20 再会(シャルド視点)
「よう、シャルド。元気そうじゃないか。自分のいない間に主人を失わなくてよかったな」
目の前の男、ラインハッシュはそう言いながら嬉しそうに笑っている。
アルフォンス様たちと建国祭を周っていると、ラインハッシュの姿が見えた。アルフォンス様たちに別れを告げて追いかけてみれば、案の定俺のことを待っていたようだ。
「よく言うよ、お前らが俺達を追い詰めたくせに。その減らず口、二度と開けなくしてやろうか」
「できるもんならやってみろよ」
綺麗なサファイヤ色の瞳でこちらを見つめる。こいつはいつだってそうだ、その瞳で真っ直ぐに獲物をとらえて離そうとしない。
「俺達の居場所がよくわかったな」
ため息まじりに言うと、ラインハッシュはやれやれと腰に両手を添えた。
「全く、苦労したぞ。わざわざまたご丁寧に髪色まで変えてしかも隣国まで足を伸ばすとはね」
ティムール王国内で追われていた時、アルフォンス様も自分も魔法で緑かかった紺色の髪色に変えていた。ティムール王国内では一番多い髪色で、一般市民に紛れやすいと思ったからだ。
だが、追手に見つかって王国内の端、隣国との国境近くまで追い詰められてしまう。髪色を変えていることがバレている以上、目の前の敵はなんとしてでも倒さなければいけない。そしてなんとかアルフォンス様だけでも逃そうと思い、アルフォンス様の髪色をまた魔法で変えたのだった。
「お前もまた髪色変えて、メガネまでかけて。それで俺にバレないとでも思ったのか?」
「どっちにしたって変えないよりは変えたほうがいいだろ。結構これも似合うと思うんだけど」
髪の毛をいじると、フン、と鼻で笑われた。なんだよむかつくな。
「よくアルフォンス様の魔力まで隠したな。一体どうやったんだ」
「それはお前でも言えないね。てか、わざわざ追手に教えるバカがどこにいるんだよ」
フン、とあしらうとラインハッシュは不満げな顔をする。
「いい加減、逃げるのはやめにしたらどうだ。今ならレンブランド様もご寛大な措置をとってくださる」
「よく言うよ、最初そう言っておいて結局本気で殺しにかかって来たのはそっちだろ」
「本気で殺そうとしたわけじゃない、俺は生きたまま捕獲しろと言っていた。だが、無能な傭兵どもが勝手に殺そうとしただけだ」
こいつの言うことだ、一理はあるのかもしれない。だが釈然としない。
「お前がそんな無能な傭兵を雇い入れるか?お前だったらもっと賢い手を使って俺達を捕獲するだろう」
「へぇ、随分と俺のことかってくれているんだな。残念だが傭兵を雇い入れたのはサイオスだ。サイオスはレンブランド様と国王陛下のお気に入りだからな。俺は口を出すことさえままならなかったよ」
確かに、サイオスは国王陛下時代からの贔屓商人だし、レンブランド様もサイオスと出会ってからアルフォンス様への態度が急変したらしい。
おそらくはサイオスが何かをレンブランド様に吹き込んだに違いない。だが、それにこいつが一切口出しできないなんてことはおかしすぎる。
「お前達を殺したいだけならわざわざ俺がレンブランド様の元を離れてここまで来たりしない」
「そんなこと言って、実は寂しくて俺に会いたかったんだろ。お前の永遠のライバルはこの俺だからな」
そう言うと、うんざりした顔で一瞥された。こいつはこういう冗談が通じないからつまらないんだよ。
「とにかく、一度アルフォンス様に合わせてくれ。俺の口から直接アルフォンス様へ説明すればお前もアルフォンス様も納得するだろう」
こいつの言うことはいつも正しい。第一王子のレンブランド様の側近ラインハッシュとして常に正しい道を選択し、それを示してきた男だ。だが。
「少し考えさせてくれ。それくらいいいだろ」
「……わかった、期限は3日だ。それ以上は待てない」




