第3話 チートと魔法の確認
俺が転生してから五年ぐらい経つ。
俺は少しずつ成長し、この世界について学んでいく。
この世界はセフィロトと呼ばれ、俺が生まれた場所はイーラエス王国のビナー領域にあるエロヒム村だ。
俺の父親、オルト・アークはそのエロヒム村を収める貴族だ。
だけど資金力は周りと比べて低く、俗に言う貧乏貴族と呼ばれているが、当の夫婦は「言われたら傷つくけど、村に住む住民を知れるから良い」と言っている。
それに父親と母親は俺を含めた三兄弟に激アマで、転生する前までは父親に痛めつけられたから、とても違和感を持ってしまう。
ちなみに三兄弟で俺は末っ子であり、長男は剣術が特技のルネス・アーク、次男は魔法が特技のルイス・アークだ。
長男のルネス・アークはこの世界の剣術の一つ、ミハイル流とヌァザ流を学んでおり、基本的にはとても優しくて村人の手伝いを積極的に参加している。
次男のルイス・アークはこの世界の魔法の一つ、四元素魔術の中級を得意とするが、基本的にはとても怠け者で村人の手伝いを嫌がっている。
そして俺もといルイ・アークは今、自室で魔法について勉強中だ。
俺も村人の手伝いをしたいが、今は子どもだから力仕事などは危ないからと両親にいわれたからだ。
文字については英語に近くて覚えやすく、四元素魔術の下級本は素人でも分かりやすく書かれている。
ちなみに魔法の種類は四元素魔術を含めて四つほどある。
・四元素魔術……火、水、土、風の四つの属性を持つ魔法。四つの内一つだけ扱えるものが多く、良くても中級の二つの属性を扱え、伝説では上級の四つを扱えている。
・二対魔術……光と闇の対の属性を持つ魔法。光を使う場合だと神聖使い(ホーリー・マジシャン)、闇を使う場合だと邪悪使い(エビル・キャスター)と呼ばれる。
・無属性魔術……前の二つとは違い、体内の魔力を使って肉体強化や傷口の治癒に特化して誰でも扱える。
・古代魔術……数百年前にあったとされる魔法。今では使用方法が分からず、伝説の龍やエルフの長だけが知っている。
魔法を使うには体内にある魔力に力を込め、言葉を発して詠唱すれば簡単に発動できると書いている。
試しに放とうとすれば自室は滅茶苦茶となってしまう恐れがあり、両親を困らせてしまうだろう。
俺は自室の窓を開けて外を確認する。
「雨になる恐れは……ないな」
俺はそう呟きながら自室から出る。
するとルネスとばったり出会い、ルネス兄さんは首を傾げながら聞く。
「どうしたんだ? いつも自室で勉強しているのに?」
「ルネス兄さん、実はちょっと魔法の練習をしたくて外に出るんだ」
俺はルネス兄さんの質問を答える。
するとルネス兄さんは少しだけホッとしながら言う。
「そうか、だけど余り森深くに行ったら父さんと母さんが心配するからな?」
「分かっているよ。それじゃあ、行ってきます!」
ルネス兄さんの約束に俺は頷きながら家から出る。
先ほど言ったと思うが、俺の父親は貧乏貴族なため、家は屋敷だが、少しだけこぢんまりとなっている。
村の森に向かう中で村人の青年は俺に声をかける。
「あ、アーク村長の末っ子君、森に向かうなら気を付けろよー。森深くに異変が起きているからなー」
「うん、分かったよ!」
俺は青年の言葉を頷きながら村の森に向かって走る。
にしても気を付けろか。さっき言われた異変も気になるが、今は魔法とチート能力の検証だな。
魔法は鍛えれば使えるとして、チート能力については本当に作動できるか分からないからな。
そう考えているうちに村から少し離れたもりの中に入り、地面は平坦としたところを探す。
練習場所は平坦とした地面の方がバランスを取り易くていいからな。
そう思いながら歩いていると、見渡す限り林だが、地面の方は平坦としていた。
俺は辺りを見渡して決める。
「よし、ココにするか」
俺はそう言いながら少し大き目で平たい石の上に座る。
さて、一応人らしき者はいないよな……?
