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30 絶望

 ラインハッシュの髪色を見て驚愕するレンブランド。そして、出生の秘密と今までの経緯をラインハッシュの口から聞かされたレンブランドは、絶句しその場に膝から崩れ落ちた。


「そんな……まさか、お前も王家の血筋の一人?王がお前とお前の母親にそんなことをしていたのか?お前は俺とアルフォンスを陥れるために今までずっと素性を隠して生きていたのか?信頼されるために自分を偽って?ずっと俺たちの前にいたライは本当の姿じゃなかったって言うのか?ライ……」


 ラインハッシュを呆然と見つめながら、レンブランドは呟く。その様子を、ラインハッシュは覇気のない瞳で見下ろしていた。


「そうだ。お前達に信頼されるためだけにずっと自分を偽ってきた。そうして勝ち取った信頼で、こうしてお前達兄弟を陥れることができたんだ。ずっと信頼していた側近に裏切られ続けていたと知った今の気持ちはどんなだ?絶望か?」


 薄ら笑いをしながらレンブランドを見下ろすラインハッシュ。


「お前達にはここで戦ってもらう。誰でもいい、誰か一人が死ねばそれだけで十分国を揺るがす騒ぎになる。例えば、そこにいる隣国の御令嬢でもだ」


 剣を抜き、ミレーヌに剣先を向ける。この時のために、自分は腰に剣を下げアルフォンス達の装備は回収せずにいた。アルフォンス達も剣を抜いてミレーヌを守るように剣を構える。



 なんの装備も持っていないレンブランドだけが、呆然とその様子を眺めていた。


(どういうことだ、あのライが、小さい頃からずっと一緒にいたあのライが、どんな時でも正しい道を指し示してくれた優秀な側近であるライが、なぜ)


(ずっと裏切られていたのか?くだらないことでも一緒に笑い合っていたあの日々は、第一王子としての歩みに迷った時に共に歩もうと言ってくれたあの言葉は、どんな時でも力になると言ってくれたあのアルは、全部、嘘?)


 走馬灯のようにラインハッシュと過ごした日々が、アルフォンスやシャルドと4人で笑い合った日々が、脳内に蘇ってくる。


 気がつくと、レンブランドは壁に飾られていた古くから伝わる王家の剣を手に取っていた。



 

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