表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/42

貴族用の牢屋にリィカルナを寝かせて、しっかり暖めてやる。

服は、女性兵士に着せてもらった。


おそらく牢を出たことなど覚えていないだろうから、リィカルナが目を覚ましたら知らせるように牢番に伝えて、俺は父の元に戻った。


二晩寝ていないのだ。

しばらく寝ているだろう、と思ったが、一時間ほどで知らせが来た。


「出してくれと、公爵閣下の元に戻らなきゃ、と仰っておりまして」


牢番の困り切った報告に、俺は足を速めた。



※ ※ ※



牢にたどり着けば、リィカルナは牢の柵にしがみついていた。


「リィカルナ」


声をかけると、視線が向けられる。

目が僅かに見開かれたように感じた。


「アレクシス殿下……? お願いします、わたしをここから出して下さい。なんで、わたし、ここに……。お願いします、公爵閣下に謝らないと、お母さんが……!」


やはり、牢から出たことはまるで記憶にない。


それに、公爵閣下、という呼び方に違和感を覚える。

普通にベネット公爵のことはお父様と呼んでいたはずだ。

それが、今リィカルナは自然に公爵閣下と呼んだ。


つまり、普段リィカルナはベネット公爵をそう呼んでいたんだろう。父と呼ばせてもらえなかったのだ。


リィカルナの顔色は、ほんの少し戻っているが、元々が悪すぎたのだ。

戻ったと言っても、良くなったと言えるレベルじゃない。

まだ休んでもらう必要があった。


牢番に鍵を開けてもらい、中に入る。


まともに体が動かないのだろうが、それでも懸命に開いた扉から外に出ようと動こうとしたのを、留めて抱き上げる。


そのままベッドに寝せるが、リィカルナから出た言葉は悲鳴だった。


「いや……! 離して……! お母さんが、死んじゃうの……!」


動かない体を必死に動かそうとする。

その眦から涙が零れて、俺はたまらなくなって抱き締めた。


「大丈夫だ、死なない。お前の母親は、保護に向かっている。だから心配するな。もうベネット公爵の言うことを聞く必要はないんだ」


「…………………ぇ……?」


動こうとしていた体の動きが止まった。

俺はリィカルナの顔をのぞき込む。


「大丈夫だ。母親は心配いらない。だから、今はお前は自分の心配をしろ」


大きく見開いた目から、涙が落ちる。


――ゾクッとした。

ゾクッとするくらいに、綺麗だった。


リィカルナの顔に見入って、動けなくなった。


そのまま、どのくらい時間が経ったのか。

ふいに、その目が閉じた。体から力が抜けたのを感じて、我に返った。崩れ落ちそうになるのを支える。


ほう、と息を吐く。

どうやら、また眠りに入ったらしい。


「今度は、ゆっくり休めよ」


ベッドに横たえると、短く刈り込まれた頭に触れて、撫でた。


兄たちが、無事母親を保護して戻ってきた、と報告を聞いたのは、それからもう少し後のことだった。



次回より主人公視点に戻ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