処罰の結果
「さて。ベネット公爵……いや、ベネット家の前当主、及びベネット侯爵の猿ぐつわを外せ。何か言いたいことがあれば、聞いてやろうではないか」
陛下のその言葉で、公爵閣下とユインラム様の猿ぐつわが外される。
いや、公爵閣下、の呼称はおかしいんだろうけれど、どう呼んでいいのかが分からない。
猿ぐつわを外された二人は、すぐに何かを叫ぶかと思ったけれど、黙ったままだった。
黙ったまま、陛下を睨み付けている。……って、それも問題なんだけど。
「陛下は、ずいぶんと平民にお優しいですね」
口火を切ったのは公爵閣下だ。
嫌みたっぷりの口調だ。
「私の主張は一切聞き入れず、平民の言うことだけ聞いて。顔だけはいい、あの娘にたらし込まれましたか」
危うく、声を上げるところだった。
周囲もざわつく。
いくら何でも、それは不敬すぎる。言っていい範囲を通り越している。
けれど、国王陛下は、飄々としていた。
「貴様の主張は、まるで現実と合っていない。先ほども言うたが、その娘が、貴様の指示無しに勝手に動く事を許していたのか?」
ギリッと公爵閣下が歯ぎしりを立てる音が、聞こえてきた。
「貴様の目が届かぬ学園内においても、ユインラムの目がない所で、一人で行動することはなかったようだな。それも指示したのだろう?」
「ひ、一人で行動しなかったのは、リィカルナの勝手であって、何も別に……」
「リィカだ。リィカルナではない。先ほどの儂の言葉を聞いておらんのか」
言い訳っぽく口にしたユインラム様の言葉を、陛下が遮る。
リィカルナ、という名前には違和感しかないけれど、公爵閣下やユインラム様にリィカと呼ばれたら、それはそれで複雑だ。
「それに、語るに落ちたな。リィカが一人で行動しなかった事実を、認めるのだな」
「なっ!!」
ユインラム様が叫んだ。悔しそうに歯ぎしりをする音がする。
公爵閣下と似たような反応だ。
「私の縄を解け」
黙り込んだユインラム様の隙を突くように、公爵閣下の静かな声が響いた。
敬語でも何でもない、唐突な言葉にも陛下は動じることなく、顎をしゃくる。
それを受けた兵士さんが、公爵閣下の腕を拘束している縄を解いた。
――シャキーン!
直後、謁見の間に響いた音は、剣を抜いた音だ。
公爵閣下が、自らの縄を解いた兵士さんの持つ剣を、奪い取っていたのだ。
「リィカルナ、貴様だけは許さん!!」
わたしを憤怒の形相で睨み付ける。
その剣が、わたしに突き出される。
「姉様!」
「リィカ!」
クリフとカルビン様の声がした。
「……………!」
声もなく、一直線にわたしに向かって、アレクシス殿下が駆け寄ってきてくれているのが見える。
でも、公爵閣下はわたしの隣にいた。だから、いくらアレクシス殿下でも、間に合わない。
そんな事を冷静に考えていられる自分に、思わず笑みが零れ出た。
突き出される剣に向かって、わたしは右手を出して……魔法を、唱えた。
「《防御》!」
出現した透明な壁が、公爵閣下の剣を防いだのだった。
「な……………?」
「な……んだ、と……?」
公爵閣下とユインラム様が呆然とつぶやく。
「姉様、やっぱりすごい!」
飛び上がって喜んでくれたクリフに笑いかけた。




