第1話 最凶の殺し屋
辺りはとても暗く、この街の住民は寝ている頃だろう。
だがこの街に大きく建てられている屋敷だけは明るくにぎわっており、武装した門番は騒がしいと感じながらあくびを上げて呟く。
「ふわーあ……こんな時間まで門番されるなんてな」
武装した門番の青年・フロムはそう言いながら寝ぼけていると、交代に来た男・バンクは眠たそうにしているフロムを叱る。
「お前、何寝ようとしているんだ?」
バンクの言葉に反応したフロムは振り向きながら言う。
「あ、バンク」
「あのな? ここでは先輩って呼べと言っているだろ?」
フロムはバンクの事を兄貴と呼ぶが、バンクは先輩と言うよう注意する。
フロムはその事に頭を掻きながら謝る。
「ゴメンって先輩。だってこんな真夜中まで門番されるなんて思いもしなかったんだよ」
「マァ、俺達のような下っ端は門番で、上の連中は中の警備と言う名のお楽しみだろな……ン?」
バンクはフロムの言葉に遠目で答えると、偶然屋敷に向かって歩いている人物を見つけた。
その人物は耳にかかるほどの黒髪、瞳は鋭いクリムゾン、頬に傷跡がある中肉中背の男だ。
しかし男の背中には銃を二丁ほど背負っており、腰には手榴弾らしきものをぶら下げていた。
それを見たバンクは瞬時に近づいてくる男が危険人物であると察し、瞬時にM4カービンを男に向ける。
フロムはいきなりバンクがM4カービンを構えた事に驚く。
「いきなり構えてどうしたんだよ!」
「お前も今すぐ構えろ! 今歩いているあいつは――」
驚くフロムに男は声を荒げて構える様に言う。
だが男は言い終わる前に、近づいてくる男が瞬時に懐に入れているトンプソンコンテンダーを抜き、M4カービンを構えるバンクに向ける。
そしてバンクの頭部に向けて引き金を引き、装填された.308ウィンチェスター弾を発射する。
.308ウィンチェスター弾はそのままバンクの右目を撃ち抜き、バンクは撃ち抜かれた右目を抑えながら叫ぶ。
「グァァァァァァァ! 目が、目が!」
「先輩!? テメェ、よくも先輩を――!」
フロムはバンクを傷つけた事に驚きつつも、M4カービンを男に向けようとする。
しかし男はフロムが驚いているすきに一気に接近し、フロムの鳩尾に向けて膝蹴りを食らわせる。
フロムはいきなり鳩尾に膝蹴りを食らわせた事に驚く。
「ガハッ!? は、早い……」
フロムはそう言うと力が抜けて地面に倒れてしまう。
バンクは息を荒くしながら右目から噴水のように出てくる血を止血処置し、襲撃してきた男を睨みながら聞く。
「お、お前は一体何者なんだ……?」
バンクの質問に男は振り向きざまに答える。
「俺か? 俺の名前は黒鉄健吾。自分で言うのも何だが、最凶の殺し屋だ」
「ハハ……そう、か」
バンクは男・健吾の名前を聞いて苦笑し、そのまま意識を失う。
健吾は地面に倒れる二人を踏まない様にまたぎ、屋敷の庭に侵入する。
屋敷の庭に侵入すると百人ぐらいの軍隊がM4カービンを構えており、さらに奥からM60パットンがやって来た。
健吾はそれを見て呆れてしまう。
「オイオイ、そんなに軍事力やパーティーに精を入れたいのか? 少しは国民の事を考えて――」
「一斉に撃てー!」
健吾はこの国のダメな所を言おうとするが、最前列に立つリーダー格の男が部下に発砲するように命令する。
部下たちはリーダー格の男の命令で健吾に向けて一斉に引き金を引く。
5.56x45mm NATO弾の雨が一斉に健吾に向かって行く。
だが当の本人は驚きもせずにスライディングで回避しつつ、背中に背負っているM870を構える。
そして引き金を引いてバードショットを発射する。
部下たちは顔や目にバードショットをもろに食らって叫ぶ。
「ウガァァ! 目が、目が!」
「いてぇ、いてぇよ!」
「誰か医者を呼んでくれ!」
その様子に撃たれていない連中も発砲するのを止めるが、リーダー格の男は怒りで顔を赤くしながら叫ぶ。
「何をほざいている! さっさと侵入者を――ガッ!?」
リーダー格の男は地団駄踏みながら叫ぶが、健吾はその隙を狙ってトンプソンコンテンダーをリロードし、リーダー格の男の眉間に向けて引き金を引く。
パァンと乾いた空気が破裂した音が響き、リーダー格の男は眉間を貫かれて倒れる。
部下たちはリーダー格の男が殺された事に固まり、健吾はそのまま屋敷に侵入しようとする。
その時、一人の男が屋敷から出てきた。
男はあごひげが少しだけ生えており、目の下には深いクマが出来ていた。
健吾は懐から一枚の写真を取り出し、屋敷から出た男の顔と写真を交互に見て言う。
「お前、この国の首相、プーラスチンで良いんだよな?」
健吾はプーラスチンと呼ばれた男を鋭く睨んで聞き、プーラスチンは健吾を見て舌打ちする。
