学園生活④
昼食の時間。
一緒に食事をしているのは、王太子殿下にアレクシス殿下、レーナニア様、バルムート様にユーリッヒ様。
神々しいメンバーが一緒だった。
カルビン様も一緒に、と誘われていたけど、言葉巧みに断って逃げていた。
ずるい。
せめて、お茶出しとか色々やろうと動こうとしたけど、止められた。
自分のことは自分でやるのが、このメンバー間の決めごとなのだとか。
実力でも家柄でも、まさしくトップクラスの人たちの集まりなのに、決して自惚れていない。
すごい人たちだ。
一緒にいると、気が引けてしまう。
「何言ってんの。リィカだって、魔法第一位でしょ。それで威張ってるわけでもなし、何も引けを取ってないよ」
「ええー」
カルビン様にポソッと漏らしたら、そう返された。
そう言われるとは思わなかった。
「それにさぁ、あの面子が一緒にいれば、リィカに手を出せる人はいないよ。それもあるから、強引にでもリィカを一緒にいさせてるんじゃない?」
「……それは分かってるけど」
侯爵、と位を落としたベネット公爵家がやらかしたことは有名だ。
ベネットの名が、わたしを守ってくれることはない。
そして、わたしの栗色の髪を指さして、「平民の子だ」と蔑む人も現れる。
こんな風に。
「生意気なのよ! 平民は平民らしくしてればいいのよ! 今すぐ、この栄光ある学園の制服を脱いで、出ていきなさい!」
「その通りだわ」
「ほら、さっさと脱ぎなさいよ」
一人になったら、複数の女子生徒に絡まれた。
Cクラスで一緒だった子たち。
わたしのご機嫌取りをよくしていた子たちだ。
ベネット公爵家の名が地に落ちて、平民の子だと分かった途端に、手の平を返してきた。
こういう人も出てくるだろうとは分かっていた。
だから、殿下方が一緒にいてくれるのは、こういう人たちから守ってくれようとしているのだろう、とも分かっていた。
とても感謝しているけれど、でも、これはわたしがどうにかするべき問題だ。
「そうですよね。やっぱり、わたしみたいなのは、貴族じゃなくて平民でいるべきですよね?」
「え…………?」
あえて同意してみせる。
案の定、相手は戸惑っていた。
「お願いがあるんです。“平民を貴族社会から追い出せ”署名を集めているんです。どうか、サインをお願いします」
懐から取り出したノートを差し出す。
この国の決まりにあるのだ。
国王陛下の決定に不満がある場合は、指定数の同意の署名を集めた上で、再度陛下に再考を求めることができる、という決まりが。
けれど、この決まり、一度も活用されたことがない。
当たり前だ。
署名する、ということは、国王陛下の決定に逆らうと言うこと。そんなことがそう簡単にできるはずがない。
なぜこんな決まりがあるのか、疑問だ。
平民に戻りたい気持ちは、もちろんある。
けれど、クリフを放っておけない。
それに、ここに至るまで、アレクシス殿下を筆頭に、色々な人がわたしを気に掛けてくれた。それらの人たちに恩を返すまでは、今の身分は捨てられない。
だから、わたしは、ただその決まりを利用するだけだ。
わたしの差し出したノートを見て、相手は逃げ腰になっていた。
「い、いえ……それは……」
「そういえば、私たち用事があったんだったわ。失礼するわね」
あっという間に去っていった女生徒たちを見て、わたしはクスッと笑った。
パチパチパチ
拍手が響いて、わたしはそちらを見る。
拍手をしていたのは、王太子殿下だ。もう一人、アレクシス殿下もいらっしゃる。
見られていた、と分かって、顔が赤くなった。




