第38話 謁見と変貌
10天星のアジトには二人の天魔がいており、片方はフードを被って黒い魔導書を持つ男で、もう片方は紅蓮の炎のナックルを装備した筋骨隆々な男がいた。
アースは膝を地面について頭を下げて言う。
「ただいま戻りました。マーズ様に天魔王ソル様」
アースの言葉に紅蓮の炎のナックルを装備した天魔……もといマーズはプルートを見てつぶやく。
「肉体の動きや魔力の流れが硬いと言うことは……まだ生まれたばかりだな」
「ハイ、アース様を助けようとしましたが、体が固まって……」
「ということは天命も不明という訳か……」
マーズはプルートの言葉に呟き、面倒に思いながら頭を掻く。
それを聞いたソルはあごに手を当てて命令する。
「天命が不明となれば……プルートさんはしばらく他の覚醒者の天魔の製作・及びに捜索してください」
「分かりました」
ソルの言葉にプルートはうなずき、アースは何かを思い出して言う。
「それと、筒状の道具を使った人間ですが、どうやらディザスターとナルキッソスを討伐したのも彼かと思います」
「ほぅ、そうですか……」
アースの言葉にソルは興味ありげに呟いて禍々しい魔導書を開く。
禍々しい魔導書から黒い魔力が吹き出し、名無しの天魔がハンマーと金床を差し出す。
すると黒い魔力がハンマーと金床に乗り移り、形が変貌して鍛冶の力を持つ天魔・ウゥルカーヌスになった。
ウゥルカーヌスは辺りを見渡して呟く。
「ココは一体どこだ……?」
「ウゥルカーヌスを与えますので、プルートさん仲良くしてくださいね」
「分かりました」
ソルの言葉にプルートはそう答え、アースが精密指定転移でどこかに転移させる。
その入れ替わりに全身鎖が巻かれた天魔と腹部や肩に口がある天魔が現れた。
全身鎖が巻かれた天魔・バインドは辺りを見渡して首を傾げる。
「アッ? 確か俺ら雑魚狩りしてたはずじゃ……」
「なぁ、あれってソル様じゃね?」
バインドの混乱に腹部や肩に口がある天魔・イーターはソルを指さして言う。
すると上から二つの雷が二人に直撃する。
「「ギャァァァ!?」」
二人は雷を直撃した激痛で叫ぶが、ソルの奥から黄金で出来た小手と大槌を持つ青髪の男が現れた。
青髪の男は雷を直撃した二人を見下しながら言う。
「貴様ら、天魔の王たるソル様に不敬をしおって……」
「マァ、いいじゃないですか。それより君たち二人に頼みたいことがあります」
青髪の男・ジュピターをソルはなだめつつ、懐から一枚の紙を見せる。
そこに書かれているのは黒い鱗がある魔龍であった。
魔龍が書かれた紙を見たイーターは首を傾げて言う。
「えっと、これは一体……?」
「この紙に書かれている魔龍を捜索してください。この魔龍には厄介な物を隠し持っているため、隠しているアイテムを奪取してください」
ソルは紙を見せながら言い、バインドとイーターは壊れた人形のように頷く。
そして二人をアースが精密指定転移を使って指定のポイントに飛ばした。
ソルは二人が転移されたことを見て、懐からソロモン学園の地図を取り出す。
そこには様々な施設が書かれており、ゴエティアの最奥に隠されている法具・真理の王に関する情報を管理する施設が書かれている。
ソルはそれを見ながらあくどい笑みを浮かべて言う。
「彼らは転生者だけだと思っておりますが、人間に化かした者もおりますからね……」
ソルはそう呟きながら、世界滅亡の考えを練り上げる。
▲▽▲▽▲▽
俺はレグルス先生たちに助けられ、今は保健室のベッドで横になっている。
それにしても名有りの中でも10天星と呼ばれる連中があれほど強いなんてな……。
俺はベッドの上で苛立ちながら思い、ズキズキと痛む体を癒していく。
ゲーツはベッドの上で仰向けになりながら質問する。
