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03 目覚め(拾われた美青年視点)

サラ……サラ……ゆっくりと優しく髪の毛をすかれているような感覚。とても気持ちが良い。


ふっと意識が戻って瞳を開けて見ると、目の前に女の人がいた。艶やかなブロンドの髪をひとつに束ね、花のコサージュをつけている。キレイなドレスを着ているから舞踏会か何かだろうか。


それにしても可憐で可愛らしい顔をしている。年の頃は17・8といったところだろうか。目が合うと頬を赤らめた、可愛い。

頭を撫でていたことを謝られたけれど、とても気持ちが良かったし安心するからむしろ大歓迎だ。


まだ体が鉛のように重く、そのまままた意識を手放してしまった。







チチチ……


どこからともなく小鳥の声がする。瞼の裏がまぶしい。

そっと目を開けると、カーテン越しに明るい日の光が射し込んでいた。


ガバッ


飛び起きると、どうやらフワフワのベッドに寝ていたようだ。体がどこも痛くない。

そう、痛くないのだ。昨日確か誰かと戦って傷を負っていたはずだ。


戦っていた、そう、戦っていたのだが、一体誰と?


記憶が曖昧だ。どうしてここにいるのかもわからない。そもそもここは一体どこだろうか。


何よりも、俺は誰だ?




コンコン


ドアをノックする音がする。

「はい」

「!失礼します」

思わず返事をしてしまうと、向こうから明るく弾んだ声がした。


部屋に入ってきたのは、昨日頭を撫でてくれていた女性だ。昨日はひとつに束ねられていたが、今日は髪をおろしている。ふんわりと柔らかくウェーブしているその髪型も、また似合っていて可愛らしい。


服装も鮮やかなドレスではなくふんわりとした今時の女性の服装だ。


「お目覚めになられたのですね!」

よかった!と嬉しそうに微笑む姿に、こちらもなぜか嬉しくなる。


「申し遅れました、私はミレーヌ・ハイエンドと申します。デイリンハイム国の伯爵ハイエンド家の者です」


スカートの両裾をそっと掴んでふわりとお辞儀をする。なんて美しいのだろう。


「あなたが助けてくれたのですか」

「はい、突然道に倒れ込んできたのです。気を失っていたのですが、怪我をしているようでしたので屋敷までお連れしてしまいました」


ぺこり、とお辞儀をするその仕草も愛らしい。そう、愛らしいという言葉がぴったりだと思う。


「そうでしたか。ありがとうございます」

「いえ、お加減はいかがですか?」

心配そうに覗きこまれて一瞬胸がドキリとする。


「この通りすっかり治っています。本当にありがとうございました。礼をいくら言っても足りないほどです」

礼を言うと、そんなそんなと両手をワタワタさせている。なんとも可愛らしい生き物がいたものだ。


「ただ」

隠してはおけないので言うしかない。果たして信じてもらえるかどうか。


「記憶が、曖昧なのです。自分が誰なのかもわかりません」


そう言うと、目の前のミレーヌ嬢は驚いて目を丸くした。


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