第21話 懺悔と真相
エステルはそう呟きながら混乱し、リザは天魔だと知れば、即座にロングボウを納め、エステルの手を掴んで叫ぶ。
「逃げよう! 私とエステルじゃ勝てない!」
「ウッ、ウン!」
リザの叫びに、エステルは正気に戻り、急いで水仙の天魔から離れようと走り出す。
しかし水仙の天魔・ナルキッソスは右手の平からガラスの蔦を生み出し、それをエステルとリザの両足を拘束する。
二人は両足を拘束されると、派手に転んでしまう。
「キャァ!」
「ウワッ!? いつの間に!」
エステルは転んだ拍子に驚き、リザはいつの間にか拘束されたことに気づく。
ナルキッソスはそんな二人を見下しながら近づき、二人が苦しんでいることに、嘲りながら言う。
「やはり、美しい僕のような天魔を倒そうとする下等生物共が地面に這いずる様子はとても笑い種だよ」
「ウゥ……あんたの目的は何!? そもそもどうやって学園に侵入できたの!」
リザはナルキッソスの言葉を無視しつつ、どう侵入したか質問する。
しかしリザの質問に返ってきたのは、呆れと侮辱であった。
「ハァ、これだから下等生物共は頭が足りないうえに吠え続ける」
「ハァ?」
ナルキッソスの言葉に、リザは訳が分からず硬直する。
そりゃそうだ。質問に返答せず、揚げ句にこんなことを言われたら、誰だって訳が分からないだろう。
それを聞いたリザは背中にかけている矢筒から矢を一本取り出し、それをナルキッソスの太ももに深く刺す。
矢は太ももに深く刺さるが、ナルキッソスは顔を少しゆがめて叫ぶ。
「痛っ!? いきなり僕の美しい脚に何するんだ、この茶髪ブス!」
ナルキッソスはそう叫びながら、リザの頭を踏みつぶそうとする。
その時、エステルは混合杖をナルキッソスに向けて叫ぶ。
「そうはさせない! 魔力爆破!」
エステルはそう叫ぶと、杖の先から魔力の爆破が放たれ、ナルキッソスはその爆発をもろに受けた。
ナルキッソスは爆発を受け、顔を抑えながら叫ぶ。
「ギャァァァ!? 僕の、僕の美しい顔がァァァァァ!?」
ナルキッソスはそう叫びながら地面を転がり、二人の両足を拘束していた蔓が緩んだ。
それを見たリザは蔓をエステルの分まで外し、彼女の手を掴んで言う。
「今度こそ逃げよう!」
「うん!」
リザの言葉にエステルはうなずき、今度こそ逃げようとする。
しかしそうはさせまいと、苛立つナルキッソスは自身の指を茨にし、それを逃走する二人に目掛けて振り下ろす。
それに気づいたエステルはリザを庇い、茨の鞭を背中でもろに受ける。
「ウゥ!」
「エステル! しっかりして、塗り薬で治療するから!」
背中を裂かれたエステルをリザは心配しつつ、傷を塞ごうと懐から塗り薬を取り出し、中身を背中の傷口に塗り始める。
それを見たナルキッソスは嘲笑いながら叫ぶ。
「アハハ! やはり下等生物共の考えはバカだねぇ! だけど君たちは美しい僕の一部としてあげるよ」
ナルキッソスはそう言うと茨を一つにまとめ、そのまま自身の養分にしようとした。
その時、青年の叫び声と共に、ナルキッソスの顔面をライダーキックで蹴りぬく。
「やめんかー!」
「ぐべぇぇぇぇぇ!?」
青年・ルイの蹴りをもろに受けたナルキッソスは情けない叫び声をあげながら、地面を転がされていく。
エステルはそれを見て、困惑してつぶやく。
「え、何で君が……」
△▼△▼△▼
俺は気持ち悪い天魔を蹴り飛ばし、肩や服の裾についている土埃を払う。
ふぅ、最初は拘束されて急いで解除しようとしたけど、サジェッサの助言で魔力を少し送ったら、豆腐のように容易く崩れたな。
そのままエステルにどうして俺を拘束しようとしたか、理由を聞こうと獣の勘を発動して探していたら、今に至るって感じだ。
俺は土埃を払い終えれば、エステルの背中に手をかざして詠唱する。
『力のエレメントよ。我が体内の魔力を糧に、傷を癒す光を放て!』
「回復光!」
詠唱し終えると、癒しの光が背中の傷をふさぎ、少し痕を残さなかった。
エステルは困惑しながら言う。
「なんで私達を助けたの? それに私は君を失格しようとしたのに……」
エステルは申し訳なさそうに言うが、リザは一体どういうことなのか分からずにいる。
う~ん、魔力を送ったら行けたって言えばいいのだろうか?
どう言えばいいか悩んでいると、変態天魔が起き上がって叫ぶ。
「テメェ、よくもこの美薔薇のナルキッソス様の顔を蹴り抜いてくれたな!」
「ナルキッソスだがナルトスープなんだが知ったこっちゃねぇし、さっきの発言はキモすぎるに等しいんだよ」
俺はそう言うとナルキッソスは怒りが頂点になり、背中から大量の茨を生やして叫ぶ。
「ふざけるのもいい加減にしろよ、クソガキ! お前みたいな奴は速攻――」
ナルキッソスは喚き続けるつもりだが、俺はトンプソンコンテンダーを奴の眉間に向け、容赦なく引き投げを引く。
爆薬を埋め込んだ.308ウィンチェスター弾は、見事に喚き続ける奴の額にあたり、奴の頭をボンッと吹き飛ばす。
そしてそのまま体は倒れ、地面に倒れた衝撃でちり芥になった。
ふむ、やっぱりディザスターと比べたら、ナルキッソスはかなり弱いな。
もしかして天魔にも強さの個体差があるのだろうか?
そう考え得つつ、さっきの質問に答える。
「お前らを助けたのは善意と、どうして俺を失格にしようとした理由だ」
俺の質問にエルメスは一瞬戸惑うが、リザが彼女の手を握って諭す。
「お願い、どうしてエステルがそんなことをしたか、僕はそれが知りたいの」
リザはそう言うと、エステルは涙を流しながらぽつぽつと理由を話す。
どうして俺を失格にさせようとした理由は、ある教師から「俺を失格させないとリザを失格にさせる」と囁かれたからだ。
本人は悪いことだと知っているが、リザのためにと思い込んでやったらしい。
今では涙を流しながら謝り続けるが、俺はその姿を見てもういいと止めさせた。
このまま唆させた教師をぶっ飛ばせば解決だが、サジェッサは申し訳なさそうに進言する。
《マスター、このままだと我々が失格になってしまいます》
俺はそれを聞いて感謝しつつ、この状況について眉をひそめる。
この迷路のゴールを目指さないといけないけど、このままちんたらゴールを目指したら、失格になる。
う~ん、これはあまりやりたくなかったけどなぁ……。
俺はそう思いながら、空間所持から例のあれを取り出す。
今回は特殊事例だから、学園側も少しは許してくれるだろう。
そう思いながら取り出すと、エステルとリザは取り出した物を見て声を失う。
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