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学園生活②

「あー、いた、リィカ! 何で先に行くんだよ!?」


響いた声に視線を向ければ、アレクシス殿下が教室の出入り口にいた。

答えようと思ったら、ユーリッヒ様が先に声をかけていた。


「おはようございます、アレク。朝から大声出さないで下さいよ」


「うるさい、ユーリ。大体、なんでお前がリィカと話しているんだ?」


「今日からクラスメイトですよ。話すくらい、当然でしょう」


「駄目だ。禁止」


「…………おや?」


ユーリッヒ様が不思議そうにアレクシス殿下を見る。


驚いた。

お互いに愛称で呼んで、すごく親しげだ。


ユーリッヒ様の家柄は伯爵だ。上級貴族とはいっても、王族とは比べものにならない。

だというのに、身分の差をまるで感じない。


「って、ユーリはどうでもいいんだよ。リィカ、一緒に馬車で行こうと言っていただろう? なんで先に歩いて行くんだよ?」


確かに、今朝そう言われた。

それが王家の監視の範疇であるなら、わたしも諦めただろうけど、国王陛下に伺ったら、一人で行っても問題ない、と言われたのだ。


馬車には、アレクシス殿下の他に、王太子殿下もいて、その婚約者であるレーナニア様も途中から同乗されるらしい。


そんな神々しすぎる面々の馬車に、罪人の自分が一緒に乗るなど勘弁して欲しい。


「父上が許可を出しちゃったらしいけど、出すなと言っておいたから。明日……じゃないね、今日の帰りから一緒に乗るよ。リィカ嬢、いいね?」


いつの間にいらっしゃっていたのか、王太子殿下にまで言われた。

陛下に出すなと言っておいたって……色々おかしい気がする。


「リィカさんが馬車で一緒と伺って、楽しみにしていたんですよ。それなのに、いらっしゃらないんですから。今日は、たくさん話をしましょうね」


わたしの手を取って言ったのは、レーナニア様だ。

綺麗なお顔に、ほんわかした笑顔を浮かべられると、女のわたしでもつい見惚れてしまう。


一応、同じ公爵令嬢だったから、過去に話をしたことはある。

でも、公爵閣下の手前、親しくするなどできるはずもなく、冷たく突っぱねたか、嫌みを言ったか、どちらかだったはずだ。


公爵閣下は、ヴィート公爵家に王太子殿下の婚約者の立場を持って行かれたことを、かなり憤慨していた。

髪の問題がなければ、わたしを王太子殿下の婚約者にしたかったらしいけれど。


『この役立たずが』


公爵閣下の声が蘇る。

あれが、母が罰を受けて、それを見せつけられた、最初だったのだ。


「リィカさん? どうされました?」


レーナニア様の声が聞こえて、ハッと過去から意識が戻る。


もういいのだ。

もう、母もわたしも、あんな目にあうことはないのだから。


「……いえ、何でもありません。その……過去に色々、失礼な事を申し上げた事、謝罪致します。申し訳ありませんでした」


レーナニア様は、一瞬不思議そうにして、すぐ穏やかに笑った。


「謝罪は受け取りますが、心ない言葉を投げかけてくるご令嬢は他にもおりましたし、気にされることはないですよ? そんな事はどうでもいいんです。わたくし、リィカさんとお友達になりたいです」


手を握られて、キラキラした目で見てくる。


そんなこと、と言い切られたことに、苦笑してしまう。

心の広い方なのだ。


「わたしなんかで良ければ」


頷く以外の選択肢は、思い浮かばなかった。




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