第10話 ヘルスパイクベア討伐後編
ヘルスパイクベアは俺に向かって進路を遮る木をへし折りながら進んでいく。
俺はヘルスパイクベアに追いつかれない様に気を付け、辺りを見渡して確認する。
見た限り人影もなく、ココなら銃を使っても問題ないな。
マァ、大勢の前でニューナンブM60とM870を使ったから問題もクソもないな。
そう思いながら離れていると、ヘルスパイクベアは棘を俺に向けて発射する。
俺は襲い掛かる棘を風球で華麗に回避する。
おっと、うまくいっているからって油断は良くないな。
前世では少しも油断せずに任務や依頼を遂行してきたが、今では自分より弱い奴がいたからな。
そう思いながらニューナンブM60をヘルスパイクベアの傷口に向けて引き金を引く。
.38スペシャル弾がヘルスパイクベアの傷口にヒットするが、ヘルスパイクベアは眉も動かさず、そのまま俺に向けて腕を振り下ろす。
俺は肉体全強化を発動させ、M870で腕の振り下ろしを受け止める。
その時に両腕にとてつもない衝撃が襲い、多少後退ってしまう。
肉体全強化を発動させているとはいえ、傷があるのにとてつもない力で振り下ろすなんてすごいな……。
俺はそう思いながら少し頬を緩ませ、風球を足元で発動させて距離を置く。
ヘルスパイクベアは目を細めるが、俺に向かって突進してくる。
俺は瞬時に横で回避し、ニューナンブM60の引き金を引く。
しかしヘルスパイクベアの毛皮で.38スペシャル弾をはじく。
「なるほど、ファイティングベアの特徴に近いな」
俺はヘルスパイクベアの毛皮を見ながら呟く。
ファイティングベアは弓矢に対して耐性があり、どうやらこのヘルスパイクベアも弓矢に対する耐性がある。
こうなったら傷口か、目玉などの柔らかい所を的確に狙って行くしかないな。
そう思いながら物体投影を発動して、.38スペシャル弾の弾頭を鋭くする。
これで多少ダメージを多く与える事ができるな。
そう思っていると、ヘルスパイクベアは近くの木を抜き取り、それを俺に向けて投げ飛ばす。
「ッ……! マジかよ!」
俺は投げ飛ばされた木を見て素早く詠唱する。
『火のエレメントよ。我が体内の魔力を糧に、火の玉を生みだせ!』
「火球!」
詠唱し終えると手のひらから火球が生み出され、それを自分に向かってくる木に向けて投げる。
木と火球がぶつかり合うと爆発し、木の破片が辺りに飛び散る。
俺はそのすきにニューナンブM60を構えて引き金を引く。
M870はショットガンだから、遠目にいるヘルスパイクベアの傷口をうまく当たれない。
物体投影で細工した.38スペシャル弾が、ヘルスパイクベアの傷口に当たって血を吹き出す。
よし、肉を突き刺さったから血を噴き出したぞ。
そう思っているとヘルスパイクベアは叫び声を上げると、黒い風を纏わせた棘を辺りに放つ。
それは弾幕の如くであった。
さすがにこれは不味い! 俺は近くの木影に隠れて弾幕を当たらないようにする。
しかし、黒い風を纏った棘は木に刺さると、刺さった所が抉られてしまう。
チッ! 黒い風で障害物を抉り、黒い渦で魔法をはじき飛ばす。攻防ともに厄介だぞ!
黒い風に抉らない様に気を付けつつ、ヘルスパイクベアの様子を見る。
ヘルスパイクベアは急速で棘を生やし、それらを瞬時に俺に向けて放っている。
なるほど、あんな風に連続で棘を放っているんだな。
だったら棘の弾幕の隙間を通り、M870をヘルスパイクベアの傷口を至近距離で12ゲージを放つ。
ショットガンは近距離に特化しているため、至近距離で放てば威力は絶大だ。
俺はこの策を決めて自立補助精霊に聞く。
質問だが、飛んでくる棘の予測は出来るんだよな?
