初恋①
〔 Side 第二王子 アレクシス 〕
リィカのいる牢まできたら、カルビンが先に来ていた。
二人で笑い合っている。
面白くなかった。
※ ※ ※
リィカが、俺にしがみついて号泣した日から、俺は毎日のようにリィカに会いに行っていた。
母親やクリフォードとの面会、取り調べの時なんかも、兵士をつけられるところを、俺が強引に奪い取って側にいた。
能力的には兵士よりずっと上だから、父も渋い顔をしながらも許可をくれた。
だが、俺の行動は、すぐに訝しく思われた。
「毎日のようにアレクシス殿下が来るんです、と兵士らがぼやいてんぞ」
王子の俺が相手であっても、まったく遠慮することのないミラー団長が、父や兄のいる前でそんな話を振ってきた。
俺は何となく視線を逸らす。
「……別に問題ないだろう」
そう。ないはずだ。
何せ、一時は死にかけていたし、精神的にもずいぶん不安定だった。
それを慰めたのは俺だ。気に掛けて、毎日会いにいっても何も問題ない。
「兵士の話じゃ、すっかり落ち着いてるって話だけどな」
「……何が言いたいんだよ?」
ミラー団長にさらに話を突っ込まれ、不機嫌に睨めば、面白そうに笑われた。
「いんや。ただ、リィカは兵士の間でも人気あるからな。お前が来るとリィカと話ができないと、俺が兵士から文句言われる、ってだけだ」
「――はぁっ!?」
なんだそれ。
兵士に人気ある?
そんなのは初耳だ。
「ほう。アレクの初恋の相手は、兵士たちに人気なのか」
「ライバルが多いというのは、大変だね」
「だから、違います!!」
父と兄の言葉に、俺は真っ赤になって否定したのだった。
毎日のように面会に行き、側にいようとする俺の行動を、父と兄に「初恋か?」と言われたときには頭が真っ白になった。
兄と違って婚約者もいないし、女の子を好きになった事などない。
ただ、大きく開いた目から涙をこぼしたリィカがすごく綺麗で、それが頭から離れなくなった。
母親を守ろうとするリィカがいじらしくて、守ってあげなければ、と思っただけだ。
という事を説明したのに、父も兄もニヤニヤ笑うだけで、それから事あるごとに「初恋」という単語を出してくる。
「やっぱり、アレクの初恋か。分かんなくはねぇな。可愛い顔でしおらしくされりゃあ、引っかかってもしょうがねぇ」
ミラー団長までそんな事を言い出した。
「だから、そうじゃない!」
「兵士らも似たり寄ったりだけどな。最近じゃ酔っ払うと、あの人の笑顔のためなら死ねる、とか叫んでる奴が多い。そのうち、騎士団がリィカに乗っ取られそうで怖い。これがベネット公爵の狙いじゃねぇかと最近は思うくらいだ」
「リィカはそんなことしない!」
とんでもないことを言ったミラー団長に言い返せば、妙に生暖かい視線を向けられた。
「そんなに人気があるのか」
「ええ、陛下。リィカのいる牢番の仕事は、奪い合いになってますよ。他の仕事をないがしろにしそうになったんで、俺が当番を決めると言ったら、途端に真面目になりましたが」
「おやおや」
父は笑うと、俺を意味ありげに見てきた。
その視線が、気にくわない。
「……なんですか」
「いや。さっさと素直にならんと、逃げられてからじゃ遅いぞ」
何に素直になればいいのかが分からない。
俺はさぞ不機嫌そうな顔をしていただろうが、そんな俺を見る父は、妙に優しげな顔をしていた。




