初恋②
父はミラー団長に視線を移すと、別の話題を始めた。
「リィカ嬢は、素直に聞かれたことに答えているんだったな」
「ええ。素直だし、大人しいもんですよ。地下牢にいる人も見習って欲しいもんです」
地下牢にいる人とは、ベネット公爵だろう。
一切認めず、すべてをリィカのせいだと主張している。
「ふむ。あの娘の処遇については悩みどころだな」
「悪事らしい悪事は働いていないのに、しっかり巻き込まれていて、無罪放免は難しいですからね」
父が、兄が、言葉を交わす。
「無罪放免が、あの娘にとっては最悪だ、というのも問題だな。ベネット公爵家に戻せば、ユインラムに虐待されかねない」
ここまでの調べの中で、ユインラムの関与は出てこない。
何も知らない、ということはないだろうが、リィカは、ユインラムが関わっていたかどうかは知らない、と言っていた。
公爵家を簡単に潰すわけにはいかないし、ユインラムにはベネット公爵家の相続を認める形になりそうだ、と父が言っていた。
ベネット公爵家に戻る、と言うことは、ユインラムの下に戻る、ということだ。
「アレクのお気に入りの相手だからな。今回の件が終わった後も、アレクが頻繁に会えるような処遇にするか」
「それがいいですね。私も、彼女が義理の妹になるなら歓迎です。レーナも話をしてみたい、と言っていましたし」
「……待って下さい。色々おかしくないですか?」
リィカの罪に対する罰をどうするか、という話のはずだ。
俺が会える会えないは関係ない。
レーナ、とは兄の婚約者のレーナニアの事だ。あの人が話したい、というのは、まあいいとしても、義理の妹、とは何のことだ?
「私情入りまくってますね。いいんですか?」
ミラー団長は面白そうに言うが、面白がっては駄目な案件だろう。
だというのに、父も兄も笑うだけだ。
「誰もが納得する処遇であれば、何も問題ないだろう」
問題あるだろう、と思うのだが、俺以外の三人がそれで頷いている。
俺が納得しきれないままに、この話はここで終わったのだった。
※ ※ ※
そんな会話から数日。
いつものようにリィカに会いに来たら、カルビンがリィカと話をしていたわけだ。
リィカがあんな風に笑うところを見たことがない。
自分は罪人で、俺は王子だ、としっかりそこに線を引いて接してくる。
避けられる事はないが、いつも俺に対しては、一歩引いた態度だ。
――あんな風に笑うんだな。
悔しかった。
その笑顔を引き出したのは、カルビンだ。俺じゃない。
――ああ、もう。
父の、兄の、初恋、という言葉を思い出してしまう。
そうだ。その通りだ。
俺は、リィカの事が好きなんだ。