《ハイ、棘の軌道と被弾地点を予測する事ができます》
自立補助精霊はそう答えると、俺は心の中でうなずきながら木影から出る。
ヘルスパイクベアは棘を俺に向けて雨あられのように放つ。
しかし棘は自立補助精霊の予測で俺は回避し、ダッシュで近づいて行く。
ヘルスパイクベアは棘が避けられることに驚くが、呻き声を上げながら棘を飛ばす。
「グォォォォォォ!」
「ちょっと棘を生やす時間が短くなったけど、自立補助精霊の前じゃ軽いんだよ!」
俺はそう叫びながらヘルスパイクベアの懐まで近づき、M870の銃口を傷口にねじり込む。
ヘルスパイクベアは傷口を攻撃されて叫ぶ。
「グァァァァァァァ!」
ヘルスパイクベアは叫び声を上げ、懐にいる俺を腕にある棘で刺し殺そうとする。
しかし俺はM870の引き金を引き、傷口の内側で散弾が炸裂する。
すると傷口から血を大量に吹き出し、俺は顔面にかかってしまう。
肌に感じる生暖かさと鼻から臭う鉄と生臭さ、それらに久々に感じるものだが吐き気を感じない。
我ながら精神が強いな。いや、殺害に対する抵抗がないだけだろう。
俺のなれに皮肉気に感じるが、ヘルスパイクベアは口から血を吐き出して叫ぶ。
「グォォォォォォ!」
「ウグゥゥゥ!」
するとヘルスパイクベアは俺の背中を強く裂く。
俺は背中から激痛と温かさが抜ける感覚を感じ叫んでしまう。
だけどな……五体満足で勝てるなんて思いもしてないんだよ!
俺は背中に力を込めて出血を抑え、グリップを引いて排莢して再び引き金を引く。
散弾が炸裂して大量の血が吹き出し、ヘルスパイクベアは叫び声を上げる。
「グォォォォォォ!」
ヘルスパイクベアは叫び声を上げながら俺の額を爪で切り裂く。
額を切り裂かれて出血してしまうが、痛みを苦しんでいる余裕はない。
「ウォォォォォォ!」
俺は痛みをまぎれるために叫び、グリップを引いて排莢して引き金を引く。
その繰り返しでダメージを与え、撃つたびに奥にねじり込む。
そして最後の一発を放てば、ヘルスパイクベアは叫び声を上げず、瞳に光が消えて後ろに倒れる。
俺はM870を下ろしてヘルスパイクベアの生死を確認する。
瞳から光が消え、呼吸が全くない、まさに絶命した証だ。
「ギリギリとは言え、何とか、なっ……た」
俺はそう言うと力が抜けて倒れる。
あ、ヤバい。血の出過ぎで死にそう……。
二度目の死を感じていると、奥からルネス兄さんたちがやって来た。
ルネス兄さんは俺を抱え、ルイス兄さんはヘルスパイクベアの死体を見て驚く。
「マジかよ、あのクマをあいつが……」
「ルイス! ルイの出血が多い、急いで回復系で癒してくれ!」
「アア、分かった!」
ルネス兄さんは俺の傷を見て治療をルイス兄さんに頼み、ルイス兄さんはそれに答えながら詠唱する。
『無のエレメントよ。我が体内の魔力を糧に、傷を癒す光を放て!』
「回復光!」
詠唱し終えると手のひらから傷を癒す光を放って治療していく。
すると傷が少しずつ塞いで行き、痛みが軽くなっていく。
回復系、初めて見たけど凄いな。
今後は回復系も練習していくか……。
そう思っていると俺はゆっくりとまぶたを閉じて眠る。
▲▽▲▽▲▽
ルイがヘルスパイクベアを倒した様子に、忍者の男・ディザスターが水晶を持ちながら呟く。
「へぇ、あのちび、中々やるな。今すぐ消すべきか?」
『いえ、彼が成長するまで待ちましょう。そうすればあなたも楽しめますよ?』
ディザスターはそう言いながら黒嵐刃を構えるが、水晶を通して様子を見ているフードの男が止める。
フードの男の言葉にディザスターは黒嵐刃を収めて言う。
「確かにそれもそうだな。よし、だったらこの場から去るか!」
ディザスターはそう言うとこの場から去り、フードの男はルイがヘルスパイクベアを一人で倒したことに言う。
「まさかココまで強いとは……あの女神もよい資質を選んでいるようですね」
フードの男はリーンの顔を思いながら呟き、水晶の接続を切って魔導書を開いて呟く。
「一応、保険は大量に持った方がいいですね……」
フードの男はそう呟きながら魔導書に書かれている保険(造魔や手ごま)を確認する。
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