23 兄の怒り
「つまり、あなた方はティムール王国の第二王子とその側近だと。あらぬ罪を被せられ第一王子に追われていたが、その最中で記憶をなくし、ここに運び込まれ助けられた。記憶を取り戻したが下手に動けばまた狙われると身を潜めていた最中にシャルド殿に第一王子の側近から接触があり、第一王子は第二王子を殺すつもりはないので第一王子と会ってほしいと言われた。そして相手側の真意を図り計画を練るために3日間猶予をもらっていた、と」
クリスは、冷ややかな瞳でアルフォンス達の説明を復唱する。そして、一つため息をついた。
「まず、当家の長男として、隣国の第二王子及びその側近の方に無礼な態度や言葉を浴びせてしまったこと、深くお詫び申し上げます」
淡々と、しかし深々とお辞儀をするクリス。
しかし、頭を上げたクリスの顔は、いつもの穏やかなクリスを留めておらず、憎しみに狂う表情になっている。
「ここからは、ミレーヌの兄として話をさせていただきます」
そういうと、突然アルフォンスの胸ぐらを思い切り掴み、殴りかかった。慌ててシャルドが止めに入ろうとするが、アルフォンスが視線でそれを制す。
「いいか!俺はミレーヌの身に何かあれば地獄の底に突き落としてやると前に言ったよな!それはたとえあんたが隣国の第二王子であっても同じだ!ミレーヌが!お前達のせいでいなくなったんだぞ!しかも恐らくミレーヌを連れ去ったのは第一王子の側近だろう!どうしてくれるんだ!ミレーヌの身に何かあったら、俺は!俺は……」
言いながら崩れ落ちるクリス。一発殴られたアルフォンスは一緒に崩れ落ち、シャルドはその様子を両目を見開いてただ唖然と見つめている。
ジェームスがそっとクリスの側にひざまずくと、クリスはジェームスに抱きついて嗚咽を漏らす。
「俺の、俺のせいです。俺がラインハッシュを信じたばっかりにこんなことになって……考えさせてくれなんて言うんじゃなかった。きっとそれすらもあいつの思う壺だったんだ」
思い詰めたように言うシャルドに、クリスが顔を上げて悲しげに微笑む。
「お前もアルフォンスもお前の国の第一王子もその側近もみんな悪いんだよ。そもそも自国の問題を他国に持ち込むな。お前達がこの国に逃げ込まなければ、ミレーヌの馬車の前に現れなければ、こんなことにはならなかったんだ」
クリスの言葉を、アルフォンスは噛み締めるように聞いている。そして、ぐっと拳を握り締めるとゆっくりと立ち上がり、クリスの前に膝まずいた。
「どんなに謝っても済まされることではないのはわかっています。俺も、兄も、側近たちも、取り返しのつかないことをしてしまった。本当に本当に申し訳ない」
アルフォンスが謝る姿を見て、シャルドも同様に首を垂れる。
「だが、このまま奴らにミレーヌ嬢を奪われたままなのは気に食わない。ミレーヌ嬢の身に何か起こる前に、絶対に取り戻してみせる」
果たして、そんなことは可能だろうか。その場の誰しもが絶望的な顔でアルフォンスを見る。
「恥を偲んで頼みます。どうか、力を貸してくれませんでしょうか」
膝をつき深々を首を垂れるアルフォンスとシャルドを、クリスは諦めにも似た表情で見つめた。
「俺はどんな手を使ってでもミレーヌを助け出す。協力したいのなら勝手にすればいい」




