告白後
アレクシス殿下に告白されて、やっとそれを飲み込めて、真っ赤になったわたしは混乱した。
混乱したまま、「あー」だとか「ううう」だとかしか言えないわたしに、アレクシス殿下は優しかった。
「悪い。でも、知って欲しかった。ゆっくり考えてくれればいい。お前は、王家の監視が解かれる成人までは婚約もできないから、時間はある」
わたしの頬に手を置いて、穏やかに笑っていた。
「俺も成人まで待つ。そうしたら、婚約しよう」
「………………?」
穏やかだけど、優しいけれど、あれ、と思った。
婚約するの、決定なの? と。
アレクシス殿下に婚約者がいないのは知っている。
けど、だからといって、自分はないだろう。
カルビン様との婚約を破棄されて、さらに罪を背負ったわたしが王子の婚約者なんて、どう考えてもおかしい。
考え込んだわたしに、王太子殿下の声が聞こえた。
「いやぁ、良かった。もしかして成人まで何も言わないつもりなのかと心配してたけど、良かったよ」
穏やかに笑いながら、王太子殿下が近づいて来ていた。
その後ろに、レーナニア様やバルムート様、ユーリッヒ様もいた。
そういえば、王太子殿下は一緒にいたはずだ。
それが何で、近づいてきているんだろう?
「二人きりにさせてあげなきゃと思ってね」
そのために、この場から離れて、物陰からこっそり覗き見していたらしい。様子を見に来た他のメンバーも一緒に。
神々しい方たちがそろって覗き見とか、嫌すぎる。
「リィカ嬢、心配いらないよ。アレクと君の婚約は、父上も承知している。成人すれば、ちゃんと婚約できるからね」
「…………………」
意味が分からない。
何が心配いらないのか。
国王陛下が婚約を承知しているってどういうこと。
「兄上! それはいいんです! 俺は父上からの命令という形で、リィカに婚約を了承させるつもりはありません!」
「分かってるよ。リィカ嬢自身に頷いてほしいんだろう? それをどうこう言う事はないから、頑張れ、アレク」
さっきアレクシス殿下に、婚約するのは決まってるみたいな言い方をされたけどなぁ、と頭の隅で考える。
別名、現実逃避だ。
「リィカさん、アレクシス殿下はいい方ですから、大丈夫ですよ。わたくし、リィカさんと義理の姉妹になれるのを、楽しみにしているんです」
その現実逃避すら許さず、レーナニア様がふんわり笑って追い込んできた。
人畜無害な笑顔で、逃げ道を塞いでくるって怖い。
バルムート様とユーリッヒ様は、ニヤニヤ笑うだけだ。
※ ※ ※
この日から、気付けばアレクシス殿下が側にいる。
わたしには優しいんだけど。穏やかなんだけど。
他の男性と……、カルビン様を筆頭に、バルムート様やユーリッヒ様と話をしているときのアレクシス殿下は、ちょっと怖い。
「お前ら、リィカとしゃべりすぎだ」
お三方に正面から向ける威圧がすごい。
バルムート様やユーリッヒ様に、しゃべるな口きくな、と言ってたのは、わたしが罪人だとかそういうのは全く関係なかった、とこの頃になればさすがに気付く。
「殿下って、独占欲強いんだな……」
ポソッとつぶやいたカルビン様の言葉は、聞こえない振りをした。
すごいのは、バルムート様やユーリッヒ様だ。アレクシス殿下の威圧を、気にする様子も見せない。
それだけじゃなく、怖がっているカルビン様にアドバイスめいた事まで言っていた。
「気にすんなって。どうせ何もしねぇから」
「そうですよ。王子の権力を振りかざすなんて、アレクにできませんから。睨んできても、無視して問題ありませんよ」
いや、これをアドバイスと言っていいのかどうかは微妙だけど。
アレクシス殿下がいる前で、平然と殿下をこき下ろすバルムート様とユーリッヒ様だ。
殿下は「気にしろよ!」「問題大ありだ!」と叫んでいたけれど、完全に聞き流されている。
こんなやり取りを経て、カルビン様も変わらずわたしと話をしてくれるようになった。
バルムート様やユーリッヒ様との交流も増えて、色々あるものの、基本的には楽しい生活を送っていたのだ。
――そんなある日のことだった。
ベネット侯爵領で暴動が起こった、との情報がもたらされた。
そして、その暴動鎮圧の責任者に、クリフが任ぜられたと聞いたのは。




