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06 兄の憂鬱(クリス視点)

ミレーヌの元に見知らぬ世話係がいると知ったのは、舞踏会があった日から数週間経ってからだった。


いつものようにお母様の目を盗んでミレーヌに会いに行く。可愛い私の妹ミレーヌ。

お母様はミレーヌの美しさに嫉妬してミレーヌを遠ざけたけれど、遠くなればなるほど会いたくてたまらない。


ミレーヌと初めて出会ったのはミレーヌが14歳の時だった。小さくて可愛らしい女の子。聡明そうで、話をすれば歳の割にしっかりとした受け答えをする。


花がふわぁっと咲いたように笑うミレーヌの笑顔をいつの間にか独り占めしたいとさえ思うようになった。


全く血のつながらない四つ下の妹への思いが、果たして兄としての強い思いなのか異性としての淡い恋心なのか自分でも未だにわからないでいる。



「その男は誰だい、ミレーヌ」

ミレーヌの側につきっきりでいる、黒髪に金色の瞳をした背の高い見目麗しい男。年はミレーヌより少し上といったところだろうか、いや、見た目だけではわからないな。


気にくわない。大いに気にくわない。ミレーヌの周りには自分が認めたごく少数の男しか置きたくないのに。


「お兄様、こちらはアルと言います。少し前から執事補佐 兼 護衛騎士として側にいてもらっているのです」

ミレーヌがそう言うと、アルとかいう男は深々とお辞儀をした。真顔なので表情はまったくよめない。


こんな見目麗しい男がミレーヌの側につきっきりでいるなんて。そもそも可愛いミレーヌに惚れない男などいないだろう。こいつだってきっとミレーヌに惚れてしまうはずだ。いや、もう惚れているのか?


考えれば考えるほど虫唾が走る。


「護衛騎士とのことだが、剣術はどのくらいなんだい?ミレーヌをきちんと守れるのかな」

ミレーヌの前だからなるべく笑顔でアルに問いかける。


「人並みには。ミレーヌ様のことは何があっても絶対にお守りしてみせます」


はいきた、気にくわない。なにそれ、俺がミレーヌを守ります的な?そんなのこの俺が許すわけないだろう!


「そうか、だったら手合わせ願おうかな。俺と互角に張り合えるのであれば護衛騎士として認めよう」


でも。

「もしも俺に負けるようなことがあれば、ミレーヌの護衛騎士もお世話係もやめてもらうよ」


にっこりと微笑んで言ってみたけれど、アルは真顔のままだった。やっぱり気にくわない。






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