「なぁ、君は突然現れた天魔についてどう思っているんだ? あの力はどこかの文献に書かれていたんだ」
「何?」
俺はそれを聞いて目を細める。
そう言えばディザスターやナルキッソスは、名前の法則性があるように見えるな。
権能も法則性があるんだろう。
そう思っているとレグルスがやってきて言う。
「体の調子はどうだ? ルイにジークフリート家の息子よ」
レグルスは明るく言いながらやって来て、ゲーツはレグルスを見て叫ぶ。
「貴方は豪傑獅子のレグルス・G・アドルフじゃないですか! なぜここに来たのですか?」
ゲーツは驚きながら質問し、レグルスはアゴヒゲに手を当てながら答える。
「ここに来た理由はとある奴の尋問に付き合ってもらいたくてな」
レグルスはそう言いながら指を鳴らす。
すると奥から厳重に拘束されたニヘルが二人の兵士に運ばれ、口をふさいでいる猿ぐつわを外す。
口が自由になるとニヘルは俺とゲーツを睨みながら叫ぶ。
「あんたらのせいで私は犯罪者になってしまったのよ! どう責任取ってくれるのよ!」
「責任取れって……」
俺はそれを聞いて呆れ、コイツの腐った性根に呆れてしまう。
そう思っているとゲーツは睨み返して叫ぶ。
「ふざけるな! お前は僕の父さんと母さんを操った揚げ句、ジークフリート家の名を侮辱したんだ! お前は人の皮をかぶった獣そのものだ!」
ゲーツは恨みを込めた叫びをあげるが、ニヘルはどうでもよさそうにして無視している。
レグルスは申し訳なさそうにしながら言う。
「うむ、その娘と何かしら因縁があったんだろう。しかし情報を手に入れるため、大人しく統べて言えば五体満足で逃がしてやろうと考えている」
「ナッ……!?」
レグルスの言葉にゲーツは声を失うが、俺はあいつが何か考えがあるだろうと察する。
あいつ、フォンが何か言おうとしたら呪われし死肉霊になったんだ。
あの経験があったから何か考えがあるんだろう。
そう思いながら傍観し、レグルスは紙とペンを差し出して言う。
「それとちゃんと紙に書き残してほしい。天魔と戦うための資料にしておきたいからな」
「紙に書き残せたらいいのね? 簡単じゃない」
レグルスの言葉にニヘルはそう言って、自由になった手で情報を書き始める。
するとニヘルは余裕から苦痛に苦しむ表情になり、紙とペンを落として叫ぶ。
「ギャァァァ!?」
ニヘルが叫ぶと鈍く光る宝石がニヘルの体を拘束具事貫き、貫いてないところは毛がボーボーに生え出す。
ニヘルは自分の異常を見て、恐怖で歪みながら叫ぶ。
「イヤァァァァ!? 誰か、誰でもいいから助け――!」
ニヘルはそう叫んで助けを求めるが、言い終わる前に頭部がリスのようになり、大きいリスをベースに腕や背中に宝石が突き出た怪物になった。
それを見たレグルスは苦々しく言う。
「クッ……口頭がだめだったから書き残せると思ったが、情報を与えることが怪物化のトリガーだったとは」
レグルスはそう呟くが、怪物になったニヘルは保健室の窓を突き破ってどこかに行った。
転生者が情報を言う時は怪物になるが、フォンは呪われし死肉霊で、ニヘルは宝石が突き出た宝石のリスだ。
ニヘルが変貌した姿に名前を付けるなら呪われし宝石栗鼠で良いだろう。
そう思っていると、レグルスが頭を下げて言う。
「色々と騒がせてすまんな。後始末は我々が行うため、今はゆっくりと休んでくれ」
レグルスはそう言って二人の兵士と共に保健室から立ち去る。
その後は見舞いに来たエステルとリザにさっき起きたことを言う。
すると二人は呪われし宝石栗鼠と化したニヘルに驚いた。
マァ、怪物になったって聞いたら驚くか。
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