第20話 入学試験後編
フォン先生の言葉に受験生たちは驚くが、俺はその言葉に訳が分からずに首をかしげる。
えっと、脱出試験? なんか聞いただけで簡単そうだけど、置かれている扉とどう関係しているんだ?
そう思っていると、フォン先生は扉に指さして説明する。
「脱出試験の合格条件、それはそこの扉の中にある迷路のダンジョンを攻略するだけだ。しかし迷路内には魔物がうごめいているため、制限時間は三時間までとする」
フォン先生の説明に受験生たちは扉を見て息をのむが、俺は少しだけ頷く。
あぁ、あれか。
俺は何度かエロヒム村の近くにあった墳墓のダンジョンで、銃のテストと攻略をしていたから、それくらい簡単だ。
俺はそう思いながら少しだけ体をほぐし、他の受験生たちも武器や杖を持って扉に入る。
よし、ほぐすのはこれぐらいにして、俺も扉に入るか。
そう思いながら、空間所持から風魔刀とトンプソンコンテンダーを取り出し、トンプソンコンテンダーを腰に下げてから扉に入る。
すると目の前から閃光が放たれ、俺は瞬時に目を閉じる。
しばらくして、閃光が止んだと思い、ゆっくりと目を開ける。
目に映ったのはバラと茨でできた壁の通路にいた。
おぉ、墳墓でずっと攻略していたからだけど、なんか某宮殿のバラみたいな感じだな。
そう思っていると、茨に絡まった鎧の魔物・寄生茨鎧がハルバードを地面にこすりながらやってきた。
「キュピ……キェェェェェ!」
寄生茨鎧は俺を見ると、呻き声を上げながら襲い掛かる。
それはまるで獣のうなり声がしわがれたような叫び声で、とても耳障りだ。
俺は酷い叫び声に眉をひそめ、腰に下げてあるトンプソンコンテンダーを抜いて、寄生茨鎧の右肩に向けて引き金を引く。
銃口から.308ウィンチェスター弾が放たれ、寄生茨鎧の右肩にぶつかると赤い炎と轟音が爆ぜる。
そして炎は一気に鎧に寄生する茨に燃え移り、寄生茨鎧はそれを見て叫ぶ。
「キェェェェェ!」
「ヨッシ! 問題なく燃えたな!」
寄生茨鎧が燃えているのを見て、俺は拳をグッと握りながら喜ぶ。
さっきの爆発は、弾頭の内部に油をしみこませた爆薬を詰め込んだものだが、脅し文句として使わずにいた。
しかしうっかり装填したままだったけど、まさか植物や寄生系の魔物に効果的なんて、まさに棚から牡丹餅のようだ!
偶然の発見に喜んでいると、寄生茨鎧は最後の抵抗として、持っているハルバードを俺の腹部に向けて刺してくる。
しかしハルバードの矛先は俺の腹部を傷つけず、それどころか押しつぶされてしまった。
念のため、扉に入るときから肉体全強化を発動しているから、こんな攻撃は痛くも痒くもないな。
そう思っていると、寄生茨鎧が力尽きて倒れ、鎧に寄生した茨は灰に変わる。
ふむ、どうやらコイツの肉体が限界を迎えたのだろう。
そう思いながら迷路から脱出しようとするが、後ろから何かがやってきて振り向く。
しかし俺は背後から来た刺客を見て体が固まる。
なんせ後ろからやってきたのは、立てれば大人の腰ほど大きいクワガタがやってきたからだ。
その魔物は巨大鍬形虫と呼ばれているが、初めて見たから驚きまくっている。
いや、すごくデッカ! アレほぼ虫のような何かだろ!?
そう思いながら固まっていると、巨大鍬形虫は巨大な鍬を動かしながら襲い掛かる。
しまった! 現実離れすぎる程大きかったから、立ち止まってしまった!
俺は慌てて襲い掛かる巨大鍬形虫を撃退しようと、トンプソンコンテンダーを向ける。
しかし何かの声が詠唱する。
『風のエレメントよ。我が体内の魔力を糧に、切り裂く風の刃を放て!』
「風斬!」
詠唱し終えると、風の刃が巨大鍬形虫の甲殻を切り裂き、細切れになっていく。
俺は風の刃が来た方向を向ける。
するとそこにいたのは、様々な色が混ざった水晶が付いた杖を持ったエステルだった。
俺はトンプソンコンテンダーを腰に下ろしてお礼を言う。
「魔法のサポートは助かった! すごくでかいから、つい――」
「ゴメンけど、少し拘束するよ!」
しかしエステルは頭を下げながら言うと、石や鎧の残骸が拘束具となり、俺の体に巻き付いて拘束する。
俺はそれに気づいて驚く。
ハァ!? いきなり拘束って、どういうことだよ!
俺は突然拘束されたことに驚きつつ、エステルに説明を求めようとする。
しかし当の本人はこの場から去っており、俺は冷や汗を流して呟く。
「もしかして、これってヤバくね?」
俺はそう呟きながら、急いで拘束を解こうと奮闘する。
▲▽▲▽▲▽
エステルは今ルイを拘束して即座に逃げており、待たせている友人の下に向かっている。
だが、当の本人は申し訳なさそうしながら走り、心中迷いが渦巻いている。
(本当に正しかったの? いくら友人ためだからって良いの?)
彼女はそう思いながら、リザの下にたどり着いた。
リザは口をとがらせて、散々待たせたエステラに文句を言う。
「遅い! エステルの言う通り待ったけど、ものすごく待たせすぎだよ!」
「ゴメンね、少し迷路のボスがいないか確認したかったの」
「そういうのは、エステルじゃなく僕に任せればいいから! あまり隠し事をしたらダメだからね?」
「分かっているよ」
リザの文句に、エステルは苦笑いを浮かべつつ謝り、脱出に向けて歩いていく。
リザは樹木で出来たロングボウを、エステルは様々な色が混ざった水晶が付いた杖・混合杖を構えなら歩む。
リザは鼻歌を歌いつつ歩むが、逆にエステルは少し迷いを見せていた。
リザはそのことに気づき、どうかしたのか聞こうとする。
しかし突如土煙が放たれ、二人は突然のことに驚く。
「キャァ!」
「ウワッ!? 何?」
二人は驚きながら、土煙の発生源を見る。
そこにいたのは鳥のような翼を持つ天使がいた。
しかしその天使は両肩からガラスの水仙を生やし、黒いバイザーをつけており、最初の印象は不気味であった。
リザは目の前にいる天使が危険だと感じ、即座に天使の額に向けて矢を放つ。
天使は地震に襲い掛かる矢を軽く振り払う。
矢は粉々に砕け散り、それを見たリザは面倒くさそうにし、エステルは顔を青ざめてつぶやく。
「何で、何で学園が用意した迷路に天魔がいるの……?」
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