エピローグ
十八歳。
わたしは無事学園を卒業し、成人を迎えた。
王家の監視を解除され、同時にアレクシス殿下の婚約者となった。
婚約したときに、クリフに大泣きされた。
「結婚禁止って言ったじゃないですか!」と、婚約式をしたその場で叫んで、会場が騒然となりかけた。
「クリフォード、調子に乗るなと言ったはずだな? 姉の幸せを邪魔するな」
「殿下が心配しなくても、僕が幸せにしますって言ったじゃないですか!」
前にも聞いた事があるような殿下とクリフの会話に、場の雰囲気が緩んだ。
「シスコンか……」というつぶやきが、そこかしこから聞こえる。
恥ずかしかったけれど、ホッとした。
クリフの叫びは、間違っても婚約式の場で言う事じゃない。
下手をすれば、王家との関係悪化を招いていたかもしれないのだ。
後で注意したら、プイッと視線を逸らされた。
分かっていて言ったらしい。
「シスコン上等です。これで、姉様が結婚しても、いつ王城に会いに行っても文句は言われません」
そうなのかなぁ。
というか、クリフだって、結婚相手を見つけなきゃいけないのに、これで大丈夫かなぁ。
――という感じで、色々問題と不安の残る婚約式だったのだけど、無事、わたしはアレクシス殿下と婚約を結んだのだった。
※ ※ ※
成人と同時に結婚したのは、王太子殿下とレーナニア様だ。
婚姻の衣装を纏ったレーナニア様が綺麗すぎた。
綺麗すぎて、泣いた。
「なぜリィカさんが泣くんですか」と呆れて言われた。
カルビン様は、無事に好きな女性との婚約を結んだけれど、相手が二つ年下でまだ学園に通っているから、結婚はもう少し先になるらしい。
会ってみたい、とも思ったけど、遠慮した。代わりに遠くから姿を見させてもらった。
そして、さらに一年が過ぎた。
わたしは今日、アレクシス殿下との結婚式を迎える。
小さい頃は何も知らなかった。
当たり前に、母と二人で過ごした平民時代。裕福ではなかったけれど、幸せだったと思う。
公爵閣下に引き取られてからは、当たり前が当たり前じゃなくなった。
毎日が辛かった。
けれど、それがあったおかげで、今わたしはアレクシス殿下と一緒の人生を歩むことができる。
「リィカ」
名前を呼ばれた。
公爵閣下に引き取られて以降、母以外呼ばなくなった名を、アレクシス殿下が呼んでくれた。
それが、どれだけ嬉しかっただろうか。
「アレク様」
アレクシス殿下の差し出した手に、自分の手を重ねる。
小さい頃には想像もしなかった未来だけど、間違いなくわたしが望んだ未来。
一度は逃げてしまった幸せが、今またわたしの手にある。
アレクシス殿下が幸せを引き寄せてくれた。
今度は二人で幸せになるんだと、重ねた手に願いを込めた。
これで終わりになります。
最後までお読み下さり、本当にありがとうございました。




