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国王への謁見

王宮に着けば、通されたのは国王陛下の執務室だった。


わたしは、ふらつく体を押さえて、何とか普通に歩く。こんな所でフラフラ歩けば、それもまた懲罰の対象だ。


執務室にいたのは、国王陛下の他、王太子のアークバルト殿下、第二王子のアレクシス殿下。

国王陛下の側近であるヴィート公爵閣下。


この国の騎士団長であるミラー団長。

そして、ロドル伯爵閣下と、カルビン様だった。



「国王陛下。仰せによりまかり越しました」


公爵閣下は、言葉だけは丁寧に、口調は尊大に参上を告げる。

はっきり言って、国王陛下に対する口調じゃない。


けれど、まさかそれを言うわけにもいかず、公爵閣下に習って礼を取る。


「ベネット公爵。昨日、国立アルカライズ学園の卒業パーティーであったことは、聞き及んでおるな?」


国王陛下は一切の無駄話をせず、いきなり本題に踏み込んできた。


わたしはできるだけ無表情を保つ。

父は、ロドル伯爵閣下に視線を向ける。一瞬だけだけど、冷笑を浮かべていた。


「はい。息子と娘より聞き及んでおります。何でも、談笑していたら突然ロドル伯爵の息子が怒鳴って、我が娘に婚約破棄を突きつけたとか」


公爵閣下は表情だけは沈痛を保っている。

我が娘、とか、こういう場所でしか聞くことのない言葉だ。聞くだけ、苦しさが増す言葉だ。


「突然のことに混乱している所に、退場まで命じられた、と二人とも落ち込んでおりました。特に娘は、一体何が悪かったのか、とひどい落ち込みようでしたよ」


その言葉に、うつむいた。

ドレスを掴む手が震える。


事実でもない、それっぽいことを、よく平然と言えるなと思う。

混乱していたのは確かだけど、落ち込んでなんかいない。


ユインラム様は怒っていただけだし、わたしは落ち込めるだけの余裕なんてなかった。

あの発言の瞬間、わたしは公爵閣下やユインラム様から「罰を受ける!」と、それだけしか考えられなかった。


それに、何が悪いのかなんて、疑問に思う必要も無く、分かってる。


「私としても黙っていられる事案ではございません。陛下からの呼び出しがなければ、私から陛下にお伺いを立てる所でした」


退場を命じたのはアレクシス殿下だけれど、それは間違いなく陛下からの指示だ。

公爵閣下は、平然と陛下からの指示を批判したのだ。


「ふん。何があったか分からぬか」


国王陛下の不愉快そうな声に、この場から逃げたくなる。

無表情を保つことで精一杯だ。


「ベネット公爵。一度は認めたそなたの娘と、ロドル伯爵長男との婚約だが、その婚約を破棄する事とする」

「………………………は?」


国王陛下の言葉に、呆然とした公爵閣下の声が響いた。

わたしも、おそらく間抜けな顔をしているだろう。


貴族同士の婚約は、必ず陛下に許可をもらう事が必要になる。

却下されることはほとんどない、儀礼的なものらしいけれど。


それでも、陛下からの許可、という行程を経ている以上は、解消するにしても陛下の許可が必要だ。


とはいっても、一度認めたものを、簡単に覆すなんてあり得ない。そんな事をすれば、陛下の言葉に重みがなくなる。


だから、カルビン様が何をどう言ったところで、本当に婚約破棄が認められるなんて、ないと思っていた。


「どういうことでしょうか。昨日の婚約破棄の件は、私も娘も許すつもりでおりましたのに」


さすがに、問いかける公爵閣下の声も、動揺していた。


カルビン様の発言を許す代わりに、色々条件を突きつけるつもりでいたんだろうから、陛下からの破棄を認める発言は、わたし以上に衝撃だっただろうと思う。


「クマル子爵、キング男爵、商人のパテル。ロドル伯爵家が困窮する原因となった者たちだが」


唐突な話題転換。

しかし、国王陛下の出した名前を聞いて、わたしはハッとした。


「おかしな話だと思ってな。クマル子爵もキング男爵も、そなたの臣下であるはず。そして、パテルもそなたの領地で商売をしていたはずだ。

 だというのに、なぜ借金をするに当たって、保証人をロドル伯爵に頼んだのだ?」


「し、臣下の動向を、いちいち確認しておりませぬ。なぜと聞かれましても」


公爵閣下は、動揺したのか若干どもった。



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