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04 執事補佐 兼 護衛騎士 ♢

美しい黒髪と美しい金色の瞳を持つその人が目を覚ました。

話をすると声まで美しくてびっくりする。すこし低めだけれどよく通る声。この声で名前を呼ばれたらきっとドキドキしてしまう、なんて勝手な妄想をしてしまった自分が恥ずかしい。


目が覚めてよかった!と思ったのもつかの間、その人は記憶が曖昧だと言う。しかも、自分が誰かすらもわからないそうなのだ。


「困りましたね」

うーんとメイドの一人、リルラが唸る。


「本当に記憶が無いのでしょうか。ハイエンド家のお嬢様を狙う不届きものの嘘なのでは」

執事のジェームスが顰め面で言う。


「そんな、こんな辺境の地にいる私なんか狙っても仕方がないでしょう」


そう、こんな何もない何の取り柄もない、家から見放された令嬢なんて狙ってもなんの得にもならないのだ。


「だとしたらいかがいたしましょう?自分が誰でどこから来たかもわからなければ帰しようがありませんが」


リルラの言葉にその場の一同がうーんと唸る。

ふと、ジェームスが何か思い付いたようにポン!と手を叩いた。






「執事補佐 兼 護衛騎士?」

その人が驚いた顔で尋ねてくる。


「そうです。この屋敷には男手が少ない。執事は私め一人ですし護衛ができる者もお嬢様が外出する時に街から雇い入れるくらいですので」

ジェームスが微笑みながら言う。


ジェームスの言う通り、この屋敷には男手が少ない。執事のジェームス、魔法使い 兼 厩舎担当のカナム、料理人のハルの三人だけだ。

ジェームスは屋敷に常在しているが、カナムとハルは近くにある宿舎のような小屋敷から通っている。


「それにあなたはどうやら剣術が使えるようだ。お嬢様の護衛として側にいてくれればありがたいのですが」


ジェームスの言葉に、その人は少し困ったように顔を顰めた。


「そもそもそんなことを見ず知らずの俺なんかに言って大丈夫なんですか。男手が少ないなんて危ないじゃないですか」


確かにそう、ごもっともです。


「でも、そうやって危惧してくださるあたり、あなたはきっと悪い人ではないと思うのです」

発言した私をジッと見つめてくる。美しい金色の瞳にまるで射ぬかれたようで、心がそわそわする。


「あなたがどこの誰かわからない以上、放り出すわけにもいきません。どうせなら目の届く所に置いておいた方が安全かと」

ジェームスはにこやかに言うが、その微笑みには有無を言わせぬ圧がある。


その人はほうっ、とため息をついた。


「……わかりました。私としても助けてもらった上に働かせていただけるのは大変ありがたいことです。記憶が戻るまで誠心誠意、心をこめて尽くさせていただきます」


「成立ですな。して、あなたをどう呼ぶかですが。お名前も全く覚えていないのでしょうか。あだ名のようなものでも何かを覚えていませんか」

ジェームスの問いに、眉間にシワを寄せて少し考える仕草をしてからその人は言った。


「……アル。なんとなくそう、呼ばれていたような気がします」





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