学園生活③
「お、あんたがリィカだな。俺はバルムートだ。よろしくな」
さらに声が割り込んできた。
顔を見て、すぐに分かった。
ミラー団長のご子息。アレクシス殿下と並んで、剣の実技テストで一位を獲得しているバルムート様だ。
「よろしくお願いします!」
わたしは慌てて頭を下げる。
この人も神々しいメンバーの一人だ。
「んな堅苦しくすんなって。親父があんたに悪いことしたって言っててな。少し気にしてやれ、と言われてんだ。気楽にしてくれ」
そう簡単に気軽に接するなんて無理だけど。
「……悪いこと、ですか?」
ミラー団長が、わたしに何かした記憶はない。
顔を合わせてすらいなかったはずだ。
「――ああ。その、だな」
バルムート様が言葉に詰まって困った表情になった。
「だから、リィカは気にしてすらいないと言っただろう。リィカの側には俺がいるから、バルは引っ込んでろ」
脇から口を出してきたのは、アレクシス殿下だった。
ユーリッヒ様に続いて、バルムート様も愛称呼びしていることに驚いた。
「――あの、何のことでしょうか?」
何を気にしていないのかはよく分からないから、聞くしかない。
「ん、ああ。最初、地下牢に入れられた時の事だよ。もっと早くにお前の状態に気付いていれば、一晩待たずにお前を保護できたのに、とミラー団長が言っていたんだよ」
「何でアレクが説明すんだよ。おれが言うことだろうが」
「言わなくていい。お前もリィカと口きくの禁止な」
「…………………ほお、なるほど。親父が言ってた通りか」
バルムート様のからかうような口調に、アレクシス殿下の顔が赤くなる。
やっぱり意味が分からない。
ユーリッヒ様にも言ってたけど、なんで話すのが禁止なのかも分からない。
「……あの、どういった事情があるのでしょうか。不勉強で申し訳ありませんが、してはいけないことを教えて頂ければ守りますので、教えて頂けないでしょうか」
何せ、わたしは罪人だ。罪を償っている身。
勝手なことはできない。
アレクシス殿下が駄目だと言うなら、きっとそうなんだろうけれど、その理由が分からない。
教えてもらわなければ、やってはいけないことを、間違ってやってしまいそうだ。
けれど、その時アレクシス殿下の浮かべた顔は、何とも説明しにくい。
あえて言うなら、困った顔、というのが一番近いけれど、その割に顔が赤い。
「「――ぶっ!!」」
その一方でなぜか噴き出して笑ったのは、王太子殿下とバルムート様。
「なるほど。そういうことですか」
ユーリッヒ様は何かを察したように言って、レーナニア様はクスクスと笑うだけ。
その反応に困って、もう一人カルビン様を見てみれば、「あーあ」とでも言いたそうな顔だ。
「……………………?」
首を傾げる。
「実はね、リィカ嬢。アレクはね……」
「待って下さい! 兄上、何を言うつもりですか!!」
何かを説明しかけた王太子殿下を、アレクシス殿下が止めてしまい、結局わたしは何も分からないままだった。




