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41 恋敵(ライバル)

クリスが自国に戻ってから数日が経った。それまでに目新しい動きは特に見られない。


ミレーヌとアルフォンスは二人揃ってティムール王国王城の庭に来ていた。


「あれから特に大きな出来事はありませんね」

「相手も出方を伺っているのだろう。ラインハッシュが捕まった以上、慎重に動かざるを得ないのだろうな」


シャルドがラインハッシュから得た情報はまだ少ない。だが、何が起こっても不思議ではない現状だからこそ気を引き締めたままでいなければならない。




「アルフォンスお兄様!」


背後から明るく弾んだ声がする。振り返ると、明るめの赤い髪をふんわりとなびかせた可愛らしい令嬢がいた。年の頃はミレーヌよりひとつかふたつ下くらいだろうか。


「クラリーゼ」

アルフォンスが微笑んで名前を呼ぶ。するとクラリーゼと呼ばれた令嬢は嬉しそうに顔を赤らめた。


「アルフォンスお兄様が無事に戻ったと聞いて慌てて駆けつけたのです。本当にご無事でよかった!」


アルフォンスの腕を取って体を寄せる。それはまるでアルフォンスの隣にいるミレーヌが見えていないかのような振る舞いだ。


「クラリーゼ、すまないがそういうことはよしてくれ」

穏やかに、だがしっかりとした口調でそう言うと、アルフォンスはクラリーゼの手を腕からそっと離した。


「まぁ、ごめんなさい。いつものことだからいいかと……あら、そちらの方は?」

ようやく気がついたと言わんばかりにミレーヌを見る。


「こちらは隣国デイリンハイムで助けていただいたミレーヌ嬢、公爵家のご令嬢だ」

アルフォンスに紹介されて、ミレーヌはドレスの裾を掴んでふんわりとお辞儀をする。


「初めまして。ミレーヌ・ハイエンドと申します」


「まぁ、アルフォンスお兄様を助けた方なの?それはそれはありがとうございます」

にっこりと頬笑むが、まるで貼り付いたような笑顔だ。


(この方はもしかして……)

ミレーヌは心がざわつくのを感じた。だが、そんなミレーヌを知ってか知らずか、アルフォンスはクラリーゼに言う。


「ミレーヌは俺の大切な人なんだ。クラリーゼもどうか仲良くしてあげてほしい」


アルフォンスの言葉にほんの一瞬だけクラリーゼは目を細め、すぐにまた笑顔を向ける。


「当たり前です、私の大切なアルフォンスお兄様を助けてくださった方ですもの!ねぇ、お兄様、私のことも紹介してくださいな」

クラリーゼがまたアルフォンスの手を取ってお願いをする。


「あぁ、すまない。ミレーヌ、こちらはクラリーゼ。侯爵家のご令嬢で幼少からの知り合い、兄妹のように過ごした仲だ」


「幼少からの知り合いだなんて。そんな他人行儀なこと言わないでください。だって一度は婚約者になるはずだったんですから」


アルフォンスの手を掴んだままミレーヌを見つめてにっこりと頬笑むクラリーゼに、ミレーヌは心のざわめきを確信したのだった。




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