15 恋わずらい(シャルド視点)
アルフォンス様と共にミレーヌ様のお屋敷でお世話になるようになってから一週間が経った。
一週間の間にアルフォンス様を見ていてわかったことがある。
アルフォンス様はことあるごとにミレーヌ様の側にいたがる。もちろん、自分の置かれた状況を把握するために私にあれこれと質問し相談されることも多々あるのだが。
それ以外ではミレーヌ様のお側につきっきりなのだ。
助けてもらってからずっとミレーヌ様のお世話と護衛をしてきたのだからそうなるのも無理はないのかもしれない。
だけれどもだ、あれはそれだけではない気がする。
「ミレーヌ、庭に綺麗な花が咲いていたから部屋に飾っておこう」
「ミレーヌ、今日もきれいだね」
「ミレーヌの入れたお茶は美味しいな。ずっと飲んでいたい」
ことあるごとに、ミレーヌ、ミレーヌとミレーヌ様のことばかりだ。
正直、ティムール王国にいた頃のアルフォンス様からは考えられないような光景に驚いてしまう。
なんならアルフォンス様は女性が大の苦手だった。アルフォンス様の地位とその見目麗しい姿に、こぞって自分の娘を婚約者にと言ってくる貴族や、実際に色目を使ってしつこく近づいてくるご令嬢が多く、そんな状況に疲れて女性という生き物を毛嫌いしていらっしゃった。
そんなアルフォンス様がだ。たった一人のご令嬢にまるで熱をあげているかのように側を離れたがらない。恋わずらいでもしているんじゃないか。
確かにミレーヌ様は美しい。だがこれくらいの美しさならティムール王国のご令嬢にもいらっしゃる。
ミレーヌ様の良さといえば、そう、誰にでも優しい所だろうか。辺境の地でひっそりと過ごすご自分の状況がそうさせているのか、どんな相手にも分け隔てなく丁寧に接する。
植物や動物にもお優しいし、ご令嬢にありがちなつんけんした所がどこにもない。ふんわりと優しい空気がそこはかとなくミレーヌ様の周りには流れているのだ。
なるほどねぇ。
アルフォンス様が首ったけになるのもわかる気がするよ。ただ、いずれ隣国で身分違いという障害はたちはだかってしまうだろうけれど。
今はそんなことよりもアルフォンス様の身の潔白をどう証明するか、どうやってティムール王国へ戻ることができるかを考えなきゃいけないんだけど……
アルフォンス様がミレーヌ様と仲むつまじくしている光景を眺めるのも悪くないな。なんかすごい和む。
おっと、アルフォンス様ずいぶん顔が近すぎやしないか?ミレーヌ様のお顔が真っ赤だよ。あの二人、キスのひとつやふたつは済ませてるんだろうか?いやいや、あの様子だとまだだろうな。
あの二人だ、キスなんてしたらきっとすぐに顔に出るだろうから簡単にバレるぜ。その時が楽しみだなんて、第二王子の側近にあるまじき考えなんだろうな。
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