「チッ……! VIP様が来ているというのに、まさか最強の殺し屋が来るとは……」
プーラスチンは舌打ちをしながらそう言い、腰からロングソードを抜刀して構える。
健吾は懐からM9バヨネットを取り出し構えて聞く。
「あんた高齢者だろ? そんな重たい物を扱う体力何てあるのか?」
「フッ、このプーラスチン、我が国を収める者として容易いわ!」
プーラスチンは健吾の挑発を軽くあしらい、高齢者とは思えない勢いで襲いかかる。
健吾はM9バヨネットを強く握り構え、プーラスチンは健吾の右肩から袈裟切りをかける。
しかし健吾は右肩に向けられるロングソードをM9バヨネットで防ぐ。
刃とぶつかり合って火花が散り、金属が擦る音が鳴る中、プーラスチンは薄ら笑いを浮かべる。
健吾はそれを見過ごさず、直感でM9バヨネットを手放す。
誰もがプーラスチンのチャンスだと思っていたが、健吾はプーラスチンの襟と裾を掴み、勢いよく一本背負いを決める。
「オラァ!」
「グァァァァァァァ! に、日本の一本背負い……だと!」
プーラスチンはいきなり一本背負いされた事に驚く。
周りで見ている部下たちも華麗な一本背負いを見て凄いと固まっている。
健吾はトンプソンコンテンダーをプーラスチンの額に突きつけて聞く。
「さっき笑っていたのは屋敷内から本人が出るための時間稼ぎだろ?」
健吾の質問に部下たちはその事に驚き、プーラスチンは苦笑を浮かべながら答える。
「フッ、まさか読まれていたとは……」
プーラスチンの偽物はそう言うと健吾は引き金を引き、プーラスチンの偽物の額を貫いた。
健吾はリロードして屋敷の中に向かい、部下たちは自然と道を開けていく。
そして屋敷内に入ると小太りな男が慌てて逃げようとしている。
健吾はM950Aを小太りな男に向けて引き金を引く。
9mmパラベラム弾を発射して小太りな男の両足がハチの巣と化し、小太りな男は両脚が撃ち抜かれる痛みに気付いて叫ぶ。
「ギャァァァ! 足が、足がぁ!」
「ギャーギャー騒いでんじゃねぇよ、近所迷惑だろ?」
健吾は足を抑えながら泣き叫ぶ小太りな男を本当のプーラスチンだろうと察し、空のマガジンからリロードする。
プーラスチンは健吾を見て叫ぶ。
「なぜ最凶の殺し屋、健吾がここにいるんだ! 依頼主は日本か? それとも革命軍か!?」
プーラスチンの言葉に健吾は呆れ果て、M950Aを構えて言う。
「ちげぇよ、もともと日本侵略を企んだ議員だけど、偶然出会った孤児のちびに頼まれたんだよ」
健吾はそう言うと、プーラスチンは怒りをあらわにして叫ぶ。
「ふざけるな! そんな下民のために上級国民を殺そうとするのか!」
「そんな下民のためにだと……?」
プーラスチンはこの状況でも首相として威張るが、それを聞いた健吾は眉を寄せて叫ぶ。
「アイツはな……お前等が課せた重税に耐え切れず自殺したんだよ! 上級国民なら、この状況をどうにかしてみろよ? アァ!」
健吾はそう叫ぶとM950Aの引き金に指をかける。
それを見たプーラスチンは顔を一気に青ざめて命乞いする。
「や、やめろォォォォ! 私はプーラスチンだぞォォォォ!」
「ハッ! 自分語りは地獄でやっとけ」
健吾は上から目線で命乞いするプーラスチンをあざ笑いながら引き金を引き、9mmパラベラム弾を発射してプーラスチンをハチの巣にする。
プーラスチンは肉体を穴だらけにされて絶叫する。
「ギャァァァ!?」
プーラスチンは醜い断末魔を上げて絶命する。
その時に返り血が頬の傷跡にかかってしまうが、健吾は気にせずに上を見上げ。
上から床を蹴る音が響き、今すぐ逃げようとしているだろう。
健吾は腰にぶら下げている手榴弾を外し、安全ピンを抜いて数える。
「一、二の三!」
健吾はそう叫ぶと手榴弾を会談に向けて投げ飛ばし、それと同時にVIP達が慌てて現れる。
そして一人のVIPが手榴弾に気付いて叫ぶ。
「おい、あれって――!」
しかし一人のVIPが言い終わる前に手榴弾は爆破し、破片や爆熱がVIP達に襲い掛かる。
「「ギャァァァ!?」」
VIP達は破片や爆熱をもろに食らって苦しむが、健吾は追い打ちとばかりにM950AをVIP達に向けて発射する。
9mmパラベラム弾の雨をもろに食らって断末魔も上げる間もなく絶命した。
「「ガッ――!?」」
健吾はVIP達が絶命したのを確認して屋敷から去る。
そして着いた場所はプーラスチンを依頼した孤児の墓だ。
健吾は墓に向けて手を合わせて語り掛ける。
「ちび、頼まれた事はやった。あとは安らかに眠りな」
健吾はそう言うと孤児の墓を後にして日本に帰国する。
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