牢の中で
――ガシャーン!!
わたしと公爵閣下は、突き飛ばされるように牢屋に入れられて、派手な音を立ててその扉が閉められた。
「出せ! 出さんか! 私はベネット公爵だぞ!」
公爵閣下が騒いでいる。
ここに連れてこられる途中で、服を囚人服に着替えさせられた。
そして、連れてこられた牢は、地下牢だ。
平民が入れられる牢であって、貴族用の立派な牢ではない。それ自体は構わなかったけれど、公爵閣下と同じ牢に入れられたのが、予想外だった。
「リィカルナ、どういうことだ!」
さっきまで牢の外に向かって怒鳴っていた公爵閣下が、今度はツカツカとこっちに来た。
胸ぐらを掴み上げられる。
「なぜ、あの三人が生きている!? 貴様に殺せと命じたはずだ!!」
息苦しいのを忘れて、ポカンと公爵閣下を見返してしまった。
――それ、言っちゃうんだ?
どう考えても、言っていい言葉じゃない。
無表情のままの兵士さんたちが、聞き耳を立てているんだから。
間違いなく、言った事そのまま、国王陛下に報告されるだろう。
「答えぬか!!」
怒鳴られて、忘れていた息苦しさを思い出す。
まあ別にわたしは困らない。むしろ、望むところだった。
「人を殺せと言われて、素直にできるはず…………ぐっ……!」
「貴様! 私に逆らったのか!!」
答えたら、さらに締め上げられた。
そのまま床に投げ捨てられる。
「ゲホッ、ゲホッ……」
わたしが咳き込んでいると、公爵閣下に背中を踏まれた。
「うっ……、かっ、はっ……!」
そのままガンガン踏まれて、わたしはうめき声を出すしかできない。
――カァン!
甲高い、何かを叩き付けたような音が響いた。
「ディック・フォン・ベネット、そこまでだ! 牢の中での暴力は、更なる罪状を増やすだけだぞ!」
兵士が鞘に入った剣ごと床に叩き付けて、音を出したのだ。
わたしを蹴っていた足が止まる。
「――ちっ」
小さく舌打ちが聞こえた。
「リィカルナ! 端の方で立っていろ! いいと言うまで休む事は許さぬ!!」
「……はい」
小さく返事をした。
痛みを堪えて、言われた通りに牢の端の方に立つ。
足が崩れ落ちそうだけど、耐えるしかなかった。
そんなわたしたちの様子を、兵士たちが驚きの表情で見ていた。