09 心配(アル視点)
建国祭ではぐれたミレーヌを見つけてから、どうも様子がおかしい。帰ってきてからもずっと青ざめて震えている。
一体俺がそばにいない間に何があったのか。心配で仕方がない。
「なぁ、ミレーヌ、一体何があったんだ?顔色が悪いしずっと怯えている。教えてくれないか」
いくら聞いてもなんでもない、大丈夫の一点張りだ。そんなにも俺は頼り甲斐がないのだろうか……。
「わかった。とりあえず落ち着くように温かいお茶を入れてくるから、それまでゆっくり休んでいて」
部屋を出ようとすると、クイっと服が引っ張られる。
「!!ごめんなさい、なんでもないの」
「なんでもないわけないだろう、行って欲しくないからこうして服を離さないんだろう?わかった、落ち着くまでそばにいるから」
ミレーヌの横に腰掛けて、そっと背中をさする。か細いその背中は小刻みに震えたままだ。どうしたらこの震えは止まる?どうしたらいつものように笑ってくれるのだろう。
「……アル、まだ記憶は戻らないのよね?」
「あぁ、残念ながらまだ戻らないよ。所々思い出すこともあるけれど、役に立たなそうなことばかりだ」
ミレーヌに言うと、不安そうな顔で見つめてくる。
ミレーヌはすうっと深呼吸をして胸の前で両手を握る。
「今日あなたとはぐれてから、店の前で不穏な話を聞いたの」
ミレーヌの話を聞くと、どうやら俺と同じ金色の瞳を持つ人間を狙っている者がいるらしい。
「もしも狙われているのがあなただとしたら、私、私……」
両目に涙をいっぱい溜めながら、それがこぼれ落ちないように必死に我慢している。
その姿に、俺は思わずミレーヌを抱き締めていた。
「大丈夫、俺は死んだりしない。それに探している奴らがその金色の瞳の持ち主を殺そうとしているかどうかも定かじゃないんだ。髪の毛の色も違うと言っていたんだし、そんなに心配しなくても俺は大丈夫だから」
しがみついて腕の中でうぅ〜と泣くミレーヌ。こんなにも俺のことを心配してくれていることが嬉しいのと同時に、その怪しい連中のことも気になる。狙われているのは俺なのか、それとも違う人間なのか。俺の記憶がないばかりに、こんなにもミレーヌを不安がらせてしまっている。
コンコン
「ミレーヌ様、アル、お客様がお見えになりました」