事に決める。
だけど今はチート能力の把握や、そのための設備を手に入れなきゃいけないからな。
そう決めながら次は物質変換を選び、砂に触れて火薬を想像してみる。
しかし砂に触れても火薬を想像しても全然反応しない。
どうして火薬にならないか分からずにいると、火薬は鉱石と木炭を使わないとできなかったことを思い出す。
あまり現代兵器に触れていなかったから、大事な事をさらりと忘れてしまったな。
俺は気を取り直して、石に触れて二つの鉱石を想像する。
石から硫黄と硝石になる事を想像する。
すると石が光り出し、硫黄と硝石が中くらいの量が出来上がる。
俺は物質変換の力を理解する。
このチートは変換したい物質を思い浮かべる、それと素材が違う物質では出来ないの二つだ。
てことは物体投影も同じ仕組みか? だったら作業用の小屋が出来るかもしれないな。
俺はさっそく十分な広さを得るために範囲を決め、範囲内にある木に触れて角材に変えていく。
そうして数十分くらいで大量の角材が出来上がり、魔法を試すための広さも追加して広々となった。
だけどその代りに物凄く疲れたが、身体を少し伸ばしてから物体投影を選択し、角材の山に触れて思い浮かべる。
そして角材は回路のようなものが浮かび、きめた範囲内にぴったりした小屋が出来上がる。
俺は先ほど投影した小屋を見て呟く。
「何と言うか、秘密基地って奴か?」
俺は少し呟きながら中に入る。ちなみに扉は引き戸となっており、取っ手を少し上げないと開けないしようとなっているため、防犯の面もばっちりだ。
中は作業部屋とリビング、それと倉庫の三つだけで、火が燃え移らない様に石の壁にしてある。
火薬に火がついて爆発なんてことは嫌だからな。
さて、チート能力を四つほど試したが、最後の獣の勘と言うのは想像しにくい。
獣の勘ってよくわからないが、気になって選んだから使用してみるか。
そう思いながら使用すると誰かの話し声が聞こえだす。
『最近、魔物の出没が高くなってないか?』
『そうだよな、一応ビナー領土の貴族が傭兵を雇って警備しているけど不安だよなぁ』
俺は話し声を聞いて辺りを見渡すが、近くに人がいないどころか、数メートルくらい先が鮮明に見えまくっていた。
これが獣の勘って奴か? それにしても目が疲れてきたな……。
そう感じて即座に解除して休憩し、すべてのチート能力の性能と制約をまとめる。
・肉体全強化Ⅰ……俊敏、腕力、頑丈、体力を最大まで上げる。制約として体力を大幅に使う。
・物質変換Ⅰ……目の前にある物質に触れ、変換したい物質を思い浮かべれば別の物質に変換する。制約として同じ素材しか出来ない。
・獣の勘Ⅰ……五感を最大まで強化し、敵の殺意を敏感に感じる事ができる。制約としてかなり疲れがたまってしまう。
・自立補助精霊Ⅰ……高度の知能を持つ精霊が戦闘などのサポートを行う。制約としては特になし。
・物体投影Ⅰ……目の前にある物質に触れ、投影したい物体を思い浮かべればその物体になる。制約としては物質変換と同じ。
こんな感じだが戦闘系は自立補助精霊に任せればいいし、製作系は自分でやれば問題ない。
本当はココまでにしたいが、何か手土産を持ってこないと……。
何かいいものは無いかと考えると自立補助精霊が答える。
《でしたら獣の勘で魔獣を探知、そして魔法で狩りをするのはどうでしょうか?》
俺は自立補助精霊の提案を聞いて良いと感じる。
確かに魔法の練習をしたら、たまたま動物を狩ったと言えば怪しまれることはない。
さっそく獣の勘を発動して辺りを見渡すと、十メートル先に猪のような魔獣・タックルボアが草を食べていた。
丁度いい所だな。
俺は十メートル先にタックルボアに向けて詠唱する。
『風のエレメントよ。我が体内にある魔力を糧に、風の矢を放て!』
「風矢!」
詠唱し終えると手の先から風の矢が生み出され、タックルボアに向けて放つ。
風の矢はそのままタックルボアに向かって、急所の首を容易く穿つ。
「ブギィィィ!」
するとタックルボアは悲鳴を上げながら、首から血を吹き出して倒れる。
タックルボアの様子を見る限り、あれは一撃で仕留めたな。そう思いながらタックルボアに近づいて確認する。
見た感じ息はしていないが、コレどうやって村に運べばいいんだ?
このまま運べば日が暮れるし、かといって肉体全強化を使用して運んだらものすごく怪しく見えるからな。
何て思っていると自立補助精霊が提案する。
《でしたら、空間所持に保管するのはどうでしょうか?》
俺は自立補助精霊の提案を聞いて首を傾げる。
空間所持? そんなのチートを確認している時に無かったけど?
そう思っていると脳裏にやり方が流れ、それを感じた俺は流れるままに呟く。
「空間所持、収集」
そう呟くとタックルボアの肉体は光の粒子となり、俺の手のひらに吸収される。
へぇ、これが空間所持か……初めてだけど物凄く便利だな! これを使えば戦闘の幅がかなり広がるな。
空間所持の便利性に興味を持ってから色々試したいが、そろそろ夕暮れになるからココまでにしておこう。
俺はそう思いながら村まで下山する。
そして走れば数分で着きそうなところでタックルボアの肉体を出し、近くにいる傭兵を呼んだ。
これなら偶然タックルボアに出会って何とか魔法で倒したって事になるな。
そしてそのタックルボアの肉は村の皆に分け与えられることになった。
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