ユインラムのその後①
ベネット公爵家……ではなく、侯爵家を継いだユインラム様は、陛下のご命令通りに、ロドル伯爵家に借金分の金額を支払ったらしい。
そこまでは良かったんだけど、その分のお金を取り戻そうとして、領地内の税率を一気に上げた。
貴族の持つ領地の税率は、その領主が決めることだから、上げようと下げようと自由と言われれば自由なんだけど。
それでも、領民たちが生活していくためにも、限度というものがある。
その限度を軽く超えたユインラム様に対して、領民たちが幾人か陳情に訪れたらしい。けれど、ユインラム様は不敬だと言って牢に入れてしまった。
それが何度か繰り返されて、一月も過ぎた頃に暴動が起きた。
その暴動の鎮圧を、まだ学園に入学できる年にもなっていないクリフォードに一任。「何とかしろ」の一言で放り投げられたらしい。
兵たちを集めるところから自分でやる羽目になったクリフォードだけど、兵を集めて暴動の先に向かうと、そのまま暴徒たちに合流してしまった。
領主の弟が、「兄には任せておけません!」と幼いながらに決意を見せたことで、暴徒たちにも立派な大義名分が生まれた。
結果、暴徒の数は膨れ上がり、逆に領主軍の士気は下がる一方。
ほとんど戦いらしい戦いも起きず、領主の館を占拠し、ユインラム様は屋敷の一室に監禁されたのだった。
※ ※ ※
わたしは、と言えば、クリフが暴徒たちに合流した、という話を聞いた時点で、国王陛下に願い出た。クリフに合流したい、と。
少し困った顔をされたけど、許可をくれた。
ただし、事が終われば必ず王宮に戻ってくること。来ない場合は、クリフを厳罰に処す、という条件はあったけれど。
わたしは、成人までは王家の監視下にいる必要がある。けれど、貴族の領地内での内紛に、王家が関わるわけにいかないから、監視の名目だとしても、わたしに誰かを付けるわけにはいかないらしい。
だったら、許可を出さなければ良いだろうに、出してくれるのは、わたしを気遣ってくれているからだろう。
心遣いに感謝した。
必ず戻ってくる事を約束して、わたしはクリフに合流したのだ。
そして、およそ二ヶ月ぶりにベネット家の屋敷に足を踏み入れ、ユインラム様が監禁されたのを見届けて、わたしは王宮に戻った。
のだが、その数日後に、再度屋敷を訪れていた。
「姉様、お帰りなさい!」
抱き付いてきたクリフを抱き締めた。
「ただいま、クリフ」
お互いに抱き締めあって、再会を喜んでいたら、後方から不機嫌な声が聞こえた。
「いつまでそうしているつもりだ?」
「も、申し訳ありません……」
わたしが慌てて謝る。
「ようこそお越し下さいました、アレクシス殿下」
クリフの言葉は、その内容とは裏腹に、ひどく不機嫌そうだ。
その顔に、何で来たんだ、と書いてあって、わたしは首をすくめた。




