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困窮の理由

わたしとカルビン様が婚約する理由となった、ロドル伯爵家の困窮。

それは、カルビン様の父親であるロドル伯爵が、借金の保証人になった事にある。


保証人になったはいいけれど、借金した張本人たちが逃げてしまい、代わりに支払うことになった。

その金額が莫大で、伯爵家の財政を傾けた。


そして、公爵閣下が資金援助を申し出たわけだけど。

この話には裏があることを、わたしは知っていた。



領地といっても、ベネット公爵家の領地は広大だ。

それを公爵家だけで見切れるはずもない。


だから、その領地にさらに臣下となる下位の貴族がいて、領地の運営をしている。

名前の出たクマル子爵やキング男爵は、その臣下となる貴族だ。


借金をするときには、必ず保証人が必要となる。

当然、主人は公爵閣下なのだから、何らかの理由で借金が必要なら、その話は公爵閣下に持ってくるべきなのだ。


とはいっても、そうしろという決まりはないから、別に他の人に話を持っていってはいけない、というわけではない。


だからか、国王陛下もそれ以上は言わず、代わりに言ったのは別の事だ。


「もう一つおかしな事がある。借金、利息を含めた総計でも、たいした額ではなかったとロドル伯爵が言うのだ。だというのに、請求された金額は、家を揺るがすほどの金額だった」


国王陛下は、ロドル伯爵をギロッと睨んだ。


「これはロドルも悪いがな。保証人になったときに、きちんと証書を作らぬから、こういうことになる」


お金を貸す人と借りる人との間に、証文を作るのは当たり前だ。


では、借りる人と保証人の間ではどうするか、というと、絶対的な決まりはないらしい。ただ、後に問題になる可能性もあるから、正式に証書を作っておいた方がいい、とはされている。


正式な書類があれば、問題が起こって自分ではどうすることができなくなっても、国に訴える、という手も使えるからだ。


ところが、ロドル伯爵は今回、その証書を作らなかった。相手に「周囲に知られたくないから」とごねられたらしい。


一応、借金の金額などを記してはいたらしいけれど、正式な書類ではないからと抗議しても認められなかった。


結局、借金の証文に記された金額を泣く泣く支払ったけれど、だからといって諦めたわけではなかった。

騙された事は、確実だからだ。


ロドル伯爵は調べを進めた。

調べて証拠を掴んだことで、国王陛下へ正式に訴えたのだ。


「証拠ですと?」


自分には関係ない。

そういう態度で国王陛下の話を聞いていた公爵閣下が、面倒そうに相づちを打った。


「そうだ。借金をして払わず蒸発した三名。その三名が、貴様の治める領地で見つかった」

「…………………は……?」


関係ないと思っていた所に、火の粉が降りかかってきた。

公爵閣下の驚きは、そんなところだろうか。


「その三名が、貴様に命じられた事だと話したらしい。借金の証文等、証拠も見つかっている。ロドル伯爵に見せた莫大な借金の証文が、偽造されたものであることも確認された」


「ま、まさか……そんな、ことが……」


公爵閣下がワナワナと震えている。

それを横目で見ながら、わたしはうつむいていた。


「……陛下、下等な者どもの言うことを、まさか信じておいでで? そのようなことを命じるはずがないでしょう」


最後の悪あがきとばかりの公爵閣下の言葉を、陛下はまるで相手にしなかった。


「名が出た以上は、捨て置けぬ。証文の偽造に関しても、子爵や男爵程度でできることではないからな。娘共々、しばらく拘留させてもらう」


陛下のその言葉で、どこにいたのか、兵士たちが出てきた。

それを見て、本気だと公爵閣下も悟ったのだろう。


「へ、陛下! 冤罪です! 私は栄えあるベネット公爵ですぞ!」

「だからなんだ。連れて行け」


公爵閣下の両脇を、兵士たちが取り押さえて、強引に連れて行かれる。

わたしも同じだ。


抵抗するつもりはなかったけれど、思うように足が動いてくれなかったせいで、兵士たちにはそう受け取ってもらえなかったのか。やっぱり強引に連れて行かれた。



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