俺は少しだけ周りをキョロキョロと見て、一呼吸挟んでから叫ぶ。
「ステータス、オープン!」
我ながらとても恥ずかしいが、転生する前はこうすればステータスを開けると学生が話していたからな。
それにリーンからステータスを開ける方法を聞き忘れたからな。
そう思っていると、目の前に長方形のウィンドウが開いてくる。
俺はそれを見て心の中でガッツポーズを取って喜びを噛み締める。
よし、成功だ! ものは試しだったがまさか本当に開けるとはな……。
そう思いながらウィンドウに触れて調べる。
えっと、名前や生年月日、それに容姿もすべて当てはまっているな。
そして次はチート能力の確認、及びに性能チェックだ。
俺が選んだチートは五つだ。
・肉体全強化Ⅰ……俊敏、腕力、頑丈、体力を最大まで上げる。
・物質変換Ⅰ……目の前にある物質に触れ、変換したい物質を思い浮かべれば別の物質に変換する。
・獣の勘Ⅰ……五感を最大まで強化し、敵の殺意を敏感に感じる事ができる。
・自立補助精霊Ⅰ……高度の知能を持つ精霊が戦闘などのサポートを行う。
・物体投影Ⅰ……目の前にある物質に触れ、投影したい物体を思い浮かべればその物体になる。
一応チート名の後ろにある数字はチート能力のレベルを示しており、強化すれば性能が上がるらしい。
マァ、性能を上げようにもする方法が分からないから、これはいったん保留だな。
そう思いながらウィンドウを閉じ、懐から四元素魔術の下級本を取り出して見る。
一つの属性にて十個の魔法が書かれており、俺はその一つ、火玉を試し撃ちする。
一応ルイス・アークが練習しているのを見ていたから、見まねでチャレンジだ。
俺は少し離れている岩に手を向けて集中する。
体内にある魔力を感じろ……。ルイス・アークはいつも詠唱する前に集中していたからな。
そうしていると体内に何かが熱くなるのを感じて詠唱する。
『火のエレメントよ。我が体内の魔力を糧に、火の玉を生みだせ!』
「火球!」
詠唱し終えると手のひらから野球ボールくらいの火球が生み出され、それを少し離れている岩に向けて撃つ。
火球は真っ直ぐ放たれ、そのまま岩に激突して火の粉を撒き散らす。
俺はココで火事は不味いと思い、火の粉で燃え始めた草木に向けて詠唱する。
『水のエレメントよ。我が体内の魔力を糧に、水の玉を生みだせ!』
「水球!」
詠唱し終えると先ほどと同じように水球が生み出され、それを燃え始めた草木に向けて放つ。
水球は燃え始めた草木にぶつかると水が発散して消化する。
ふぅ、ココで火事になったらとんでもない事になったな。
俺は少しだけ安心する。
するといきなり脳内に誰かが話しかけてくる。
《自立補助精霊Ⅰを起動……。このまま魔法の練習を行いますか、マスター?》
俺はいきなり誰かに話しかけられて、訳が分からずに心中で叫ぶ。
ちょっと待て、いきなりだけどあんた誰!? 少し自立補助精霊って聞こえたけど、まさかマジでAIになっているのか?
《AI……マスターが言うそれは私と同じでしょうか?》
その時に自立補助精霊は心中お察しした上で聞いてくる。
う~ん、確かに自立補助精霊とAIって地味に似ているからな。
《分かりました。マスター》
そう思っていると自立補助精霊は俺の言葉に理解する。
だけど自立補助精霊が効いてきたことに思い出して考える。
魔法はちゃんと安全を確保してからでいいし、今はチート能力とやらを試してみるか。
《分かりました。マスター》
自立補助精霊はそれを聞いて頷く。
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